道程(どどどどど、ドウテイちゃうし!みちのりだし!)

王都までの道のり。約4日。
それまでは街道沿いに何も無く、あるのは森や湖を初めとした大自然。
ここら一帯は魔物の生息は確認されていないが、一日に馬2頭ほどの肉を食らうと言われる大熊や肉食獣がいるため、街を作ることが出来ないのだという。
じゃあなんで道をこんな所に作るんですか?と言いたいところではあるが、ここを渡るのが最短距離で王都へいく道のりであり、その他のルートでは14日以上かかる大迂回路か、絶賛戦争中の魔界との境界沿いを行くルートしか無いのだという。
あれ、王都のくせにクッソ不便じゃね?とは思ったものの、魔道総長曰く、この国は女王位にあたるソードメイデン、剣の巫女が代々、ヴァルキリーより戴冠の儀によって任命されるという王権神授国家であり、その聖地が王都のあるクッソ不便な位置だった為に仕方がないのだという。
そして更には、女王は剣の巫女の名に恥じぬ程の剣の腕前でなくてはならず、そのためか国自体が軍事力を重視する傾向があり、そのため、道の少ない要塞に適した位置に王都があるとも言われている。……らしい。
ちなみに、魔導総長は剣でも強い!らしい(本人談)

「じゃあ今日はここら辺でビバークしよっか」
コロワさんは御者に声をかけて馬車を停めさせて、外に出る。僕もそれに続いた。
時間は昼をすぎた頃だろうか。あたりには小さな林と草原地帯が広がり、近くからは水の音も聞こえてくる。食料には困らなさそうだ。
御者は馬への水やりと体調確認をしていた。今気づいたが、御者も白銀騎士だ。ショートの金髪。少し毛先がパサついているが、その色気のなさが逆にカッコいい。その癖に目鼻立ちは女性だとひと目でわかるような大人の色気がある。どうして白銀騎士はこんな美女ばかりなのか。
そして僕は今日、この女性達と同じ天幕で寝る。しかも2人用の天幕で。御者とはまだ1度も会話したことがないのに、そんな密着空間で寝たら頭がどうかなってしまいそうだった。
そんなことを考えていた時だった。
「きゃぁぁあああ!」コロワさんの叫び声がこだました。
なにかあったのか!そう思い駆けつけると、そこには予想を裏切るほどにのどかな光景があった。
「みて!みて!うさちゃん2匹!2匹も取れたよ!やったぁ
#9829;
#65039;」
今日の晩御飯を捕まえて、子供のようにはしゃぐコロワさん。その姿にもう1人の白銀騎士もため息をついていた。
「コロワ様、食料は先程街で購入したではありませんか」
「えー、でも干し肉おいしくないもん……」
「じゃあ調理は誰がするんですか?また私に押し付けるつもりでしょう。毎回毎回あなたは……」
「……でも干し肉よりおいしいよ?」
「……はぁ」
白銀騎士の女性は諦めたようにまたため息をついた。
「では私が調理しますので、コロワ様と旅人様は薪を集めてきてください。あと3時間で日が暮れますから、できるだけお早めに」
「はーい!行こっ、旅人くん!」
コロワさんに手を引かれて走り出す。コロワさんは加速のために風魔法を使っているのか、掴まれた僕の体が少しずつふわっと浮かぶ。
「こらー!おそいぞー?」
「まって!まって!」
既にコロワさんは殆ど空を飛んでいた。そんなコロワさんに置いていかれないよう、必死でコロワさんにしがみつく。そして2人で転んで、草原でゴロゴロと草の上を転がった。
「あはは!すっごい楽しい!」
草と泥まみれになりながら笑うコロワさん。身長とオッパイに栄養が行き過ぎてちょっとアホの子になってしまったのだろうか。
僕は確かに感じていた命の危険を思い出し、少しちびった。






夜。晩御飯は兎の足を焼いて、溶かしたチーズをかけて、さらに焼いたワイルド飯。ワイルドながら味はおいしく、味は素材そのままグラタンという感じ。主食はノノコではなくフランスパン以上に硬い塩パンだったが、正直ノノコよりはマシだった。
「旅人くん、パン固くない?お姉さんが柔らかくしたのをあげよっか?」
コロワさんは口をあーんと開き、唾液を吸って膨らんだパンを見せつけてくる。
まだ固形を保ちつつも、唾液をたっぷり吸った塩パンは、焚き火の明かりに照らされて、トロトロと官能的に輝いて見えた。
「えっ、あの……その……じゃ、じゃあ……」
「コロワ様」
コロワさんの行動に困り、受け取るしかないのかと思った時、助け舟を出してくれたのは白銀騎士さんだった。
「コロワ様。いらないのであれば私が受け取ります」
白銀騎士さんはコロワさんの顎を掴み、舌の上にあったパンを舐るようにして掠め取り、コロワさんの鼻先をぺろりと舐めた。
女性同士のキス。それも舌と舌を絡ませたもの。そんなものを見たのは初めてだった。
それ故に、僕の胸はなぜか熱くなり、動悸がして、息が苦しくなる。……
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