〜犠牲〜
初夏の生暖かい風が俺の頬を撫でる。
夏の訪れを風が夏の匂いが混じっている。
正直、俺はこういった季節の匂いが混じった風は好きだ。
特に、季節の変わり目は、これから季節が来る感じがしてとてもワクワクする。
「はぁ・・・」
それなのに、こんな重い溜息をつくのは訳がある。
それ難しいようで簡単なこと。
家の壁に大きな風穴が開いてしまったんだよ、チクショー。
何で、こんな事になったか・・・。これも簡単なことである。
「「「「・・・・・・プルプル」」」」
後ろで俺に怒られる事を怖がって、部屋の隅で震えている俺の妹達である。
土筆を翡翠が、翡翠を雫が、雫を竜胆が抱きしめ、団子のようになっている。
ちゃんと悪い事をしたっていう認識はあるようだからいいんだけど、ちゃんとしないといけないな。
「お前達、俺との約束なんだったっけ?」
「・・・『喧嘩をしても良いけど、竜化して喧嘩しない』・・・です」
竜胆に抱かれている雫が、恐る恐るといった感じに放す。
「当たり。んで、それじゃあ、何でこんな事になったんだ?」
あくまで優しく、それでいて責めるように問い詰める。
「兄ちゃんと結婚するのは誰かってことで喧嘩になって、そのまま・・・」
「ヒートアップしてしまったと・・・」
「・・・コクンッ」
思ってくれるのは嬉しいんだけど、やりすぎなんだよ。
「お前達、これで壁壊すの何度目だ?」
「・・・4回目?」
「5回目だ・・・」
そう、これが初犯じゃない。
土筆が来てからは初めてだが、土筆が来る前にすでに4回壊している。
ドラゴン属だから仕方が無いとはいえ、何度も壊されたらたまらない・・・。
一応、ドラゴン属用の保険には入っているし、このマンションの一室もドラゴン属が暴れて、壁などを壊しても直しやすいように出来ている。
「全く、何度壊したら気が済むんだ?」
「「「「ごめんなさい・・・」」」」
反省はしているようだな。
それなら、これ以上怒らないけどお仕置きは必要だ。
俺は竜胆から順にお仕置きとして、デコピンをお見舞いしてやった。
ただのデコピンだと思うなよ。
学生時代には『黄金の指』と言われ、色々畏れられたものだ。
だから、性的なお仕置きを期待したやつ、残念だったな。
さて、後ろで痛みで悶える4人は放っておいて、修理の依頼でもするか。
「・・・・・・あっ、もしもし。久しぶり〜」
『おう?ショウちゃんか?』
「ショウちゃん言うな!!」
『ショウちゃん』とは、俺の学生の時の愛称だ。
そして、この電話の相手は学生時代の友達である。
ジャイアンアントの嫁を貰い、一緒に建築業を営んでいる。
家が壊れた時はいつも個々に依頼しているのである。
『はははっ、相変わらずだな。んで、今日はどうしたよ』
「ああ、いつもの頼むよ」
『またか!?おいおい、いくらなんでも早いだろ・・・』
「いや〜、家族が増えた所為でね・・・」
『家族が増えた?ああ、ワームが増えたらしいな』
「なんで知ってる・・・?」
『華南の奴に聞いた』
「あのネズミめ・・・」
『まぁまぁ、んで依頼はいつも通りに伝えればいいんだな』
「ああ、純から奥さんに依頼したいんだがいいか?」
『あぁ、前に来てた仕事がちょうど今日終わったから予定は開いてるぜ』
「それは良かった。それじゃあ、お願いするよ」
『応!任せておきな。でも、報酬はいつものな』
「はいはい。『夫婦の果実のタルト』だったな。作ってやるよ」
『へへへ、頼んだぜ』
「こっちこそ頼んだぜ」
そういって電話を切った。
さて、これで家は大丈夫だな。
あとは、こいつらにもう二度とこんな事が起こらないように注意しておくかな・・・。
〜授業参観〜
今日はあいつらの授業参観である。
3人同時だからずっと聞いていられない。
順番的には、翡翠→雫→竜胆の順番で回るつもりである。
授業参観が始まる時間は、俺の仕事をやっている時間なので有給休暇をとって行くことにした。
3人とも俺が行くことを言ったら、張り切って登校していった。
という訳なので、土筆を連れて行こうと思う。
「土筆、そろそろ行くぞ」
「は〜い」
流石に私服じゃまずいと思い、仕事用のスーツに着替え、土筆と手を繋いで3人の学校へ向った。
3人の学校は家からさほど離れていない。
だから、車や自転車なんて使う必要が無い。
そのため、土筆と散歩する感覚で歩いていると、3人の学校に着いた。
よくある普通の鉄筋コンクリートの4階建ての小学校。
一応、俺も通っていたけどもう知って
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