「これより我がパラサバトが主催する『寄りミサ』を開催する」
主催者が開催を告げると周囲が一斉に盛り上がる。
「おにいちゃん、何が始まるの?」
「大丈夫だ、おにいちゃんが守ってやる」
私は参加者の中にいる幼い兄妹に気づく。普段から妹を大事にしている立派なお兄ちゃんのようだ。
これがサバトの黒ミサなら魔女となった妹が大好きなお兄ちゃんを押し倒すという流れになるのだけど…
しかし、ここにいる魔物娘全員はバフォメットでも魔女でもファミリアでもない
「あら可愛い妹さんね。わたしの卵を入れてあげたいわ」
「丁度いい夫候補もいるみたいだし。魔物化したら即ハメが出来るね」
「帰りを待つ家族も魔物へと変わるだろうね」
ローパー達が自らの卵を寄生させようと兄妹に目星をつける
「そんなに怖がらなくても、もうすぐ素直になれるから」
「身体がとろとろになって気持ちいいよ」
「子供に寄生したら騎乗するスライムちゃんも子供サイズになるのかしら?」
すっかり魔物の体に馴染んだスライムキャリア達がそう呟き
「キセイ、トロトロ」
「@△×○」
「……」
宿主がいないピンク色のスライム――寄生スライム達が、じりじりと寄る
このように人間の女性に寄生させるかたちで仲間を増やすタイプの魔物娘達だからだ。
そんな彼女たちを見ているとお嬢様はまだ理性があるほうだと思う。
いや、さり気なく淫猥なことを言う点でどっちもどっちか。
「怖がらなくてもいいよ」
このミサの主催者である女性が兄妹の前に立つ
「ボクがこのミサの責任者、帽子屋と呼ばれている」
彼女は女性でありながら、燕尾服を着ており男装している。
しかし、燕尾服にはうっすらと菌糸が垂れ落ちており、これが彼女は人間ではないことを証明している。
マッドハッター
お嬢様曰く不思議の国に迷い込んだマタンゴが変異した種族、知性を感じさせる落ち着いた佇まいは本能のまま交わり胞子を飛ばすマタンゴとはまた違った魅力を感じさせる。
事実、興奮気味のローパーやスライムキャリア達に対して、他のマッドハッター達は普通にお茶を嗜んでいる。
「君達は家族とピクニックに出かけた際に森で迷子になっていたところを拾われたみたいだね。お腹を空かせていることだろう。妹と一緒にあそこのテーブルに座っているといい」
帽子屋は誰も座っていないテーブルを指す。
純白のテーブルクロスの上には色とりどりのお菓子や紅茶が並べられている。
「うん…」
「おいしそう…」
兄は妹をつれてテーブルのほうへとことこ歩く、童話に出てくるお菓子の家に誘われる兄妹のように。
「ナンゲ、ナンゲ、ぎゅー」
むにゅぅ、と背中から伝わる柔らかい感触
「お、お嬢様、いつの間に。てっきり他のマッドハッター達と会話をしているものかと」
「えへへーごく自然な形でおっぱいを押し付けてみましたー」
「ちゃっかり胸を押し付けるのをやめてください!」
「そっかーナンゲは胸よりもお尻が好きなタイプだったねーそれよりどうかなーこのパラサバト、気にいったー?」
「お嬢様が強引に連れてきたじゃありませんか」
「強引じゃないよーちゃんと両親にも許可をとったよーあとナンゲの家族にも」
「そういう問題じゃなくて、っていうか何故私の家族にも!?」
「それは勿論ナンゲのご両親にご挨拶を……そうそう、弟くんと妹ちゃん可愛かったねーお兄ちゃんと魔女のベストカップルで、これぞサバトがきっかけでラブラブになれたって感じでさー」
「だからどうして私の家族に許可をとる必要があるの!?」
「そういえば妹ちゃんナンゲのことを心配していたよー「おねえちゃんは屋敷の仕事頑張っていますか?」ってねー」
「妹の奴、まだ私のことをおねえちゃん扱いしているのか……母親代わりは母さんが蘇って以来卒業したのに」
「そっかーナンゲがあの兄妹のことを気にかけているのは弟くんと妹ちゃんを重ね合わせているのかなー?」
「話が脱線していませんか、お嬢様!?」
「初めてのプレゼントはあの兄妹にしようかなー?」
「一体あの兄妹に何をなさるおつもりですか、お嬢様」
「ナンゲ、会長の説明が始まるよー」
「また話が脱線していますよ!」
「僕が参加したパラサバトのことが知りたいって言っていたでしょー?」
「わざわざ参加してまで知りたいことじゃなかったですけどね」
「初めて参加する娘もいるみたいだし、この『寄りミサ』の簡単な説明をしよう。これはサバトで開かれる『黒ミサ』と似たものと認識してもらってもいい。女性の魔女化は寄生、お兄ちゃん選別は養分を得るための夫、新しい薬や魔術の披露は、栽培した紅茶と新作のお菓子を食べるお茶会、そして新たな命を育むため全員で交わり疲れ果て眠りに着く夫を嫁達が抱きかかえて終了の運びだ」
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