暑〜・・・。
大学が終わり家に帰る為に歩く平凡な帰り。
今日の講義が午前中に終わってくれたおかげで、昼頃に大学を出る事が出来た。
私は『黒沢 紫(クロサワ ユカリ)』。種族はダークスライムで、大学4年生である。
ダークスライムが大学にいくのが不思議に思われるかもしれないけど、最近ではスライムやボブゴブリンといったお頭が弱そうな魔物娘も普通に大学に通えるほど教育が充実しているから、私からしたら、そんなに不思議ではない。
まぁ、少数派なのは否定しないけどね。
さて、今が帰り道の最中というのはさっきも話したが、そんな私の機嫌は物凄く悪かった。
表情にも出ていると分かる程、むすっとした顔で歩いていた。
期限が悪い理由は、真夏の快晴の下をアスファルトの上を歩いている事も理由のひとつだ。
知っていると思うが、私達スライムは服を着る必要が無い。
ぬれおなごは自分の表面を変化させる事が出来るようだけど、私達は別にそんな必要も無い。
しかし、今日ほど靴くらいは履いたほうが良かったかなと後悔している。
なぜなら、アスファルトの照り返しが容赦なく私を襲うからだ。
正直、体の体積が少し減っているのがなんとなく感じられる。
こんな中を歩くのは、本当に拷問に近い。
帰ったら、水でも浴びるかな。
そして、機嫌が悪いもう1つの理由が、大学であった出来事が原因である。
「あのじじぃ・・・、このクソ暑い中をあんなつまらない理由で呼びつけやがって・・・」
授業は、最履修の科目が1時間目にあっただけなので、本当はもっと早く帰れたのだが、帰ろうと思ったその時、教授から連絡が入ったのだ。
内容は『ちょっと大変な事があったから、手伝ってくれ』というもの。
何かと思って、教授の研究室に行ってみると、『排水溝が詰まったから、つまりを取り除いてくれ』といわれたのだ。
ふざけんじゃないわよ。
体を変化させれば出来なくは無いが、私はパ○プユニットかってんだ。
頭に来たから、近くにあった塩素流して帰ってきた。
※塩素は水で薄めてから使ってね。そのまま排水溝に流すのは、場合によっては危険な時があるので良い子は真似してはいけないよ。
全く、もっと好みのタイプなら聞いてあげてもいいけど、そろそろ40代になりそうなオッサンの頼みは聞きたくない。
まぁ、立場が悪くなるから、いやいやだけど言われた事はちゃんとこなしているんだけどね。
はぁ〜・・・。魔物の人権ってどこに訴えればいいんだろう?
いや、魔物だから魔物権かな?
まぁ、どっちでもいいや。
なんか、あれだけで今日の気分の全て害した感じである。
もう、今日はクーラーの効いた部屋に引きこもっていようかな・・・。
「紫お姉ちゃ〜〜〜ん!!」
!!
この幼さの残る高めで、打ちひしがれていた私を癒してくれるエンジェルの如く清らかで、疲れを一気に吹き飛ばしてくれる麗しい声は!!
声がした方向を向いてみると、一人の男の子が駆け寄ってきていた。
「しんちゃん!!」
「紫お姉ちゃん。こんにちは!」
と、私の流体の体に抱きついてきたのは『新井田 信助(ニイダ シンスケ)』私が住んでいるアパートの近くに住んでいる男の子である。
確か、今は○学2年生だったはず。
私がこっちに来た時に玄関の鍵を忘れたらしく、扉の前で半べそをかいていたのを保護してあげてからずっと私に懐いてくれている。
先に行っておくけど、まだ食べてはいないからね。
とにかく元気で、子犬のように走り回る事が大好きな子である。
子犬のように・・・・。
子犬・・・・。
・・・・。
「お姉ちゃん?」
はっ!?
子犬のような耳と尻尾と首輪を着けたしんちゃんが甘えてくる所を妄想してしまった。
全く、妄想だけで理性が切れるところだった。
本当にこの子は恐ろしいな。
「しんちゃんは今夏休みだっけ?どこに行ってたの?」
「学校のプールに行っていたんだよ」
そういわれると、確かにしんちゃんの髪はしっとりと濡れている。
それに、若干塩素のにおいもする。
今日は天気も良いからプールで遊びまくっていたんだろう。
「そうなんだ。楽しかった?」
「うん!」
今日の青空で輝く太陽にも負けないほど、輝く笑顔で頷くしんちゃん。
あぁ、駄目。
しんちゃんの笑顔で蒸発しちゃいそう・・・。
「お姉ちゃんはどうしたの?」
「お姉ちゃんはね。今日の学校が終わったから今から帰るところなんだよ」
そういうと、しんちゃんの表情が更に輝いた。
「それじゃあ、一緒に帰ろうよ!だめ?」
と、首を傾げて効いてくる。
やばい・・・。
今のしんちゃんの仕草に、鼻の奥から愛情が出そうになった。
むむむ、ダークスライムの私から紅い
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