こどもの日(前編)

※魔王城※
※グリア視点※


「それではいってきます。母上」
「お姉ちゃんとしてスラコの面倒を見るのよ」

「ちゃんとグリアお姉ちゃんの言うことを聞くのよー」
「はいっ」


今日はこどもの日、母上とスライムのスラミさんに見送られながらスライムのスラコと一緒に菖蒲(しょうぶ)を買いにいくのです


「いいー店の名前は『鎧の花屋』よー城下町で菖蒲が買えるのはその店だけだからー」

「もうしつこいですね!ちゃんと覚えてますよ。母上はマインドフレイアですか?」

「ママはパピヨンよーあと店長さんによろしくつたえてねー店長さんだけでいいからー」

「まったく母上は、スラコのおつかいについていくだけなのに大袈裟なのです」
「おねえちゃんたちがいってた、ハーレムのスライムたちはぶんれつちたきねんにはじめてのおつかいをちゅるの、そのちゃいにハーレムのおねえちゃんといっちょにいくって」
「だからといってわざわざ私を指名する必要があるのですか……」
「わたちたちってちまいだったのでちゅね、グリアはとろとろしてないのに」
「正確には父親が同じで母親が違う、つまり義理の姉妹なのです」
「ぎりなんだ、ぎり、ぎり」


「おはよう、グリアちゃん」
「おはようございます、ルプスさん」

魔王城の門番をしている執事服を着た女性が私に挨拶をします

「君達もこどもの日のために買い物に行くの?」
「はい、菖蒲を買いに城下町へ」

「そうなんだ。ほら、今日は買い物目的で城を出る人達が多いんだよ」
「悪かったよルプス、どうせベッドでイチャコラしてるよなんて言ってさ」

ルプスさんが伴侶と話に盛り上がっています

「アイリスも言ってたよ。サバトも後輩魔女のために先輩魔女が張り切って買い物をしてるって、自分の子供のために買い物に行く夫婦もいるし」
「そういえば太陽の勇者も奥さんを連れて子供達のために花を買いに行くって言ってたな……」
「親にとっては子供はいくつになっても子供なんだね」

流石王魔界、警備中でも日常会話をするくらい平和なのですね

「あのサキュバス、おとこのかっこうをちてまちゅ」
「スラコ、人に向かって指差してはいけないのです」

「いいよ、今日はこどもの日だから。あと正確に言えばぼくはアルプ。元男だよ」

ルプスさんはそう笑って返します

「あるぷ?もとおとこ?」
「魔物娘の中には、人間の男性がサキュバス化した種族がいるのです」
「へぇーちょうなのでちゅね」
「私達のハーレムの中にもアルプは沢山いますよ。おっと、そろそろ行きますよ」

ここで立ち話をしていたらお昼になりそうなので、スラコを連れて城下町へ向かいます


※城下町※


「おつかい、おつかい、めもめも、めもめも」

スラコは歌を歌いながらメモを取り出します

メモには漢字で大きく『菖蒲一束』と書かれています

「まちにはこんなにサキュバスがいっぱいなのでちゅね」
「そうですよ、それぞれ愛する夫とラブラブな生活を送っているのです」

「ヤッホー」
「イエーイ」

「わー」

二人のアルプが私達の後ろを駆け抜けようとぶつかりそうになります

「こら、ぶつかったらどうするのですか!」

「何だよ、こどもの日だから、はしゃいでもいいだろ」
「今日くらい、男らしく元気にしたいのさ、悔しかったら追いかけてみろ!まぁ、スライムと芋虫には一生掛かっても追い付けないだろうな」

アルプの子供達はあっかんべーとおしりペンペンしながら、鯉のぼりを片手に逃走します


「ぶー!」
「スラコ、ああいう子供の挑発に乗らないのが大人なのですよ」
「おとなはちょうはつにのらないの?」
「そうです。ただ大人の中には挑発に乗る奴もいますが、私が知る限りそれはバカか四つ子魔女のアオイぐらい――」



「あらグリア、ごきげんよう」



「!?」

突然の呼び掛けに私は思わず振り向きます

振り向くと、色とりどりのローブを着た四人の魔女がいたのです


「あ、アオイ、アカリ、アキラ、アリサ」

「どうかしまして?まるでコカトリスに石にされたような顔をしていますわよ」
「な、何でもないです……」

良かった、聞かれなかったようですね

「みんなおなじかおだ」

四人の魔女の顔を交互に見ながらスラコははしゃぎます

「当然ですわ、わたくし達は四つ子の魔女ですので」

青のローブの魔女、アオイが自慢気に胸をはります

「その娘…スラミさんの娘さん?」
「ふわぁ〜また産んだんだね。記録更新だ」

緑のローブの魔女、アキラと黄のローブの魔女、アリサがスラコに興味津々

「グリア、またお前も食料を買いに来たのか、食い意地はってるな〜」

赤のローブの魔女が私にちょっかいをかけます

「アカリ、今日はスラコと一緒に菖蒲を買いにきただけなの
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