「お前は何をやっているんだ……」
「いやぁ、あまりにもいい男だったもので!」
「はぁ……」
夕方。ノアの家に帰ったエマは指輪探しをせずに男探しをしていた件をノアに咎められていた。
「何度も言うがうちは駆け込み寺でも質屋でもないからな。やることやらないなら即刻出ていくことだ」
「いやいやいや!ちゃんとやることやってますって!この指輪……の持ち主かは分からないけど、ダンが作ったのはほぼ間違いないって!」
キャー!呼び捨てにしちゃったー!などと言いながらしれっと核心部分を話すエマ。
「根拠は?」
「血の匂いと魔力の感じが一緒だから!双子の兄弟がいたら話は別になるけどね!」
血の匂いとかわかるものなのかな?などと悠貴は思うが決して口にしない。なんというか感覚的にエマも魔物娘なのかなと思い始めているため深く考えることを放棄したのだ。
「なら返しに行くしかないな」
「え!!やだ!!!」
「なんでだ」
「僕のラブストーリーが終わっちゃう!!」
「知らん」
そのままあーだこーだ言っているエマの首根っこを掴みずるずると連れていくノア。
「エステルさん、俺行ったほうがいいんですかね?」
「うーん、一応ついて行ってみたら?」
「わかりました」
正直ついていったところで特に出来ることはなさそうだが、だからと言ってあまり話したことのない美人と二人きりという空間に耐えれそうになかった悠貴はそのままノアとエマの後を追いかけていった。
「大きなお屋敷ですね」
「代理とはいえここら一帯の主だからな」
「いーやーだー!!これは僕の物だー!!」
大きな扉を慣れた手つきでノックし、反応を待つ。そして扉を開けて出てきたのはダンその人であった。
「夜分に失礼」
「ノアさんでしたか、えっと……そのお二人は……」
「こんばんは、付き添いできました」
「こんばんは!貴方を攫いに来まし痛たたたたたたたたた!!!」
ノアに腕を背中側に捻り上げられ、苦悶の表情を浮かべるエマに困惑するダンであったが、ノアは主と重要な事柄で関わることも多いため無下にはせずにそのまま屋敷の中へ招き入れ、扉を閉める。
「えっとノアさん、本日はどういったご用件で?」
「ああ、私は用事はない。用事があるのはこっちだ」
「痛たた……こんな可憐な乙女になんてことを……」
「どこの世界に人様を誘拐する可憐な乙女がいるんだ」
「……テヘッ」
そんなやり取りをしていると近づいてくる足音。そして現れたのはこの屋敷の主にしてダンの主人、シャルロッテであった。
「どうしたノア。何か用事か?」
「用事があるのはこっちだ」
そのままエマの背中を押し、我関せずとホールの隅に行くノアとそれについていく悠貴。だが―
「―お前、その匂い……昼間ダンにちょっかいをかけてきた女か」
「ちょっかいじゃないよ、恋のアプローチをしただけさ」
「恋の……アプローチだと……?」
刹那、瞬時にホールに満たされる凄まじい殺気。シャルロッテの瞳は爛々と輝き、今にもエマを射殺さんとしていた。だが涼しい顔でその殺気を受け止めるエマ。
「……人様の使用人に手を出すとはいい度胸だ。今ここでそれがどういうことを意味するか教えてやろう」
「あはは、それは無理ですよ。だって―」
エマが帽子のつばを掴み、深くかぶると同時にシャルロッテの殺気を押し返すほどの魔力が放たれる。
「チッ……貴様、ダンピールか」
「正解。言っておくけど僕超強いよ?」
そのまま殺気と魔力の衝突を続ける二人。このままこの修羅場が続けば確実に殺し合いに発展してしまう雰囲気があった。ダンも悠貴も圧倒されて動くことができない。悠貴は情けなく思いつつもノアが丸く収めてくれることを期待し、視線を送るが
「ん……上手いな。また腕を上げたんじゃないか?」
「いつも同じものだとお嬢様が露骨に嫌な顔しますからねぇ、大変なんですよぉ」
どこから出したかわからないテーブルにクッキーのような焼き菓子とティーポット、カップを乗せて椅子に座り、お人形遊びをしていた。いや、正確にはその人形は勝手に喋り、反応し、コロコロと表情を変えていることからその人形も魔物の一種なのだろうと推測する悠貴。
ただならぬ殺気と魔力に足を震わせながらもなんとかノアのところに行くのだが全く興味がないように人形と話し続けているノア。
「……これはなんだ?甘さの前になんというか……しょっぱい?塩?」
「流石ですねぇノアさん。隠し味にごく少量の塩を入れてより甘みが感じられるようにした名付けて塩クッキーですよぉ」
「なるほど……」
「いやいや!お茶会してる場合じゃないですよ!あの二人を止めなきゃ!!」
「別に剣を抜いて威嚇しあっているわけでもあるまいし、放っておけ」
「えぇ!
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