あれから十数年の月日が流れた。
ワ−ウルフ達に託された子供はすくすくと大きくなった。
ワーウルフに育てられた所為か、とても活動的に育った。
そんな彼と彼を育てたワーウルフは、森の中に存在する土の中にあるような洞窟に住んでいる。
ここは、外に続く道から数本の小さな部屋のような空洞に広がっている。
食料庫や倉庫などに使え、とても便利な洞窟である。
「ん〜!!もう朝か・・・」
そんな洞窟の一室から1人の男が現われた。
ボサボサの短い短髪に腰巻を巻いただけのラフ過ぎる格好の男だ。
彼の名前は「ヴァリタン=ケルヴェス」、群れの皆からは「ヴァン」と呼ばれている。
彼こそが、ワーウルフに託された子供である。
彼はボサボサの頭をかくとその場で軽く体を動かした。
すると、ポキポキと心地よい音が間接から鳴った。
彼が体を動かし間接を鳴らしていると、洞窟の部屋の中央の部屋から1人のワーウルフが出てきた。
「おはよう。母さん」
「あら、今日は早いわね」
彼が“母さん”と呼んだワーウルフは、彼を彼の生みの親から託されたヴァンのいる群れのリーダーで、ヴァンを育てた育ての親である。
彼女の名は「イリアス=ケルヴェス」、若くも群れを支えるしっかりものだ。
「今日はどうするの?」
「とりあえず、狩りの練習でもするよ。師匠からは一人前を貰ったけど、まだまだな気がするからね」
「そう、私はここで作業しているわね」
「了解。それじゃあ、行ってきます!!」
ヴァンはそういうと、洞窟の外にかけていった。
しかし、この時のヴァンは気付いていなかった。
というより、忘れていた。
今日がワーウルフにとってとても大切な日だという事を・・・。
それから、時間は流れ夜。
満月の月が満天の星空の中で存在感をでかでかと主張している。
そんな気持ちの良い星空の下、ヴァンは帰路を急いでいた。
「しまったな・・・。獲物を深追いしすぎた」
彼は、狩りの練習で見つけた獲物を追っていたのだが、少し深追いしすぎて森の奥にまで入ってしまったのだ。
しかも、行った所がゴブリンたちの縄張りだったらしく、その相手もしていたのだ。
結果的には、獲物を捕らえる事は出来たが、こんな時間に走らないといけなくなったのだ。
「帰り道は分かるけど、走ったら危ないな・・・。よし、木の上を行くか」
そう結論した彼は、すぐに近くの木に登り、獲物を背負っているとは思えない程の身軽さでどんどん進んでいった。
本当なら、暗闇の中を動くのは木の上の方が落下の危険があるので地上を走った方がいいのかも知れないが、そんな考えは彼には無かった。
もしかしたら、今まで暗闇の中で動く事が多かったので、彼の目は夜でも普通の人よりも見える。
その所為なのかも知れない。
ヴァンはそのまま木の上を飛び続けていると、ようやく家にたどり着いた。
「やっと着いた。母さん怒っているだろうな・・・」
と、そんな事を呟きながら、狩ってきた獲物は既に血抜きはしてあったので、食料庫にそのまま置いて、母さんの部屋に向った。
帰ってきたら、ボスである母さんに報告するのがこの群れのルール。
破ったら後々大変な事になる。
ヴァンは、少し戸惑いながら母さんのドアをノックをした。
「・・・あれ?」
しかし、部屋から反応は帰ってこなかった。
トイレかな?と思いながらドアを押してみると、鍵はかかっていなかったようで簡単に開いてしまった。
「か、母さん・・・?」
鍵がかかっていないことに不審に思いながら、その扉をゆっくり開いた。
部屋の中は真っ暗で、何も見えない。
普通なら、蝋燭の一本でもつけているのだが、それすらもつけていない。
そんな事を不審に思いながら部屋の中に入ると、後ろから何者かにいきなり押し倒された。
「くッ!!誰だ!!?」
幸いにも、倒れた場所には物が無かったので怪我はせずにすんだ。
背中にくっついている不審者を掴み叩きつけようとしたが、するりと交わされ、逆に仰向けの体勢で押さえつけられてしまった。
その時、やっと目が真っ暗闇に慣れてきたおかげで、俺を押さえつけていた者の姿を見る事が出来た。
「ハァ・・・ハァ・・・。ヴァン・・・」
「か、母さん・・・」
そこには、母親の顔ではなく、発情しきった1人の牝に成り下がったイリアスの姿があった。
ヴァンは、その発情した母の姿を見て、ある事を思い出した。
とても大切で大変な事。
そう、今日はイリアスが発情する日、発情期の日である。
「か、母さん・・・。もしかして、ずっと待ってたの・・・?」
「ええ、貴方の帰りが遅いんだもん。ずっと1人でやってたのよ」
ヴァンは、イリアスが馬乗りになって接触している部分
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録