祝福の誕生会と浸透の洗髪

※ザントライユ城※
※シャンプ視点※


「誕生パーティー?」
「招待状にそう書かれてありました」
「今日がロザリーちゃんの誕生日なのね」
「いえ、誕生日ならとうに過ぎております」
「すぎてるの?」
「誕生日を迎える前に不思議の国へ転送されたので誕生会どころではなかったのです」

「お嬢様、早速衣裳室で着替えましょう。ドレスコードの指定は?」
「ありません」
「指定なしか……だが誕生日パーティーにふさわしいコーデが必要だ」


※壁画の通路※


衣裳室はあたしとロザリーちゃんが出会った壁画の近くにあったようだ。

S-50が扉の解錠をする。

「着替えてきます……」

ロザリーはS-50と共に衣裳室に入る。

「ロザリーの衣装チェンジ、わくわく。そうだ、シャンプよ、ロザリーが着替え終わるまでの間、私と話をしよう」

「だったら」

リンスが喋ると、カミラは一蹴するように

「じゃがいもは淫猥な壁画をおかずに自慰でもしてろ!」
「できるか!」
「絵画の中で魔力が込められた作品は見ただけでその光景が脳裏に焼き付くそうだ。それにこの国の絵は生きている。信じられない顔をしているな。今一度壁画を見てみろ」
「見てみろって……あれ?壁画の人物達の様子がさっきと違うぞ!?」


戦乙女と勇者の体勢が騎乗位から後背位に


剣を交わしていたはずの兵士と蜥蜴戦士が、剣を捨て、腕を背中に回し、ディープキスをしながら、密着している


サバトの方は事後なのか、魔女や使い魔が夫におんぶされて眠りについている


まるで間違い探し。


「何で絵が変化したの?」
「いい質問だなシャンプ、それはーー」


「コーデが済んだぞ」


試着部屋からS-50とロザリーが顔を出す。

「おおっ、愛しのロザリーの可愛らしい姿にキュンキュン♪」

頭に白の蝶型リボンにウェーブヘア、ピンクのエプロンドレス

先程の彼女は貴族の令嬢が持つ高級なお人形であったのに対し、今の彼女は一般の家庭にある子供向けのお人形を彷彿させた。

「何やら騒がしかったようですが?」
「壁画が変化してることに驚いてたの」

ロザリーは、何だそんな事ですか、と言い

「魔界の美術館で展示してある彫刻作品がゴーレムやガーゴイルとして命が吹き込まれるように、ここは不思議の国、女王様の魔力によって絵画が変化しても不思議ではありませんわ」

「私もロザリーと同じことを言おうとしたのだ」

「ただ……この壁画は元々は旧時代の残虐を描いていました」

「シャンプ、旧時代って何だ?」
「人間と魔物が争ってた時代のことよ」

「それは口に出すのが嫌なくらい残酷な作品でした。しかし不思議の国に来てから、壁画がまるで生きているかのように動きだし、あのような美しい作品へと生まれ変わりました。今でも誰も見ていない間に描かれた男女の様子が変化するのです」

説明を終えたロザリーが深呼吸する。

「こんな所で立ち話をしてる場合ではありませんね、パーティー会場へと向かいますわよ」
「はい、お嬢様」


※トリックストリート住宅地※


あたし達は城を出て、街中を歩く。

「賑やかな街ですわね。見ず知らずの方からお菓子を貰ったり、イタズラが許されるなんて、考えもしませんでした」
「ロザリーちゃんはイタズラしたことはないの?」
「お祖母様の教育が厳しく、イタズラどころではありませんでした」

そんなあたし達の所にも子供達がやってきて

「お菓子をくれなきゃ」
「イタズラしちゃうぜ」

「わたくしは御用がありますので」

「お菓子をくれないの」
「だったら」

子供達が道具を取り出す



前にS-50が子供達の腕を掴み

「君達、悪戯は時と場合を考えなきゃ。妹はこれからパーティーに向かうのだから」

子供達を嗜める。

「ごめんなさい」
「パーティーにお呼ばれなら仕方がないな」

「いい子だ」

端から見れば紳士的だが、あくまでもシスコンの延長線上だとわかった今は「妹好きの」という主語を追加するべきだろう。


※ジュリー宅※


「ここがパーティー会場です」
「ジュリーさんの家で開かれるのね」

「ロザリー様ですね。パーティーの準備が出来てます」

ゴーストの案内であたし達は家に入る


※ジュリー宅・リビング前※


「中へお入りください」

ゴーストが灯り無き部屋に入るよう指示する。

「失礼します」

あたし達は暗闇に足を踏み入れるとライトが点灯し



「ロザリーちゃん」パァン
「お誕生日おめでとう」パァン!



クラッカーの音がロザリーちゃんを祝福した。


「はい、けーき」

ゾンビ少女が蓋を開ける。中身は人面のような装飾がされた灰色のケーキ

「アンデッドハイイロナゲキタケ風ケーキだよ」
「グレーテルさん
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