エネミス帝国・城下町

★エネミス帝国・エネミス城通路★
★ダイヤ視点★


「そんなに、いるの?」

バイコーンとそのハーレムが集まる二角獣会

煌羅から聞いた参加者の数に、私は開いた口が未だに塞がらなかった。

「私と、バイコーン化する予定のユニコーンを含めて十九頭……十頭くらいかな〜と思ってた」
「正確には二十頭です」
「はい?」
「本来ならもう一頭出席する予定でしたが、昨日欠席の連絡が来たそうです」
「どうして欠席したの?」
「彼女は愛の女神の信者で、人間の魂がフーリーへ転生する日と本日の二角獣会が重なってしまい、前者を優先することにしたそうです」
「フーリー……不思議と納得したわ」


「フーリーって何アルか?」


おしりをフリフリする魔物アルか?と、火鼠の廿火ちゃんが私に尋ねてきた。
幸いにも私が得意げに語れる数少ない種族なので、私は廿火ちゃんに説明を始める。

「フーリーっていうのは愛の女神に仕える下級天使で、善行を働いた男性の下へ嫁ぐのよ。最大の特徴は複数のフーリーが同じ男性に嫁ぐことがあるの」
「フーリーのハーレム、バイコーンが好みそうな種族アル」
「そうよ、お父様のハーレムにも定期的に多くのフーリーが嫁いできているの。私が五歳の時に、一度に二十人のフーリー達がハーレム部屋の門を叩いた光景は今でも鮮明に覚えているわ」
「二十人!? 多いアル、びっくりアル」
「それでも最初に嫁いできた数の比じゃないらしいわ。それはもうハーレムの中で『愛の女神部隊』という大規模な部隊が編成されるくらいに」

「ねぇダイヤちゃん、お父さんの所に初めてフーリーが嫁いできたときにやったプレイって何?」

と、クロ魔女さんが興味津々に尋ねてくる。

「そ、それは……」

そこまで聞かれると思わなかった。
説明していいのかしら? 教会の子供達に話したらドン引きされた苦い思い出があるし、うーん……

「私が説明しましょう。パール様から聞いた話ですが――」
「ちょ、煌羅!?」

私を無視して、煌羅は語り続ける。

「フーリーの全身を観察した柴様は彼女達の膝が気になったようでして」
「もしかして足を使ってのホールドプレイ?」
「いえ、嫁一人一人の膝の匂いを嗅ぎながらのプレイだったそうです」

クロ魔女さんはきょとんとする。

「何で膝の匂いを嗅いだの?」
「元々はブーツで覆われた膝が気になった柴様のためにフーリー達が次々とブーツを脱ぎ捨ててしまい、柴様はブーツの持ち主を特定するために膝の匂いを確かめました」

それを聞いた栗恵さんは何やそれ?と苦笑い。

「それが習慣になったらしく、今でも新しいフーリーが嫁に来る度、ファーストキスよりも、処女を捧げるよりも、まずは膝の匂いを嗅ぎながら、膝で射精するそうです」

「ファーストスメルかしら?」
「膝の処女を奪うんやろか?」

クロ魔女さんと栗恵さんが複雑そうな顔で話し合う

「まぁ、バイコーンは夫が淫らに嫁と交わることが何よりの望みだから」
「膝の匂いを嗅ぐのもまた愛の形なんやな」

でもすんなりと受けいれてくれた。二人ともバイコーンで安心したわ。
だけどそれ以外の魔物、特に魔物化及びインキュバス化していない人間は違う。

「変わった父親だね」

と、人間であるコーハが何気なく呟いたので

「よく言われるわ」

と、私は慣れた段取りで返した。


★城門前★


「その石像も一緒に持っていくアルか?」
「そやで、いつガーゴイルになるかわからへんからな」
「ホントに動くアルか?」

「廿火ちゃん、物質は無機であるからこそ魔力が宿りやすいのさ。特に魔力を受ける器として設計された人型なら尚更」

うちのゴーレムがその例だよ、と英斗さん。

「中には付喪神という道具が長い時を経て魂が宿った魔物娘もおってな、付喪神はまだウチのハーレムにはおらんけど、いつかはハーレムに加えるつもりや、だからいつ英斗を襲ってもええように石像を肌身離さず持ち歩くんや」


「ふっ、僕も忘れてもらっちゃ困るよ」


と、石像と共に牽引されているコーハが髪を掻き分けるように言う。

「この人も大事な人アルか?」
「こいつはあくまでついでや、置きっぱなしにして他の魔物娘にお持ち帰りされないように連れて行くだけや」


「こんなにも大切にされているなんて、僕はなんて幸せ者だ」


どこまでポジティブなのかしらこの男は。


「実にユニークな」

そんな私達の前で案内役のネコさんが現れては消え

「バイコーンたちだね」

消えては現れるのを繰り返す。

「消失と出現を繰り返すなんて、ワーキャットにしては高度な魔術を使うわね」
「転送魔術なん? それとも透明魔術なん? どっちにしてもワーキャットにしては頑張ったほうやで」


「ノンノン、チェシャ猫だよぉ♪」



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