※不思議の国・タマゴの里・ハッチ家キッチン※
※リコ視点※
「ねぇ、コーン、今ここでソレを頬張らなきゃダメなの?」
「当然だろ?今ヤらなくていつやるんだよ?」
「明日じゃダメ?」
「ダメだ、せっかくリコのために太くしたんだぜ?」
「言われてみれば、すごく太い、わたしのお口に入るかな…」
「とにかく咥えろよ」
このまま躊躇してもコーンのことだから無理矢理咥えるかもしれない
わたしは覚悟を決めて小さな口を大きく開け
(う〜間近に見ると凄く太くて大きい)
コーンから差し出されたソレを頬張ります
小さな手で黒い面を握り、力を込めて中身を絞りだそうと頑張ります
う〜、握ったらぶよぶよした感触がするよ
「あーリコ、ちゃんと飲み込まないと、口元から白いのが零れてるぞ」
コーンの指摘通り口元からポロポロと零れ落ちます
「もっと奥へ押し込め、ちゃんと噛まないと」
そう言われても、歯を立てたくても、あまりにも太すぎて顎に力が入らないよ、う〜
「二人とも何をやってるの!?」
悲鳴のような声がわたし達の行為を中断させました
「あ、お袋」
「ほぉ、ほぉはーはん?」
わたしは「お、おかーさん」と言ったつもりですが、コーンお手製のそれが太すぎて声が出ません
「何って、リコに食わせているんだよ、俺のお手製『恵方巻』を」
「恵方巻…まさか、今日買った材料を使って!?」
「そうだよ、ご飯炊いて適当に具材を乗せてのり巻いたんだよ」
「そもそも節分は明日でしょう!何勝手にフライングしてるの!?」
「女王様が気まぐれで時間を進めるかもしれないだろ?」
「時間以前に、リコちゃんにそんな太い恵方巻を無理矢理食わせるな、喉を詰まらせたらどうする?」
と、騒ぎに気づいたおとーさんが入ってきます
「まぁ、喉を詰まらせたら詰まらせたで自分がリコちゃんにチュウ…は無理だが小さな背中をぽんぽん叩けるがな」
「あなたは黙ってて!あー、もうキッチンをこんなに散らかして、まさか魔界鮭全部使ったの?夫のために生サーモン巻きを作ろうと思ってたのに!」
おかーさんはガミガミモードに突入
「海苔もこんなにも使ったの!?」
千切れた海苔の残骸を見てガミガミ度を増します
「巻こうとしたら千切れたり、具が飛び出たりとかして何度も失敗してさ」
「作り方がわからないならちゃんと聞きなさい!」
「俺はリコから聞いた話を思い出しながら作ったぞ。マッドハッターらしく頭をフル回転させてな」
わたしはおかーさんから教えてくれた恵方巻のことを、ついコーンに話してしまいました
「本当にこれでいいのかと立ち止まって確認する冷静さもマッドハッターに大事なことでしょ!コーンの頭に被ってるキノコは何のためにあるわけ!?」
「お袋の拳骨をガードするためにあるのが当然だろ?」
「拳骨されるようなことばかりするコーンが悪い!」
「おいおい、まだ節分じゃないのに鬼になるのはまだ早いぞ」
喧嘩モードに入った二人を宥めようとするおとーさんに、わたしも止めなくちゃと思い
「ごめんなさい…わたしの知らない間にコーンが恵方巻を一人で作ってて、わたしも手伝おうとしたけど、コーンがリコに食わせるから一人で作るって、ぐすっ」
「……いいのよ、リコちゃんが謝る必要はないの」
ぐずるわたしを見たおかーさんはいつもの優しい表情へ戻ります
「ごめんなさい、お母さんもつい鬼になっちゃったね。冷静に考えてみれば足りない材料はあるもので何とかすればいいわけだし、明日一緒に恵方巻を作ろうね」
「…うん」
わたしは涙を拭い微笑みます
「うんうん、鬼が来ても最後は福が来る、やっぱり我が家はこうじゃなきゃ」
おとーさんも笑顔でうなずきます
「それよりリコ、俺の恵方巻旨かったか?具材にタケリダケを入れようかと思ったけど、この前食いすぎて切らしてしまってさ、タケリダケさえあれば、すっかり出来上がったリコのお手製恵方巻を俺がカプッと咥えて――」
「コーンはもう少し反省しなさい!」
ポカッ! 「いて!」
「あ、鬼が戻ってきた」
「いつものことだけどね…」
※翌日※
「さて、改めて今日は節分だから、家族全員で恵方巻を作ろう」
一番上のお姉さんであるコックおねーさんが家族全員に言います
「お互いに食べさせるための恵方巻だ、好きな人に何を食べさせたいと思いながら作るといいぞ」
おとーさんはおかーさんを見ながら嬉しそうに語ります
「ボクには夫がいないから自分用の恵方巻を作るよ」
コルヌおねーさんは微笑むように言います
「よーし、今日もリコに太い恵方巻を――」
コーンは腕捲りをしながら張りきっていますが
「だがコーン、君は駄目」
コックおねーさんから参加を拒否され「何で!?
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