第七話

※魔界平野※
※O-721視点※


「魔界第二十王女、何故俺にビンタを……?」
「気付いて、ないの?」
「何がだ」
「ウォッカ、泣いてるよ」

「あれ?アタシの目から涙が……」

「尋問じゃ、ウォッカよ、今の心境を答えよ」
「……オナニーに向かって矢が放たれた時、もう二度と愚痴が聞けない、笑ってくれない、結婚式も挙げられないと思った」

「オナニーよ、捕虜であるはずのそなたが何故ウォッカを守った?」
「俺はただ、ウォッカの決意に賛同しただけだ」

「賛同?改心ではないのか?」
「勘違いするな、ウォッカが自らの意志で動いたのに、男である俺が高見の見物でどうする」


「成る程、つまり互いに両想いという事じゃな」


「「はい?」」


「何故そうなる!」
「そうですよ別にアタシはこいつの事なんか」
「余は嘘と隠し事が嫌いじゃ、今の流れで誰が見ても「もうお前ら結婚しろよ」と言いたくなるじゃろ」
「安直に結婚出来るか!」
「結婚なんて、姉上が承諾するはず無いーー」

「いいよ、結婚しても」

「「いいのかよ!」」

「あたしは、魔物化後は、基本自由にさせてる。恋愛や結婚といった、アフターケアもしてる」
『時にはハーレム用のゴーレム作成に付き合わされたりィ、一苦労する事もあるけどねェ』

「まさかエネミス帝国も?」
「……うん、あたしが、ピスコ様をアポピスにした後も、魔界化無しの改革を手伝った」

「魔界化無しだと?」
「ピスコ様は、アポピスの素質を持ちながらも、太陽が好きな人、国民を守るため、魔物と教団、両者を敵に回さないよう、彼女なりに考えた」
『だから国を暗黒魔界にせずゥ表向きは反魔物領の新魔物領にしたのォ』

「凄く回りくどいですね」
「うんうん〜素直に魔界化しちゃえばいいのに〜」

「軽々しく言うな!」

「キャっ」
「ひえ〜」

「キャサリン、バブリー、オナニーが怒鳴る気持ちも汲み取ってくれ」

「住民の中には資源の問題上、魔界化を望む者も少なくは無かった。エネミス帝国は砂漠にある国、魔界化すればそれが解決すると」
「だが、それは人間をやめるも同然の行為。意見するだけで村八分、最悪地下牢獄行きだった」
「アタシとオナニーは、そんな連中を多く見てきた」

「だけど、ピスコ様は、そんな彼らを、陰ながら支えた」
『鏡の映像が正にそれだよォ』

「腑に落ちんな」
「どうして?」

「皇帝夫妻はまだしも、帝国にはテキーラ様がいるんだぞ」
「テキーラ様〜?」

「主神の使いであるエンジェルさ、アタシとオナニーに勇者の力を与えた」
「つまりテキーラ様は一切堕落していないのだ、それに何故俺やウォッカを含めた兵士一万に襲撃命令を出す?」

「百聞は一見にしかず、カフェオレ、鏡」
『鏡はオレが持ってたよォ』
「鏡よ、鏡、鏡様、天使テキーラを、映しておくれ」
『ピスコ様から貰ったこのペンダントは便利だな。魔力を遮断するから、かれこれ百年以上綺麗なままーー』

「まさか、テキーラ様まで騙されているとは……これなら悪オチの方がまだマシだよ」


「ウォッカ、改めて言う」
「姉上……」
「ウォッカには、幸せになってほしい」


「ドラゴンは、プライドの塊、強い男を求め、それ以外を見下す」


「だけど、それで、本当の気持ちを隠したら、誰かを愛するという、魔物娘としての幸せを、得られない」

「だからウォッカは、本当の気持ちで、彼を愛してほしい」


「ウォッカをドラゴンに変えた、あたしが、言える筋合いじゃないけど」
「……判った、それが姉上の望みなら」


「……貴男も、同じ」
「俺も?」
「矢が放たれた時、わざと避けなかったよね?」
「……第二十王女の言うとおりだ」


「誰かを守るのは、大事なこと、だけど自分を守るのも、もっと大事」


「貴男がいなくなったら、ウォッカが哀しむし、キャサリンやバブリーも哀しむ」


「だから、彼女達を泣かすような事をしては、駄目」
「それが第二十王女の、いやビューティの願いか」
「うん、次は、ビンタだけじゃ、済まないから」
「ああ」

「話は済んだようじゃから、そろそろ魔王城へ戻るとするかのう。皆の者、余について行くのじゃ」

「ハートの女王様ったら」
「ホント、自由奔放やんね」

「キャサリン、何故俺に手を差し出す?」
「勇者様、一緒に帰ろう」
「……鋏で連行しないのか?」

「あれ〜勇者さま〜キャサリンのカニ挟みが恋しいの〜?」
「そんな訳あるか、バブリー」
「そんなこと言って〜ホントの気持ちは〜?」
「だからベタベタするな、香りがキツい!」

「ん?確かバブルスライムの匂いは平気じゃ無かったのか?」
「何故かさっきからバブリーからいい香りがしてきてーーって、ウォッカ、何言わせるんだ!」
「それはバブルスラ
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