“苦しい”…。只、その一つの感情しか浮かばない。
“辛い”、“悲しい”、“痛い”等の感情が出てくれたら、もしかしたら、楽に壊れることができたであろう。
しかし、無情にもそれを許してはくれない。
『あぁ・・・・ぁ・・・がぁ・・・・』
口からあふれるのは、絞り出したかのような呻き。
潰された蛙の口からあふれたような声。
焼けつくような鉄の味が喉からあふれる。
断末魔をあげ過ぎて、喉をつぶしてしまったようだ。
これでは、助けて欲しくても呼ぶことができない。
地獄があるとするのなら、今まさにここがそうなのだろう。
だが、この苦しみは命の火を消すことを許さない。
命の火が消えそうになるとその火に燃料を注ぎ、消えることを許してくれない。
体からは力が抜けてしまい自分で舌を噛み切ることも出来ない。
そんな、決して死ぬことができない生き地獄。
この永遠の苦しみは私が意識を手放すまで続くのだろう。
そう思うと私を蝕む苦しみに身をゆだねながら、そっと目を閉じたのであった。
『大丈夫だよ。あなたは絶対に助けてあげる』
ブラックアウトしていく意識の中、だれかが私を抱きしめ、私をどこかに連れて行こうとしているのか引きずられる感覚の中、完全に意識を手放したのであった。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
「さて、ヘカテー。何か言い訳があるなら聞いておきますよ」
「気になっていじっただけだもん…」
プルミエの町を出発した後、次の町への移動中にあった出来事。
朝からやけにヘカテーがソワソワしてた。
私と目を合わせようとしていないのを見て、『また何かやらかしたな』と思ったので問い詰める事にした。
最初ははぐらかしてきたが、案外あっさりボロが出た。
ヘカテーのポケットから私が作ったコンパスがぽろっと落ちたのだ。
しかも、そのコンパスは良く見ると、針がグルグル回っている。つまり、壊れているのだ。
なんで壊れているのか、問い詰めた内容をまとめると…。
1、使っているところを見て触りたくなった。
↓
2、朝起きた際、コンパス発見。
↓
3、いじっている最中、手を滑らせ落下。
↓
4、コンパス故障。
↓
5、怒られること避けるため、ポケットにしまい証拠隠滅
↓
6、起きてきた私に抱きついたところ、ポッケからコンパスが落ちてしまう。
↓
7、壊したことがばれてお仕置き開始←(現在ここ)
「全く、気になったなのなら言っくれたら触らせてあげましたよ」
「む〜。だって…」
むすっとして不満を垂れるヘカテー。
「だってではありません。全く、あれは試運転の最中でしたので、下手をしたら大変なことになっていたかもしれないのですよ」
唇を尖らせて抗議の表情をするヘカテーではあるが、今回は本当に危なかった。
何もなかったから良かったが、このコンパスは何度も言うが下手をしたら本当に爆発する。
何も起こらなくて本当に良かった。
「次はちゃんと言ってくれれば触らせてあげるからね」
「は〜い」
ヘカテーが返事してくれたので次はもう大丈夫だろう。
そして、自分の影から黒い塊を取り出した。
「それは?」
「私が作ったアイテム専用のリペアキットだよ」
そういうと、塊の上にコンパスを置いた。すると、塊から触手のような物が伸びコンパスを包み込んでしまった。
「おおぉ〜」
「さて、これでしばらくすれば元通りになるので大丈夫です」
そう言って、その塊を自分の影にしまった。
「ねぇ!さっきのどうなっているの!?見せて見せて!!」
「ごめんね。これは私以外がふれると危ないのでこれだけは触らせられないんだ」
下手したら取り込まれてそのまま…、ってこともあり得る。
なので、これはできるだけ影にしまっておきたい。
「どれくらいで直るの?」
「大体ひと晩で直りますよ」
興味を持ち始めたヘカテーが目をキラキラしながら聞いてくる。
とりあえず、興味を示しても勝手に行動しないことを祈ろう。
「さ、そろそろ行こうか」
「うん♪」
元気良く返事をしたヘカテーを尻目に野宿道具をしまい、出発の準備を終わらせた。
しかし、そんな時だった。
「ん?この気配は…」
と、違う方向を向いて何かに気が付いたヘカテー。
「ヘカテー?どうしたの?」
ヘカテーの行動に周囲の警戒を強めつつ、ヘカテーに気付かれない様、平穏を装いながらそう聞き返した。
この子はのんびりとしていることが多いが、時折私が気付かなかったことに気付くことがある。
と、警戒していると、ヘカテーの表情
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