〜Part12!!

〜竜胆の心変わり〜

 今日は竜胆の誕生日。

 だが、そんな日に学校から呼び出しがかかった。

 なんで呼ばれたのかというと、竜胆が同じクラスの男子児童を殴ったそうだ。

 学校についてみると、殴られた男子児童の母親(人間のおばさん)が竜胆を責めていた。

 とりあえず、母親をなだめ、詳しい話を担任の先生や男子児童から話を聞いてみる事にした。

 母親は、横槍を入れようとしてきたので、しばらく黙ってもらった。

 そして、話をまとめると男子児童が竜胆に告白。

 しかし、そこを断られた為、竜胆に襲いかかったそうだ。その際、竜胆が反発。

 結果として、竜胆が男子児童の事を殴った形になったのだろう。

 母親の方は反論してきたが、その反論の内容が『私の息子がそんな事…!!』とか『この子が嘘をついているだけ…』とか言ってきたので、完膚なきまでに論破して上げた。

 あの悔しそうな表情は傑作だったな(笑)



 さて、今は家に帰る途中の車内。

 どんよりと重い空気が流れているので、話の内容を変えてみる事にした。

「ねぇ竜胆。なんでさっき黙っていたの?」

「……」

 下を向いてだんまりを決め込む竜胆。

 なんで黙っているのだろうか。

「竜胆。どうして黙っているの?話してくれないと分からないよ」

「……あのね…」

 そう切り出すと、竜胆はゆっくりと話し出した。

「私はね。姉妹の中で唯一兄貴と血が繋がっているでしょ。だからね、だから…。だからね…」ポロポロ

 大粒の涙を流しながらゆっくりと話す。

「あの子に告白された時に『あなたには興味ない。私には兄貴がいるから』って言ったら『自分のお兄ちゃんを好きになるなんて変な奴!お前の兄貴もきっと変な奴なんだな!!』って言われて…」

「頭にきて、手が出たってわけか」

 そういうと、竜胆は頭を縦に振った。

 なんというか、こんな捨て台詞に向きになる竜胆も竜胆だが、言葉を選べなかった男子児童にも問題があるだろう。

「後ね。さっきも言ったけど、私は兄貴と唯一血のつながった兄妹だよね。雫が家に来たときに、雫の面倒を見ている兄貴を見てね。私も兄貴みたいにしっかりしなきゃって思ったの…。だから…、だからね…。兄貴がいなくてもこれくらいは自分で何とかしようとして…しようとして…」

 何とかしようとしたところ、あの男子児童の保護者の母親がやってきたのだろう。

 子供の能力では、大の大人に太刀打ちできず、悔しさから黙ってしまったのだろう。

「なるほどね…。でもな竜胆。一つだけ、勘違いしていることがあるぞ」

「勘違い…?」

「ああ、竜胆はな。絶対に俺のようにはなれない」

 すると、竜胆がショックを受ける音が聞こえたような気がした。

「俺のようになるなんて、俺にしかできない。雫は雫にしかなれないし、親父も親父にしかなれない。竜胆はまだ子供なんだ。もっと俺や親父たちを頼ってさ、誰にも負けない“竜胆”っていう人物を完成させないとな」

 そういって、左手で助手席に座る竜胆の頭を撫でてあげる。

 最初は、ショックを受けていた竜胆だったが頭を撫でていると、だんだんとその目に涙がたまってきた。

「俺はずっと竜胆の味方だよ。何があっても俺は竜胆の味方だから」

 そういうと、竜胆は俺の腕を振り払うと、ランドセルに顔をうずめてしまった。

 感情が高ぶっているようだし。今はそっとしておこう。



 誕生日という特別な日に、一つ大人への階段を上った竜胆であった。

 その次の日から、前に比べると俺に聞くようになったのは、成長ととらえよう…。



〜寿司を食べに行こう〜

 今日は、久しぶりに妹達を連れて回転寿司に来ている。

 全国チェーンで家族向けを売りにしたお店である。

 ネタも豊富で子供から大人まで楽しめる。

 今日は給料日だったので、ちょっと奮発してみた。

「マグロ貰い!!」

「竜胆、先にとった皿の物を食べてから次の取りなさい」

 自分の好きなネタが流れてくると、すかさず取り自分の周りを埋めていく竜胆を注意する。

「だって、食べたいんだもん」

「食べたければ注文すれば大丈夫なんだから、落ち着いて食べなさい」

「はーい」

 そう言って、自分の取った寿司を食べ始めた。

「そういえば、竜胆は山葵つけないの?」

「あれは食べ物じゃない!!」

 嫌いなのはわかるが、そこまでいうか?

 好きな人は好きなんだけどな。

 どこかの世界には山葵寿司っていうのもあるくらいなんだし。

「お兄様。山葵取ってください」

「ん。はいよ〜」

 そう言って、俺の近くにあった山葵を雫に渡した。

 雫は、姉妹の中で唯一山葵が食べられる。

 最初は凄く辛そうに食べていた
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