▲不思議の国・女王の城裏門▲
▲コルヌ視点▲
「まさかこんな条件だなんて」
「このままじゃ入場出来ないよ」
両親が困った顔をしている。
「おはよう、コルヌ」
ウェイトレスの少女がウェイターの青年と共にやって来た。
「グレーテルさん、それにヘンゼルさん。二人も緊急召集ですか?」
「そうよ、お陰でお菓子のカフェは臨時休業する羽目になったわ。それよりまた門の前で立ち往生してるの?」
「はい……」
ヘンゼルさんが門に立て掛けられた看板を読む。
「えっと……『門を開くにはアリス十人分の魔力認証が必要です』」
「城の仕掛けってホント気まぐれよね」
「いいじゃない、これでアリスが一人よ。一歩前進よ前進」
「アリスがあと九人来れば門が開くんだ。前向きにね」
「コルヌの両親は相変わらず呑気ね」
「羨ましい限りだよ」
「普段はああだけどボク達家族を大事にしてくれるよ。コーンやリコも母の日のイベント頑張ったし」
「そうそう、母の日にリコとコーンが私にプレゼントを渡したときの笑顔、とても嬉しかったわ」
「ママは幸せ者だね」
「これも何百回も樹増の塔に挑戦したお陰ね、パパ」
「子宝宝樹に三回もお願いしたお陰だね、ママ」
「正直ちょっと羨ましい、アタシも赤ちゃん欲しいな……」
「グレーテル、焦ることは無いって」
「やぁコルヌ君」
「カミラ先生、ごきげんよう」
燕尾服のヴァンパイア――カミラ園長先生。
ボクは紳士として優雅に挨拶する。
「君をみていると君が白百合の花園を訪れた時の事が鮮明に思い出されるよ。可愛らしい蕾だった少女が可憐な百合へと開花し、花園を巣だった後は競技場のカード競技で連戦連勝。僅か一年でフォーカードの座につくという競技場きっての超新星、それから暫くして君は今にも枯れそうな花を連れて白百合の花園へと舞い戻った」
「マドラのことですね」
「そう、深窓の令嬢だった彼女は華麗な麗人へと生まれ変わり、花の成長を見守った君と共に素晴らしい百合を大舞台へと披露した。決して忘れはしない、光無き世界で輝く二人のダンスを。マドラ君のタキシード姿とコルヌ君のドレ「カミラ様、演技はそこまでにしてください」
秘書でアリスのローラさんがカミラ先生を止める。
「せっかくノッテキタのに――ぷんぷん」
「ぷんぷんじゃありません。もうすぐ会議の予定時刻ですよ。門は沈黙したままなのですか?」
「裏門の沈黙を破るには十人のアリスが必要なんだ」
「なんと、それは困りましたね……」
♪,♪,♪,
軽快な音楽が聞こえてきた。
「何ですかこのふざけた音楽は……ってカミラ様もじっとしてください、気が散ります」
「いや、違うんだ、この音楽を聴いてると、何だか踊りたくなって」
「奇遇だな、僕たちも楽しくなってきたよ」
「私もよ、何だか懐かしいメロディだわ」
両親もノリノリで踊り出す。
「聴いてるうちにだんだん踊りたくなる音楽……まさかダンダンシティーの音楽?」
「グレーテル、それってこの国の北側にある住人たちが音楽に合わせて常に踊っている都市――」
「ヨォ♪ヨォ♪ヨォ♪」
赤を基調としたシューズでステップを踏みながら
「ヨォ♪ヨォ♪チェケラッチョ♪ダンダンシティーのカリスマ♪DJ可憐参上♪」
ヒップホップな衣装を着た十一歳くらいのアリスが軽快なリズムで現れる。
「悪いけど、音楽止めてくれない?」
「オゥ失礼♪でしたか♪“音楽停止”♪」
ローラさんに指摘され、可憐さんが指パッチンをすると音楽が鳴り止んだ。
「いやー楽しかったよ」
「身体が暖まって、このあと滅茶苦茶セックスしたい気分だわ」
両親が可憐さんに礼を言う。
「二人ともセックスはもう少し我慢してよね」
「ええ〜」
「コルヌちゃんのケチ〜」
「どうせヤるなら会議中の方がいいでしょ?」
「「はーい」」
「ムシャムシャ…」
次にやって来たのはリンゴを咀嚼する七歳くらいのアリス。
「ラユキさん」
「ムシャムシャ…おはようコルヌ」
「ラユキはリンゴ大好きアリスちゃん♪不思議美術館の副館長♪」
「ムシャムシャ…解説ありがと」
「やっと着いたねカイ」
「ああ、ここが女王様の城だ」
次にやって来たのは防寒着を着用した十三歳くらいのアリスとその夫。
「寒々村のカイ&ゲルダ♪常に雪降る村の住人♪防寒着着用は必然♪」
「これでアリスは五人……おやあれは?」
巨大な犬――犬の姿をした金貨兵がこちらに向かってくる。
犬から降り立つ三つの影
「到着でござる」
ジパングの鎧を着用したアリス
「とうちゃーく」
ピクシー並みに小さいアリス
「たまにはこんな移動も悪くはないね」
緑色の羽帽子、緑色の半ズボン、緑色の服を着たショタ――風のアリス
「オ
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