クロフェルルの言葉通り、それから暫くして、また別の魔物娘がやって来た。
例によって幼女であり、例によってサバトの長を名乗った。
「アタシ、モモニカ! よろしくね、おに〜さん!」
モモニカ・サバトの長、モモニカが、元気一杯に挨拶する。彼女の出で立ちを見た佑は、クロフェルルの時とはまた別の驚きを味わった。
魔物娘モモニカの見た目は、一言で言えば「ギャル」だった。外見だけでなく顔つきまで、まさにギャルそのもの――もっと言えばビ(検閲削除)――であった。
「よ、よろしく……」
「よろしくー!」
小さい女の子が性軽薄な見た目をして立っている。そのアンバランスさがたまらなく卑猥でいやらしい。佑は素直にそう思った。だがそこまで考えたところでどうにか耐え、平静を装ってモモニカに尋ねた。
「それで、モモニカ、さん? は、何を教えてくれるんですか?」
「教えるって?」
「その、魔法とか」
「しないよー!」
「えっ」
「むずかしいことキラーイ!」
それがモモニカの回答だった。彼女は授業を丸投げした。それでいいのか。佑は心の中でずっこけた。
だがモモニカはそれで終わらなかった。
「その代わり、とっても楽しいこと教えてあげる!」
「楽しいこと?」
「うん! とっても楽しくって、とってもきもちーこと♪」
モモニカはそう言って、授業を開始した。授業と言っても、魔法やら何やらを教えたわけではない。そもそも彼女は魔法の研究などしていない。
その代わり、彼女は自身のサバトについて、佑に語って聞かせた。モモニカの語るサバトの内情は、もはや遊園地のそれであった。
「本当に遊ぶことしかしてないのか……」
「そだよー♪」
唖然として呟く佑に、モモニカが笑って返す。無理もない。モモニカは特に何もせず、サバトの運営は専ら「お兄ちゃん」がしていると言われては、目が点になるのも已む無しであった。
あと「遊園地」の中でセックスし放題とも言われたが、そちらは特に驚かなかった。想定の範囲内だった。
「じゃあそういうわけだから! おに〜さんも今度グレイリアと一緒に、アタシのサバトにおいでよ! 絶対たのしーよ!」
そしてモモニカの話は終わるのも早かった。サバトの紹介をするだけして、最後に佑を自分のサバトに来るよう誘い、さっさと部屋から出ていった。風のように早かった。
だが佑は不愉快とは思わなかった。むしろ彼女の溌溂さに、佑は好感すら覚えていた。
「ふむ、次はわしの番か」
そうしてモモニカが去った後、少し間を置いて別の魔物娘が来た。
幼女。サバトの長。前と同じ。
見た目と雰囲気は大きく違った。見るからに魔女然とした服装であり、佇まいも大人しく利発な印象を与えた。
「わしはシロクトー。よろしく頼む、坊よ」
自己紹介も淡々としている。その静かさが、佑の気持ちを引き締めさせる。背筋が伸び、肩に力がこもる。本当の授業前であるかのような錯覚すら抱いた。
「さて、教えられることと言ってもあまり多くはないのじゃが……まあやれるだけやるとしよう。坊、ちゃんとついて参れよ」
「はいっ」
「よろしい」
力強く返事をする佑に、シロクトーが小さく頷く。そして彼女はそのまま粛々と授業を開始した。まさに文字通りの「授業」であった。
「……で、あるからして、この特性とこれらの概念を……」
シロクトーが本を手渡し、それを開かせ、そこに書いてある内容を一から説明する。佑はそれを同じく渡された紙束に書き写し、時折質問をし、シロクトーも淡々とそれに答える。そのサイクルをひたすら繰り返す。
本当に授業である。自分は元の世界に帰っていて、いつも通り学校に通っているのではないか。佑は本気でそう思ったりもした。
「……以上である。最後に何か質問はあるかの?」
「いえ、ありません」
「ならばよい。ではこれにて」
やがてサイクルの終焉が訪れる。十ページくらいは進んだだろうか。最後まで粛々としていた。耳の奥から終了を告げるチャイムの音が鳴り響く。本を返却し、紙束を整え、部屋を出ていくシロクトーの背を見送る。
「おお、そうだ」
と、扉を跨ぎかけたところで、シロクトーが立ち止まる。そしてシロクトーはその場で振り返り、佑に向かって淡々と言った。
「グレイリアとの件、応援しているぞ」
「あ――」
「では」
それだけ言って立ち去っていく。その最後の一言だけで、佑はシロクトーに対する印象が大きく変わっていったのを自覚した。
「次は吾輩であるな」
次に来たのも幼女。サバトの長。
外見的特徴。露出控え目。眠たげな顔つき。
「吾輩はルーニャ・ルーニャである! まずはお近づきの印にこれを」
「あ、どうも
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