※不思議の国・トリックストリート※
※シャンプ視点※
「「ぎゃあああああ、おばけだぁぁぁぁぁ!」」
突如現れた傘のお化けに、コーンとリンスの悲鳴が常闇の空へと反響したわ。
「逃げろぉ!」ダッ!
リンスは踵を返して、その場から離れようとするけど
「ストップ」
スリスリスリスリスリ〜
「うぁぁぁぁぁぁ〜ぁへえ〜」ビュクッ、ビュルッ、ビュルル!
あたしの優雅な足コキでリンスは絶頂しながら停止したわ。
対してコーンは
「おい、逃げるぞ、リコ!」
リコちゃんの手を引っ張るが、当の本人は一歩も動こうとしない。
「リコ!? リコ?」
「パラカさん?」
リコちゃんがその名を呼んだ相手。
「うふ、久しぶりね。リコちゃん」
パラソルが開き、中から女性が現れ
「あれ?魔物娘?」
コーンは目をぱちくりさせる。
あたしは最初から判っていたけどね。
彼女の容姿は競技場で見かけるコンパニオン。
ただ、頭に被るパラソルには巨大な一つ目が生き物のように動き、パラソルの内側から伸びる長い舌が彼女は人間ではないことを示していた。
「コーン、あれは唐傘おばけのパラカさんだよ」
「知っているのか?リコ」
「うん、レース用のパラソルから産まれた唐傘おばけで、よく競技場で見かけるでしょ?」
「オレはいつも準備運動で忙しいし、第一選手以外眼中にない」
「うふ、君はそうやっていつも勝つことに専念しているよね」
「オレを知っているのか!?」
「いつも参加者や観客を視ているのよ。ちゃんとアタシを視ているかどうかをチェックするためにね」
「どういうことだ?」
「パラカさんはみんなから注目されることが大きな悦びで、チラ見だけでも最大限の反応を返すことで魅了しようと心がけているんだって」
「リコ、やけに詳しいじゃねーか?」
「競技場で何度も見かけていたし、コルヌおねーさんが教えてくれたの」
「ホントはセクシーなボディに見惚れてたんじゃねーの?」
「ち、違うよ」
「リコも大人になったら胸がボイーン、お尻がプルンとした女性になりたいって言ってたしな。顔真っ赤にしながら凝視しても不思議じゃねーな」
「もう、今はそんなこと思ってないよ。だってコーンへの想いに気づいちゃったんだから」
「だよな、オレは今のリコが好きだぞ」
「う〜恥ずかしいよ」
リコちゃんは頬を赤くしている。
コーンが言うように彼女の肢体は魅力的だ。
白と赤を基調としたハイレグ、歩く度にハイヒールの音がリズムよく聴こえ、それに合わせるかのようにチラリと見えるソケイ部。ハイレグ自体もところどころ濡れており、臍の窪みと胸の形がくっきりと浮かび、胸の先端に微かな突起が浮かんでいる。
彼女を性的に見る者なら誰もが見惚れ、彼女を美的に見る者なら誰もが羨むだろう。
「魔物娘だったのか。本物のお化けかと思ったぞ」
リンスのように魔物娘を妻に持つ夫は別として。
「あとパラカさんは出張で他所のイベントに出ることもあるよ」
「うふ、ここにも頻繁に訪れるわね。おばけ役として」
「だよな、傘の目がぐりぐり動いて不気味だし、長い舌が伸びているのも気持ち悪いし、傘だけ閉じて、ぴょんぴょん跳ねればおばけそのものだ」
リコちゃんとパラカの会話に首を突っ込むリンスに、あたしは幾らなんでも失礼よと注意する。
「いいわよ。だって唐傘“おばけ”ですもの。子供たちからも大人気よ」
当の本人は気にしておらず
「あーっ、おばけのお姉ちゃんだ」
「やっほー傘のおばけさん」
それどころかおばけ呼ばわりする子供たちにも笑顔で手を振っている。
「意外と大人気なんだな、さっきは逃げようとしてすまなかった」
「うふ、驚いて逃げ出すのも悪くないのよ。反応が無いほうがへこむくらいよ」
「ところでパラカさん、今日は何のイベントで来たのですか」
「うふ、ロザリーちゃんとお兄さんの送別会よ」
「そうなのですか、実はわたし達も吸血鬼の城へ行くところなんです」
こうしてパラカもあたし達と共に同行することとなった。
どうやら彼女も城から一歩も出なかったロザリーちゃんのことを気にかけており、今回ジュリーさんからパーティーの話を聞いて、居ても経ってもいられずこの街にきたことを話してくれた。
「うふ、ついでにカミラも誘ってみたけど」
「彼女も来るのですか!?」
「それがカミラは今、変わった組み合わせのリリラウネ達に見惚れていてね。秘書の娘が欠席の返事をしたわ」
「良かった……」
あたしは安心する。
あの吸血鬼が来たらロザリーちゃんの兄(以下シスコン)と低レベルの争いを繰り広げるのは火を見るより明らかだから。
「ほっ、良かった」
「何でリコちゃんがホッとしてるんだ?」
リンスの疑問にリコちゃんは
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