第4話 執事の姉妹

 勇者一行の奇襲から数日ようやく目的地に到着した。

 ここプルミエは魔界都市レスカティエへ繋がる通路の一つで、交易都市として栄えている町である。

 ここの町長にリリムが嫁いだと知らせを受けていたので、デルエラ様の次に尋ねる姉妹に選んだのだ。

 この町はレスカティエとは違い明緑魔界だから昼間は太陽が上がり、夜は月が上がる。

 レスカティエの近くで中々珍しい都市である。

 この町は入る為に城門で手続きをして入り、あとはリリム様の元に訪れるだけだ。

 訪れるだけなんだが…。

「…一体どこに行ったんだ?」

 ヘカテーが迷子になってしまった。

 理由は、人混みに紛れてしまったという事と、ヘカテーが興味が様々なところに行ってしまい見失ってしまった事が原因である。

「全く、さっそくこのコンパスの出番ですか」

 そういうと、リリムの居場所を指し示すコンパスを取り出すと、そのコンパスにヘカテーの魔力を込めた。

 すると、コンパスは俺の後ろを指した。

 針の振れ具合を見ると、それほど離れていないようだ。

 これならすぐに見つかると思い、針の指す方向を振り向いた。

 すると、その先に人だかりが出来ていた。

 しかも、その集団の中から「おりゃー!!」や「とりゃー!!」といった聞きなれた声が聞こえる。

 確信をもって、その集団の中に入っていくと、ヘカテーが輪投げの屋台で遊んでいた。

 一心不乱に、楽しそうに…。

「ヘカテー?何しているの…?」

「あっ、ロイ。ねぇねぇ、あれ見て!!」

 そういって、指を指す方向を見てみると、輪投げの商品で掌大の小さな熊のぬいぐるみがあった。

 どうやらそれを狙っているようだ。

「あれ、すごく可愛くない!?」

「うん、可愛いね。でもね、俺はそれを言いたいんじゃないだ」

「もしかして、ロイはあっちのワンちゃんの方がいい?」

 そういって、熊のぬいぐるみの隣にある犬のぬいぐるみを指さすヘカテー。

「うん。あっちも可愛いね。でも、そうじゃないだ」

「あ、もしかして、反対側のリスの方が良かった?あっちも可愛いよね」

「そろそろ、話を聞け!!」スパーン!!

「ひぶっ!!」

 テンションが高くなりすぎて暴走を始めたヘカテーにおなじみのハリセンで突っ込みを入れた。

 あまりにも素早くハリセンを叩きこんでしまったため、周りのギャラリーからは「おぉ〜」と感嘆の声が上がった。

「さぁ、早くいくよ」

「ま、待って!!せめて、あのクマさんだけ!クマさんだけ取らせて!!」

「そいっ!!」

 ごねるヘカテーが欲しがるクマのぬいぐるみ目掛けて、ヘカテーが持っていた輪を投げると、きれいな放物線を描いてクマのぬいぐるみに入った。

 それを見て、ギャラリーから再び感嘆の声が上がった。

「店主さん。それ頂けますか?」

「あ、ああ。ほら、もっていきな」

 そう言って、渡されたクマのぬいぐるみを受け取った。

「ほら、ヘカテーこれあげるから行くよ」

「わーい!ロイからのプレゼントだ!!」

 と、心底嬉しそうに受け取ったクマのぬいぐるみを抱きしめた。

 喜んでくれたのは凄くうれしいけどさ、そういうのは自分で取った方がうれしいものでは?

 まぁ、いいか。今は仕事を優先させよう。

 そして、嬉しそうにするヘカテーを連れてこの町にいるリリム様の許へ行くことにした。


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 さて、町の人にリリム様の事を聞くと町の中央にある屋敷にいるそうだ。

 コンパスの指す方向とも合っているし、間違いは無いようだ。

 さて、教えてもらった通りに進んだところ大きな屋敷があった。

 周りの建物に比べると数倍の大きさもあってすごい存在感がある。

 他の町の住人も出入りしているところを見ると住居だけでなく役所としても利用しているようだ。

「ここに私の妹がいるのね」

「ええ、ここにリリム様がいらっしゃいます。というか、姉妹の魔力位感じないの?」

「リリムの魔力は分かるけど、ロイに教えて貰いたかっただけよ♪」

 嬉しそうに私の腕に抱きつきながらそう言うヘカテー。

 不覚にもドキッとしてしまった。

「そう。それじゃあ、会いに行こうか」

「うん!」

 そう言って、ヘカテーを連れて建物の中に入っていった。

 建物に入ると受付をしていたアヌビスに魔王様からの使いという事と、この町のリリム様に面会しに来た旨を伝えると、驚いて少し犬に戻ってしまったが、何とか面会まで話を進めてくれた。

 隣で業務を行っていたのがこのアヌビスの夫だったらしく、犬に戻ったアヌビスが襲いかかってしまった。

 何とか私のシャドー・プラントで抑えるこ
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