〜天敵〜
いきなりだが俺に友達はいる。
お世辞にも多いとは言えないが、それでも男女、魔物を問わずいる。
今でも交流があるのが、変質者の冬樹や厄介者の蓮、家の修理屋の純、情報屋の華南と色々癖の強いやつらばかりである。
だが、もう一人癖の強い腐れ縁がいる。
こいつが一番付き合いが長く、小学校の頃に知り合った、いや、関わってしまったやつだ。
先に言ってしままうが、今回はそいつの話である。
『ピ〜ンポ〜ン』
「は〜い。どちら様ですか〜」
いつものチャイムが鳴り響いた。
今思うとこれには出ない方がよかったと思う。
なぜなら…。
「どちらs…」
「翔ちゃん久しぶり〜!!」
開けた瞬間、ピンク色のショートヘアーに豚の耳を生やした、少し肉付きのいい女性が飛び込んできた。
飛び込んできたその瞬間、昔テレビで見た巴投げを思い出した。
人間、こういう時は頭で動くより感覚で動いてしまうから不思議なものだ。
俺は飛び込んできたこいつの勢いに逆らうことなく、後ろに倒れた。
そして、そいつの腹に足を当て、タイミングを見計らってそのまま後ろに投げ飛ばした。
「あ〜れ〜」
何とも気の抜けるような悲鳴をあげながら部屋の中に飛んで行ってしまった。
廊下にあった色々なものを巻き込みながらそいつは転がり、最後には尻をこちらに向け高く上げた状態で止まった。
「久しぶりだな。蛍」
こいつは『橘 蛍(タチバナ ホタル)』と言って、種族は『オーク』である。
そして、俺の幼馴染でもある。
付き合いだしたのは小学校の頃だがな。
「ああ、相変わらず強いわね。惚れ直しちゃう…」
「勘弁してくれ…」
オークという種族は御存じ、強い者に媚びる特性がある。
蛍も例に漏れず、その特性を持っている。
俺たちが高校生位の時、もしかしたら中学生だったかもしれないが、丁度その頃に俺たちは喧嘩をした。
口喧嘩とかではなく、蛍は愛用のハンマーを持ち出すほどのガチな喧嘩である。
その頃には、竜胆の相手をしており体力や動体視力等が知らないうちに付いていたので、蛍の攻撃は何も怖くなかった。
なので、攻撃のすきを見て急所に一撃を決めると、見事に1発KO。
その次の日から、蛍の熱烈アピールが始まったのだ。
それは、日に日にひどくなっていき、酷い時には押し倒された時もあった。
だが、どんなことをされても妹達とのじゃれ合いに比べると可愛いもの。
押し倒された時もいろんな方法で引きはがし、事なきを得たのだった。
「今日は何しに来た」
「遊ばれにきた!!」
「うん。遊びに来たなら分かるが、『遊ばれ』ってどういう意味だ?」
「そりゃ〜。翔ちゃんが気のすむまで縄や鞭で遊んで貰おうという意味よ。あ、私やられる側ね」
「よし、それは帰ってから一人でやれ」
「一人だとつまらないんだもん」
「やったことあるんかい…」
思いもよらない爆弾発言にひきつつも、いまだに尻を高く上げ、その尻をこちらに向けている蛍を横に蹴り倒した。
その時、蛍の嬉しそうな悲鳴を上げていたような気がするが無視でいいだろう…。
「兄貴、すごい音がしたけどなにg…」
「お兄様、大丈夫d…」
「兄ちゃん、どうs…」
「兄ぃ?」
そんな感じに大騒ぎしているとリビングの方から竜胆たちが顔を出してきた。
そして、蛍の姿を見て固まってしまった。
あ〜あ、めんどくさい事になったな〜。
「何しに来た〜!!!」
「また、お兄様を狙ってきたのですね!!」
「兄ちゃんは渡さないぞ〜!!」
「む〜!」
そう言って、床に転がる蛍を飛び越えて俺に抱きついてきた。
蛍が来るといつもそうなんだよな。
妹達は、蛍の事結構嫌っているからな。
まぁ、その理由が俺なんだけどな。
「ほら、とりあえず中に入りな。お前たちも引っ付いてないで早く離れろ」
「「「「イヤ!!」」」」
そういって、さらにきつく抱きついてきた。
体からミシミシと嫌な音が音が聞こえてくる。
イヤ、お願いだがか離れてくれませんか…。
その後、ようやく離れてくれた妹達といまだに苛めてくださいオーラを出す蛍を引きづりながらリビングについた。
いやはや、本気で死ぬかと思った。
「ほら、お茶」
「ありがと〜」
そういって、俺から紅茶を受け取るとミルクと砂糖を入れてコクコクと飲みだした。
仕草だけを見ると可愛いやつなんだけどな。
「そういえば、華南に変な依頼を出したのお前だろ」
「そだよ〜。私が直接動くより、華南ちゃんにお願いした方が確実だし」
「…なんでだ…?」
「私の未来の妹の事を色々知りた
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