優しい触手と純白の令嬢

Μ不思議の国・タマゴの里・初太とマドラ宅Μ
Μ初太視点Μ


「初太、食パンにバターを塗り終えた?」
「あと一枚だ」
「こっちも具材を切り終えたから、パンの上に具材を乗せよう」

「キュウリと要り卵を乗せて、初太、食パン持った?」
「おう」
「いくよ、せーの」

パンッ♪

「一枚目完成♪」

「次は生ハムとレタスを乗せて」

マドラが食パンに具材を乗せたのを見計らって、俺はもう片方の食パンを持つ。

「いくよ」

マドラが具材を乗せた食パンを片手で持って

俺の食パンと重ね合わせる。

夫婦揃っての共同作業。

こうして俺とマドラが一緒に作るサンドイッチが出来上がる。

今日はマドラとデート。

場所はタマゴの里から北にあるソーンファーム。

触手と眠りと精液の牧場と呼ばれてる食糧調達スポットらしい。

「行こうか初太」

マドラは弁当や飲み物等をバスケットに詰め、家のドアを開ける。



「今日はいい天気だね、初太」
「ああ、絶好のピクニック日和だな」

雲ひとつ無い青空。

媚薬の雨が降る気配は無し――と言いたい所だが、ここは不思議の国。例え快晴でも急に媚薬の雨が降り注いでも不思議ではないようだ。

戸締まりをしたマドラは、俺に手を差し出す。

夫婦が手を繋いで歩くのは当然のことだな。

俺はマドラの手を握る。

暖かい

妻の手の温もりを感じながら里を歩く。


ΜΜΜ


それから道中、おつかい目的でソーンファームに向かう養鶏場の双子と会ったり、倒れた来訪者を救出したり、彼女達と共にソーンファームを見学したり、とあるドーマウスファミリーとの出会い等があった。

来訪者は養鶏場の双子が任せると言ったので、双子達に別れを告げ


Μソーンファーム・触手の草原Μ


「よし、ここでお弁当を食べよう」

俺とマドラのデートが始まった。

ビニールシートを敷き、朝作ったサンドイッチを食べる。

パクッ、ムシャムシャ…

うん、マドラと一緒に作ったサンドイッチは格別だ。

俺は食パンの食感とレタスの歯ごたえを噛み締めながら、草原を見渡す。

地平線の他にも、草原の触手が空に向かって伸び、触手の樹となり、樹から果物、野菜、肉や魚が実ってゆく。

樹の周りには人や魔物が集まり、樹に実る贈り物を食し、時に収穫する。

実を全て獲り終えた時、樹はその役目を終えるかのように縮み、母なる草原へと帰って行く。

「食べ物に困らないんだな、食料調達に来た来訪者が永住しても不思議じゃないな」

「触手の樹は食べ物を収穫するだけじゃないよ」

マドラに言われて気づいた。

触手の樹の下で厚い口付けを交わすカップルがいることに。

一組だけならまだわかる

それが十組になると、異様な光景にも――見えなくはない。

口付けを交わしていたカップル達が次々と消えて行く。

「消えた……まさかあの樹はワープスポットなのか?」
「あの樹だけじゃない、不思議の国にはあちこちにワープスポットがあって、住人の殆どがワープの条件を把握してるんだよ」

あんな風にと、マドラが指した先には、触手の樹で拘束プレイをしている男女がいた。

ボンテージを着用した褐色肌の女がロープを使って男性を樹にくくりつけているようだ。

あの二人も口付けをすれば――と思ってたら、二人が突然消えた。

「おい、消えたぞ。まだ口付けをしてないのに」
「あれはロープ等で相手を一定時間拘束すればワープする仕掛けのようだね」
「拘束する需要はあるのか?」
「意外と多いよ。特にラミア属は夫が浮気しないよう蛇の体で夫を縛りつける傾向があるって」

それから俺は、ソーンファームの仕掛けと起動条件を目にする。

交わりから手コキ、四つん這いといったエロありは勿論のこと、エロなしの条件も一言では言い表せない程様々なものがあり、一分間その場から一切動かないだけで、仕掛けが発動するのを見たときは呆気にとられたぞ。

「あんなやり方でワープ出来るなら、移動にはさぞかし困らないだろうな」
「だからこの国では乗用車の需要は少ないんだよ。ぼくも最初の頃は馬車を全然見かけないから戸惑ったよ」
「その方がいいかもしれないな、事故を起こさなくて済むし」

「初太……」ビュウウウ「キャッ!」

突然の強風

マドラは咄嗟に頭の帽子を押さえる。
吹き抜ける風が俺の頬に当たり、草原を靡かせる。

この風は警告か?

安易に自身の過去を打ち明けるなという

だが

「俺の両親はドライブ中に自動車事故を起こして命を落とした」

俺はマドラに語り始める。

「六歳だった俺を残して」

風の流れが雑音となり

「当時の俺は人の死とかわからないことだらけだったけど」

妻が俺の告白を聴こえているかどうかの狭間で

「もしその事故が人災で、
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