俺の嫁はペチャパイだ。絶壁だ。まな板と言ってもいい。同じ高校に通う女子達の中でも、トップクラスに貧乳だった。
「寄せて上げるブラ、かあ……さすがに私用のサイズは無いわよね……」
夢はあるが凹凸は無い。ただ見渡す限りの、無謬の平野が広がるだけだ。だから今彼女がソファに座って読んでいた雑誌の「胸で悩殺! バスト増強法!」というページも、彼女にとっては無用の長物でしかなかった。
「ふん、別にいいわよ。私だって、いつかバインバインのナイスバディになってやるんだから!」
そのことは、俺の嫁も重々承知していた。そしてそれ故に、彼女は自分の体型を変えると言う、大いなる野望を秘めてもいた。まあ俺としては、別におっぱいがあろうが無かろうがどっちでもいい――そもそもヘイゼルと結婚したのだって、おっぱい云々ではなく彼女の人柄に惚れたから――のだが、ヘイゼルは何としても、自分のコンプレックスを打ち破りたくて仕方ないらしい。
「ねえステア。今日も手伝ってくれないかしら? 私のおっぱい増量計画、始まったばかりなんだからね」
そしてヘイゼルはその大望を果たすために、一週間前から「おっぱい増量計画」なるものを実行に移していた。要はおっぱいを大きくするための、二人一組で行う特別メニューである。
ヘイゼル曰く「これは夫婦の愛があって初めて成立するもの」なのだそうだ。情報の出所を聞いてみると、彼女は「俺と結婚する前に、同級生の魔女から教わった」と説明してくれた。ヘイゼル自身試してみたかったそうなのだが、相手がおらず無期限延期状態となっており、俺と結婚したことを契機に試してみようという流れになったのだそうだ。
「そのおっぱい計画、本当に効くのか? 一週間前からやってるけど、あんまり目に見えて効果出てない気がするんだけど」
「大業は一日にして成らず、よ。こういうのは、地道にこなしていくのが大切なの。それに学生の内からやっておけば、将来ブルンブルンなバストを手に入れられるかもしれないじゃない?」
「まあ、それもそうかもな」
ちなみに俺ことステアもヘイゼルも、共に高校二年生である。にもかかわらず、当たり前のように二人して結婚しているのは、単に現代の価値観が魔物のそれに置き換わったからである。魔物娘が現代社会に現れてからたった数年で、世界の大半が彼女達のルールに従って動いていた。しかしそうなって以降、世の中が劇的に平和になったので、そのことに非難の声をあげる者は殆どいなかった。
それはともかく。
「ほら、はやく準備する! ほらほら!」
「そんなに急かすなって。おっぱいは逃げねえんだから」
「おっぱいは逃げなくても、時間は待ってはくれないんだからね! 急いで支度して!」
そう言って急かしながら、ヘイゼルがさっそく服を脱ぎ始める。シャツを脱ぎ捨て、ついでに何故かズボンまで脱いでいく。羞恥も躊躇も無い、見事な脱衣っぷりであった。
夫に裸体を見せるのは恥でもなんでもない、と言うのがヘイゼルの主張なのだが、やはりこの魔物娘特有の貞操感覚の低さには馴染みきれないところもあった。実際、俺はいきなり裸体を晒してきたヘイゼルを直視することが出来なかった。しかしいつまでも恥ずかしがっているわけにも行かない。俺は腹を括って、同じように服を脱ぎ始めた。
これがヘイゼルの言う「支度」。魔女流豊胸術の第一歩なのだという。一週間前から同じことをしてきたが、俺としては眉唾ものじゃないかと思ったりもしている。
「よし。これで準備は出来たわね」
「そうだな。寝室に行くのか?」
「そうしましょう。そっちの方がいい感じにムード出るし」
そうして居間で全裸になった後、俺達はいつものように寝室に向かった。リビングの中を全裸で歩くと言うのは、妙にスース―して気恥ずかしいところがあるのだが、文句をいってもいられない。何事も慣れだ。
そんなことを考えながら、俺はヘイゼルの後ろについて寝室へ向かったのだった。
「よし、じゃあ始めるぞ」
そうして寝室に入って布団を敷き、その上に向かい合いながら腰を降ろした後、俺はヘイゼルにそう告げた。ヘイゼルもまた期待に満ちた表情で頷き、翼手を広げて俺の愛撫を今か今かと待ち構えた。例の特別メニューの開始である。
そのメニューの正式名称は、「魔女流豊胸術」だの「魔女直伝豊胸マッサージ」だのというものであった。字面は仰々しいものだったが、その中身は最初に胸を中心に愛撫を行い、互いに出来上がったところで膣に肉棒を挿入するというものであった。言ってしまえば、それは普通のセックスと何も変わらなかった。
濡らすために弄るところが胸かそれ以外かの差しか無かったのだ。
「大切なのは夫婦間の愛情。愛をもって接すれば、特別な
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