夢を見ていた
やあ、これはこれは珍しいお客さんだ。
目の前で帽子を被った少年がティーカップを片手に紅茶を嗜んでいるのだから
一人でお茶会を楽しんでいる最中にいきなり目の前に現れて流石の僕も驚いたよ。
確か自宅でパソコンでレポートを作成中、徹夜続きだったから机の上で眠りについてーー
君はこの世界の人間じゃないようだが、何処から来たのかな?
この世界の人間じゃない?
ふふ、君の反応を見ていれば不思議の国どころか魔物娘の世界の人間ではないことぐらい気付くのはマッドハッターの僕には当然のことさ。
マッドハッター、それって有名な童話に出てくる奇天烈な思考を持つ紳士のことか?確か不思議の国に迷い込んだアリスがお茶会で出会ってーー
ほぅ、君の世界にも不思議の国やアリス、マッドハッターは実在するのか?
本や映画を観たことがあるから、ただ、容姿は君のような小柄な少年とは違って大人の男性だし、何よりーー
何より?僕と何からの違いがあるのかな?ほら言ってごらん?
近い近い、顔が近い、き、キノコ、君の帽子や、服から、キノコが生えている
なるほどなるほど、君の世界のマッドハッターはキノコに寄生されていない「男性」なのか。
ああ、そうだ。にしても何故に少年にドキドキしてるーーー
「男性」なのか。
何故そこを強調する?
いや、驚きは後でとっておこうと思ってね。それより君はさっきお茶会って言ったよね?
そうだが、アリスもマッドハッター達と一緒に紅茶や料理を嗜むーー
そうなのだよ!僕は君とお茶を楽しみたいのだよ!
はい?
庭師のマーチヘアが楽しむように栽培した茶葉をドラゴン化したジャバウォックが取り寄せた巨大ポットで沸かし、ポットの中へ押し込んだドーマウスのエキスをひたせばなおのこと美味い、使用人のトランパートが用意してくれたお菓子や料理を味わい、ワンダーワームが放つ煙草の香りを楽しみながら、何処から現れたチェシャ猫と会話を楽しみ、お茶会が終わる頃には空っぽになったポットを洗うべく、ジャブジャブとハンプティエッグが自分の体液でポットを洗ったら、中からベチャベチャにドロドロになった、べちゃどろマウスが出てきてーー
あの〜
すまない、僕は夢中になると会話ーーいや独り言が弾むクセがあってね。
いや、弾むというレベルでは
せっかくだから紅茶と料理を楽しもう。
別にお腹空いてはーー
これは君にとっての夢みたいなもの、満腹だろうが空腹だろうが関係ない。いくら食べても太らないからいくらでも食べれていくらでも飲める。
じゃあまずはこのクッキーから
しかもお菓子特有の効能はそのまま効くという贅沢でご都合主義。
あれ?身体が縮んで
そうなのだよ!子供になるクッキーなのだよ!
背が縮んで、縮んで、縮んでる!
わかるかい?君は僕と同じ背丈なのだよ。ただ僕は145に対して君は150、誤差はあるが身長差は関係ない。これでむりに背を伸ばさずともこうして口付けを交わすことが出来るーー
待て男同士でやる趣味は
ちゅっ、くちゅ
何をーーんっ、はぁはぁ
どうしたのかな?君の舌が僕の舌を絡んでいるよ?さっき男同士でやる趣味はどうとか言っていたが?
いや、男同士でキスをするの、悪くはないかと
うんうん、男同士でキスするのは悪いことではない。不思議の国で迷い込んだ男同士の片割れが女、つまり魔物娘になるお菓子を食べて好奇心から交わりメスの喜びを知り元に戻らずそのまま夫婦になるのは当然のことさ、では次にこのケーキを食べてごらん。
もぐもぐ、んっ、身体が熱い、まさかこれはさっき言っていた女になるお菓子?
まぁ、今の会話の流れなら君は女になるーーという展開になっても不思議ではないのだが、生憎僕は男を、将来の夫になるかもしれない相手を女にする性癖はない。何故なら女になって胸がボインボイン〜、尻がムッチムッチ〜になるなんて僕個人のプライドが許せないし、そもそも知り合いのマッドハッターが自分の夫を女にして百合百合やっているからお腹いっぱい。では君の身体の変化の詳細は?種明かしすれば君はいま一回り成長して大人になるのだよ。
すげぇ、さっきの子供と違って背が伸びてる
ふむ、180だね。サバト不思議の国支部に属するアリス達が選ぶ理想のお兄ちゃんキャラランキング上位に食い込む。僕の理想としては申し分ない。早速だが僕の頭を撫で欲しい。ほら、帽子を脱ぐから。
わかった、なでなでなでなでーー
もっとだ、夢の中だから、頭を撫でるイメージをするのだ。
なでなでなでなでにもっとイメージしてクシャクシャ
このあたまをなでられる感覚、気持ちがいいもの
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