ばいくのわっくす掛けとばいくとの結合

ΜΜΜ


Μ初太視点Μ


「故郷ですか?」
「そうだ、俺が住んでた家だ」
「ここが、初太が生まれ育った家……」
「いや、正確には両親が事故で亡くなってから住み始めた家だ」
「ご、ごめんなさい。つい余計なこと言って」
「いいよ、それよりちょっと寒いから入ろう。もしかしたらせんせーがいるかもしれない」

俺は冬の寒さを体感しながらマドラと一緒に家の敷地に入る。

この季節になると学校帰りがしんどくて、家を見るとホッとしたんだっけ。

せんせーがドアの鍵を開けてくれて、ドアノブを引けば玄関が――



ΜΜΜ



安心は、唖然へと変わる。



「なぜだ……入口には靴棚と植木鉢が置いてあるはず……こんな豪華な装飾じゃないぞ」



「わたしの家です」



「え?」
「ここはわたしが生まれ育ったの家の玄関です」

今度はマドラが饒舌に語り始める。

「絨毯の感触、ガラスから射す光、広間の湿度、何もかもが同じ」

まるで自分の家を説明するかのように。

「どうして戻ってきちゃったの?」



「二度とこの家には戻らないと決めていたのに……」



Μ不思議の国・ばいく屋Μ
Μ満知子視点Μ


「ドッペルゲンガー?」

アタシは先程まで白髪のアリスだった黒づくめの少女に言う。

「満知子、これがドッペルゲンガーだよ」

へーくんが図鑑アプリの『ドッペルゲンガー』の項目を見せる。

挿絵には黒づくめの少女とは似ても似つかない抜群のスタイルを持つお姫様が描かれていたが、よく見るとその後ろに黒づくめの少女が隠れるように潜んでいた。

「ドッペルゲンガーは別の女性の姿に化ける魔物だそうだ。彼女はその能力で女王様の姿に変化してたんだな」

「その通りですの。ツトムはハートの女王を愛してますの」

黒づくめの少女はくるりと回り、白髪のアリスへと姿を変える。

「更にツトムが理想とする慈悲深い性格が反映されてますの」
「そうですニャ、ゆえにキジコ様は城下町の住人から『優しい女王様』と呼ばれてますニャ」
「補足してくれて感謝しますの」
「女王様の顔で褒められるとちょっと寒気がしますニャ」
「チェルは相変わらず女王様からちょっかいを出されて大変そうですの」
「ニャー確かに女王様の我儘にはほとほと困ってますが、カミラ様、マーゾ様、シンデレラ様、それに轟店長に濃き使われるよりは…訂正ですニャ!轟店長は関係ありませんニャ!」
「大丈夫ですの、轟さんはドリフトさんと共に出張中ですの」
「そうニャのですか?」
「ばいく工場でトラブルが発生して、原因究明のため工場地帯へと向かったようですの。そこで事情を知ったわたしが店の手伝いに来ましたの」
「助かりましたニャ、もし轟店長の耳に入ったら、またばいくのわっくす掛けをさせられるところでしたニャ」

チェルがホッとしていると、バリスさんが思い出したかのように

「そうだった、彼女達の手入れをしなくちゃ」

棚にあるわっくすを数個取り出し、更に引き出しから化粧用のパフを取り出す。

「傷の修復もするのですニャ?」
「そうなのよ、不意にマッドハッターの若夫婦が現れてドーマウスばいくを踏みつけちゃってさ」

「それですよ、バリスさん!」

「ど、どうしたの急に大声を出して?」
「アタシ達はですね、行方不明の友達を探していてですね、ばいくに詳しいライド夫妻からドーマウスばいくの話を聞いて、討伐隊がばいくに目覚めちゃって、それからこの店を訪れた討伐隊を片っ端から紅茶を飲ませて、ドーマウスばいく全部討伐隊で――」

アタシはライドさんが教えてくれたことをバリスさんに伝えようとするが

「落ち着け満知子」

へーくんがアタシのウサ耳をピョイーンと引っ張った。

「ひゃう!?」
「何言ってるのかさっぱりだろ」
「だからと言って頭の耳を引っ張らないでよ、敏感なのよ」
「敏感だから、だろ♪」

へーくんはドヤ顔で語る。
こんな状況じゃなきゃ「何ドヤ顔で敏感な所を触ってるのよ、他にも触るところがあるでしょ!」と言いたい。

「ボクが説明するよ」

コルヌさんがアタシの代わりにバリスさんに事情を伝えた。

「――以上がボク達がここへ来た経緯です」
「成る程、道理で突然現れた訳ね」
「二人の行方は?」
「ううん、数秒もしないうちに消えたから判らないわ」

「そんな……ここも手がかりなしなの」

アタシは落胆する


「友達を探しているのですの?」


と、女王様……の姿をしたドッペルゲンガーがアタシに声をかけてきた。

「もしかしたら力になれるかもしれませんの」
「ちから……?」
「友達の手がかりを探れますの」
「ほ、本当ですか!?女王様」

「そうか、キジコさんの能力なら……」
「コルヌさんも心当たりがあるんだ。教えてください、女王様、ま
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