こうして始まったゾンビと人間のお見合い大会であったが、中にはこれを「ただの乱痴気騒ぎ」であると認識してやってきていた者も少なからず存在していた。
これに参加すれば好きなだけセックスが出来ると考え、まさに「ヤるだけヤって」さっさと帰ろうと目論む、恋愛感情や結婚願望などこれっぽっちも持っていない不逞の輩も、残念ながら混じっていたのだ――もっとも、ホームページや広告で「肉欲溺れ放題」だの「ゾンビと愛欲ぶつけ放題」だのと好き勝手書きまくった主催者のワイトの方にも若干なり落ち度はあるわけだが。
しかし、そんな軽い気持ちでこのお見合いに参加した者達は、一人残らず地獄を見る羽目になった。
「アハア……オチンチン……♪」
「セーエキ……チョウダイ……♪♪」
「も、もうだめ、もうでなっ……!」
彼らはゾンビ達を甘く見ていた。確かに動きは鈍重で、力もそれほど強くは無かったが、彼女達はそれでも魔物娘なのだ。彼女達もまた他の魔物娘と同じように、人間の心の機微――と言うよりも相手の肉欲や愛欲に関しては、下手な人間以上に敏感であったのだ。
故に彼女達は、自分達を性欲発散用の玩具としてしか認識していない者に対しては、全く容赦しなかった。数十人がかりで彼らを取り囲み、数に物を言わせて押し倒し、相手の同意も待たずに無理矢理犯し始めたのだ。
それは彼女達が「力ずくでも彼らを虜にして、自分達と婚約させる」という強烈な思念から来る行為であった。そうして大量のゾンビが一人の人間に群がり、一心不乱にその体を求める様は、まさに食欲のままに哀れな犠牲者の体に食らいつくゾンビそのものであった。もちろん彼女達は、そんな恥知らずな連中に天誅を下すとか、殺害して罪を贖わせるとか、そういった物騒な思考は欠片も抱いていなかった。
「ダイジョウブ……スグニキモチヨク……ナルカラネ……」
「ダカラ……ワタシタチト……ケッコン……シテ……?」
「ふっ、ふざけるな! 誰がお前らみたいな、死体なんかと!」
「……マダ、ソンナコトイエル、ヨユウガ、マダアルンダ……」
「ジャア……モット、キモチヨクシテ、アゲルネ……♪」
彼女達はただ、彼らを自分の魅力で改心させて、愛と精を受け取りたいだけなのだ。そして愚かな人間が拒めば拒むほど、ゾンビ達はその人間を意地でも悦ばせようと、ますます発奮するのである。
まさに蟻地獄であった。
「お、俺、裕司って言うんだ。君の名前は?」
「ワタシ? ワタシハ……メリッサ……」
その一方で、自分達に対して真摯に接して来る者に対しては、ゾンビ達は一転してしおらしい態度を見せた。何せ今回の「お見合い」に招聘されたゾンビ達は、その全てが処女であり、中にはまともに男性と恋愛をしたことが無いゾンビも混じっているほどであった。
体は死んでいたが、心は乙女のままであったのだ。
「アッ、アノネ、ワタシ……コウイウコト、ハジメテナノ……ダカラ……」
「そ、そうなんだ。実は俺も、こんなことするの初めてでさ……」
「ソウナノ……? ジャア、イッショ……ダネ」
「うっ、うん……」
「……エヘヘ」
「ははっ」
故に心の通じ合った人間とゾンビのやり取りは、初恋の甘酸っぱさを存分に辺りに振りまくものであった。そして幸運にもこうなれたゾンビ達は、心の触れ合った男性を少しでも悦ばせてあげようと、全身全霊をかけて愛情を注いでいくのである。
もちろん、セックスの知識など微塵も持ち合わせていない者もいた。むしろそんな初心なゾンビが大半だった。それでもその拙い指捌きや腰遣いには、確かな愛が込められていた。
相手に自分の気持ちを伝えたいという熱心な気持ちが、その行為の中にしっかり込められていた。そしてそんな純真無垢な気持ちが、パートナーである人間にもしっかり伝わっていたのだ。
「ド、ドウ? チャント……デキテル……?」
「あ、ああ。すげえ気持ちいいよ……本当に、初めてなのか?」
「ウン。ハジメテダヨ。アナタニ、キモチヨク、ナッテホシイカラ……コンナニ、ガンバレルンダヨ……?」
「そうなのか……じゃあ、俺もお前のために頑張らないとな……!」
「ウン……キタイシテル、カラネ……♪」
実際の所、「お見合い」が始まって四時間も経った頃には、ゾンビと人間の間でカップルがいくつも出来上がり始めていた。ゾンビと本気で恋愛を育むことに関して露骨な嫌悪を見せる者もいるにはいたが、そんな彼らも改心を果たすのに長い時間はかからなかった。誰も彼もが、一人残らずゾンビの虜となっていったのだ。
しかし最初にやってきた「第一陣」の人間の数があまりにも少なかったので、当然ながらパートナーを見つけられずにあぶれたゾンビ達も大量にいた。しかし後から後続の参加者たちが続々来る予定だったので、お見合い自体が終
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