エネミス城→二角獣会会場

★エネミス帝国・路地裏★
★ダイヤ視点★


「すっきりしましたか? お嬢様」
「はぁはぁ、ふぅー……ええ、これですっきりしたわ」

大声で叫んだ私は息を整える。


「それにしても煌羅、よくあの子がアルプだってわかったわね」
「魔物娘特有の匂いや身体から放たれる魔力で察知しましたよ。彼女が少年でないことを」

「そうなの、流石キキーモラね」
「お嬢様、もしやまた男と見間違えたのですか?」

「マ、マサカ、ソンナコトナイヨー」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

「さあ、城へ戻るわよ」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

「二角獣会が待っているわ」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」


★エネミス城★


「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

煌羅が耳元で同じワードを囁くのを無視して、私はさっきのことを振り返る。

あのフードを被った男の子がまさかアルプだったなんて…
どうも私は男女の判別が苦手なようだ。
フェイ義姉さんと初めて会った時も、男装と凛々しい顔立ちからこの人が話で聞いていた私のお兄ちゃんだって勘違いしちゃったし。


かといってそれを煌羅に打ち明けても、こう言い返されるわ。


お嬢様は魔物娘としての訓練を怠っているからです

五感を使い精や魔力を感じ取れば、性別だけではなく未婚者・既婚者、素質次第ではアルプ化の兆候も察することも可能

現に人化の術だって、練習さえすれば習得可能です

なぜなら魔物娘は半分「人間」、アルラウネもデビルも人間に化けることができます

わざわざ人化用の道具やネレイス船長の魔術に頼らなくても、二本の足で歩くことができるのです


「――ですのでさっさと人化の術を習得して、人化した生足をペロペロさせてください」
「そうね、煌羅のために私の生足をペロペロさせてあげる…………ねぇ、煌羅。途中から私の耳元で囁く内容が別の物になっているのはどういうわけ?」

「お嬢様が先程のことを振り返っていたようでしたので、ご奉仕として囁く言葉を変えました」
「そんなご奉仕、飲み込みなさいよ!」

「嫌です。この言葉を飲み込んだら胃に到達しますよ。太ったらどうするのですか?」
「言葉を飲み込んだだけで太るか!」

「ひどい、さっきからお嬢様のために用意した料理(暴言)を口にするのを拒むなんて」
「そんな料理(暴言)、いちいち食い尽くせないゎよ!」



「大変です、魔界豚が砂漠にあるデザートを食い荒らしています!」



え?

「西にある巨大プリンが消滅、北にあるコーヒーのオアシスも枯渇しました」
「特に氷菓系の被害が大きいとのことです」

城では兵士達がデザートの被害で大騒ぎしているみたい…

「捕縛せよ、何なら討伐しても構わん!」

魔界豚……

「T-1隊長、それが対象は山よりも遥かに巨体が故に、捕縛どころか倒すことさえ困難です」
「そもそも何故魔界豚がここにいるのだ!」

山よりも遥かな巨体……

「おそらく本日開かれる二角獣会の参加者と共にやってきたと思われます」
「ええい、飼い主はどこにいる!」


「あの……その魔界豚の飼い主は、私です」
「何てことをしてくれたのだ! ようやく家族、いや国内の食糧問題が解決できたというのに!」

「申し訳ございません、トンスケは大食いなのです」

煌羅が私を庇うように、私と隊長の間に割って入る。

「普段は近くにある触手の森で触手を食べているのですが、ここは砂漠地帯ですので触手の代わりにデザート、特に氷菓子の被害が大きいのは雪代わりに食べているものかと思われます」
「そ、そうなの、夏になると煌羅と一緒に故郷の近くにあるウェンディゴの集落に行って、村長さんからトンスケが雪を食べる許可を頂くの。お中元として籠いっぱいの夫婦の果実を差し出してね」

これは毎年兄貴達がしてきたことを私と煌羅が代わりにやるようになっただけだが、今はそこまで説明する必要は無いと思う。

とにかく責任はとってもらうぞ、と隊長が怒鳴り散らす中、一人の兵士が隊長の下へやってきて

「T-1隊長、ピスコ様からの伝言です」
「やはり魔界豚の件でお怒りか……」
「いえ、『お菓子が無いなら交わればいいのジャ』とのことです」
「……………そうだな、交わりさえすれば飲まず食わずでもいいのか……討伐へ向かった部隊へ撤退命令を出せ」
「了解、現場で指揮をとっているE-603隊長に連絡します」


「これでトンスケが退治される心配はなさそうですね、お嬢様」
「そもそも山よりも遥かに大きい魔界豚を倒そうとするほうが無謀なのよ」


★二階渡り廊下★


「うふ、そろそろ入れてあげる」
「はぁはぁ、ずぶずぶ入ってる」

トンスケ騒動が一段落ついたので、一旦クロ魔女さん達と別れて行動することにし
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