千変万化の紅茶と千差万別の猛犬

Μラピッドタウン・お菓子のカフェΜ
Μ満知子視点Μ


「こちらにお座りください」

チェシャ猫のウェイトレスに屋外席へと案内されたアタシ達。

「満知子、この椅子はフレークで出来てるんだな」
「へーくん、アタシのはラムネで出来てるわよ」


「見て、ヘンゼル様よ」
「既婚じゃ無ければテイクアウトなのに」


見た目は好青年なウェイターがアタシとへーくんが座る席へと向かう。

「いらっしゃいませ、満知子様と平也様。いつも当店にご来店いただき誠にありがとうございます」

「ヘンゼルさん、いつもの日替わりタルトセットを二つと、タイムティーを二杯」

「畏まりました、満知子様。紅茶は食前と食後、どちらに致しましょうか?」
「食後で」
「畏まりました」

「本日のタルトは、ソーンファームのドーマウス四姉弟自家製のチーズ味,トリックストリート産のカボチャ味,そしてキョウシュウマウンテンの教習所で収穫された特産品となっております」
「ぬわにぃ、あの教習所から収穫されただとぉ!」
「あそこって芋を栽培してたかしら?」

「自然に生えた変種で、処分という形で教官から譲り受けました」
「処分って、大丈夫なのそれ?」
「グレー……店長によれば刺激的な味なので、食べる際はくれぐれも注意してくださいとのことです」
「ふーん、あれ?隣の席に来店者が来たようね」


「お席はこちらです」


マーチヘアのウェイトレスに案内された男が隣席に座る。さっきとは別の討伐隊だ。

「飯を食わせてくれ、金ならある」
「ご注文は?」
「そうだな、日替りタルトセットとは何だ?」
「まかいものタルトでして、三種類のタルトが味わえます。媚薬成分は一切無く、来訪者の方々にもオススメです」
「この値段なら安いな、タルトセットを一つ」
「畏まりました、お飲み物としてタイムティーは如何ですか?無料ですよ」
「……それも貰おう」
「ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」
「ああ」
「畏まりました」

マーチヘアのウェイトレスは厨房へと向かう。
その足取りはウキウキしながらであることにアタシは見逃さなかった。

「満知子、教習所といえば、雑貨屋のフルーフ夫妻もキョウシュウマウンテンで免許をとったのかな?」
「バイクだからあの山にある教習所で免許を所得したと見て間違いないわね」
「だよな、魔界豚やスクーターならソーンファームにある教習所で充分だからな」
「この国でも運転免許が必要とはね」
「仕方ないさ、不思議の国は男女があらゆる場所で交わる事が出来る理想郷」
「確かに道路の真ん中や、建物裏で平然と交わっても不思議じゃないわ」


「んー♪」
「チュッチュ促


「向かいで熱い接吻をする夫婦がいても不思議じゃないよね♪」
「情事の最中に、騎乗による接触で雰囲気を壊さないためにも、運転技術が必要なのよね」
「それに〜各所ではワープ系の仕掛けが多くて〜口付けしたり〜相手の部位を刺激しあうことで目的地にワープ出来るから〜騎乗による移動手段なんて不要だよね〜ハートの女王様〜素晴らしい仕掛けを生み出してくれてありがと〜」
「そうね、移動手段としては便利ね」
「……」
「どうしたの、へーくん」
「さっきからオレ達、まともな会話しかしてないと思ってさ」
「今は交わりに帰結する会話をする気はないわよ(^^)」
「ショボーン」

「お待たせしました、ご注文のタルトセットでございます」
「へーくん、話はここまでにして食事にしましょ」
「……そだね」

「ではごゆっくりとお召し上がりーーください」

シュシュシュ

「あーっ、大人化ケーキの効力が切れちゃったー!」


「きゃー、ヘンゼル様の子供姿よ」
「あの姿も可愛くて、庇護欲を掻き立てるわー」


「グレーテル〜大人化ケーキ頂戴〜」


「妹に縋りつくヘンゼル様も可愛い〜」
「私もここでバイトしようかしら」
「働きながら、夫捜しをしてもいいし」
「私は稼いだ給与で、香水を買って旦那様をメロメロにしたいわ」


「あの兄妹も大変ね」
「店長が常に接客係を募集するのも無理ないな」
「へーくん、早速いただきましょう」
「先ずはチーズ味からと」
「ぱくっ」
「ムシャムシャ……こ、この芋は!」
「また始まった」
「先ずは香り、発酵した乳製品の香りは眠気を覚まし、齧ればトロリと柔らかく溶け、その感触を舌で確かめるために目を瞑り、舌で甘く広がるチーズの味が夢と現実の狭間で脳へ伝わる。正に眠りのサイクルといえる三重奏」
「ドーマウスはほぼ眠ってばかりだけどね」

Μ

「次はカボチャ味ね」
「毎日がハロウィンの街で栽培された芋か……果たして」
「はむっ」
「ムシャムシャ…………普通のカボチャだな」
「そうね、でも美味しいわよ」
「そうだ、生産者が明確ではない普通のカボチ
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