1話 ハルトの章

俺の名前は「ハルト・ハル・ え?知ってる?いいから言わせろよカッコ悪いから…

まぁ、いいか…

ここは元反魔物領の親魔物領、一か月なるかならないかくらい前に魔王軍に侵攻され…それも知ってる!?

まぁ…なら話は早い…王都の近衛兵だった俺は今じゃすっかりこんな人気の少ない所に左遷された


「俺の剣の方が強い」と張り合ってたかつての同僚達は今では「俺の嫁の方がエロイ」だのと張りあってたり

現在の王国軍最強の座が男だったはずの勇者が、何故か女の姿で未だに居座ってたり(女の姿に変化したとか元から女だとかの噂だ)

変わったような変わってないような日常が王都では送られてるんだろうな…

俺のところはすっかり変わっちまった…何故なら…


「あら、ダーリンったら、急に私の方を見てどうしたの?私に見惚れちゃったのかしら
#9829;」

ねっとりとした熱視線をオレに向けてきたのは

白い肌、輪をかけて白い髪、赤い瞳、強大な魔力

この国を侵攻した張本人、リリムの「ファルメア」だった


彼女と出会ったのは、この国が侵攻されたあの日…

「フン、何故に儂の婿殿が貴様なんぞに見惚れねばならんのじゃ…儂を見ておったのよ、のう…婿殿
#9829;」

…今現在のこの国の最高権力者を相手にぞんざいな口をきいたのは

同じく白い肌、白い髪を持ちながら、まったく違う雰囲気を醸すジパングの服装

どこからともなくふらりと現れたジパングの大妖怪、ぬらりひょんの「ウツロ」だった


「あら…いましたの?まっっったく気が付きませんでしたわ…『第二夫人』さん…♪」

「そりゃそうじゃろう…ぬしなんぞに気づかれては種族の名折れじゃよ…『側室』殿…♪」

2人がにらみ合うとバチバチと火花が散る…お互いの纏う魔力がぶつかり合ってリアルに出ているっぽい…


…これのお陰で森の獣が恐れて国に近寄ってこないんだよなー、いやー仕事が楽だなー

とか現実逃避してる場合じゃないな…

俺は2人を止める言葉を考えながらも、なぜこんなことになったのかに思いをはせていく…


・・・・・・


ファルメアと出会ったのは、この国が侵攻された日、俺が国王陛下の元へと駆けつけた時だった

謁見室のドアを開けた瞬間、ファルメアと自分の圧倒的な力の差を理解しつつも、なけなしの忠誠心で陛下と彼女の間に飛び込んだ

突然現れた俺に驚いた表情を見せるファルメアにせめて一太刀当てようと剣を振るったが、その差は歴然

魔法を使おうとした彼女の手のひらの薄皮を少しだけ傷つける結果に終わってしまったのだ


その後、彼女が俺に撃った睡眠魔法で眠ってしまい、目が覚めたらすべてが終わった後だったのだ


そしてその日からファルメアは俺の事を「ダーリン」と呼び、付きまとうようになっていた…

え、展開が早い?俺だってどうしてこうなったかわからないんだ!


そして、それからの彼女も早かった…

「ねえダーリン、なにか欲しい物はある?なんでもいいのよ
#9829;食べ物でも服でも家でも♪」

「え?衛兵の仕事を続けたい…?もう
#9829;ダーリンったら真面目なのね
#9829;好きッ
#9829;」

「そうね…端っこの方の警備でもいいかしら?え、私が決めていいのか?いいのよ♪偉いんだもの
#9829;」

「住み込みで、お家賃はもちろんタダよ♪準備が出来たら私も住むわね
#9829;」

「私が行くまでさみしいかもだけど…初夜はやっぱり2人の愛の巣がいいもの♪待っててねダーリン
#9829;
 
 ん〜チュッ
#9829;」


気が付けば俺はこの僻地に住むことになり、そして彼女と同棲することになった


ちなみに、なぜこんな場所なのか聞くと、諸々の危険が一番少ない場所だから…らしい



・・・・・・


ウツロに出会ったのは、そんな俺がこの家に住んで3、4日たった頃、まだファルメアも来てない時だった

軽く外の見回りをして家に帰ると、ウツロが堂々と家の酒と干し肉を食らっていたのだ

余りにも当然と言った顔でくつろいでいたので面食らったが、秘蔵の酒を開けられて黙っていられない

酒の窃盗と不法侵入を咎めると、ウツロは驚いた顔をしてなぜバレたか聞いてきたが…

バレないわけがないだろう!


そして、その直後に結婚を前提に同棲すると発言してきたのだ

だから展開が早いっての!!


そして彼女もまた、やたらと俺を甘やかしてきた…

「のう婿殿…飲んでしまった酒の詫びじゃ、ジパングの一等酒を馳走しようではないか
#9829;」

「なに…不釣り合いの高い酒はいらん?謙虚じゃのう…惚れ直したわ
#9829;」

「そうじゃ♪では儂の家来に肉を狩ってこさせよう、これでどうじゃ?」

「酒はまだあるのう、では改めて
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