「はぅ、あああぁぁぁぁッ!」
蓮九朗に跨り、騎乗位で氷牙は果てた。
激しい交わりを示すように身体には玉のような汗が浮かび、絶頂によって痙攣する身体を月明かりが青白く染め上げる。
「はぁー…はぁー…あ」
氷牙は蓮九朗の胸に手を置き、肩で息をしていたが、力が抜けガクンと蓮九朗に倒れ込んだ。慌てて、蓮九朗はその白い肩を抱く。
「お、おい、氷牙!」
「はぁー…も、申し訳ありません、主殿…少々、疲れてしまいまして」
無理も無い。
すでに何度互いに絶頂を迎えたか覚えていないほどに蓮九朗と氷牙は交わっているのだから。恐らく二桁いっているであろう。
蓮九朗は氷牙の腰を抱き、優しく頭を撫でてやる。すっかり汗で濡れている髪はまるで触手のように蓮九朗の手に絡まり、するするとほどけていく。重なり合った身体から伝わる心臓の音と肉の温もり。氷牙も蓮九朗の胸に置いていた手を甘えるように蓮九朗の首に回し、顔を近付けた。
トロンと熱のこもった視線、薄く開かれた唇から洩れる荒く深い呼吸音、普段の凛とした氷牙からは考えられないほど色っぽい様子に蓮九朗の胸は高まる。
「んむ…」
「ちゅ、ん…あるじ殿ぉ、や、んちゅ…」
お互いの口を唇で塞ぎ、その中で舌と唾液が激しく混じり合う。
氷牙は基本的にこうやって抱き合いながら口付けをする交わりが好きだ。交わり以外にも蓮九朗と二人きりになれば口付けをねだるほどだ。町中など人目に付く場でさすがにねだるような事はしない。しかし、口にはせずとも“その気”は伝わってくる。
氷牙は蓮九朗の舌をまるで男性器に尽くすように吸い、しゃぶる。
蓮九朗も好きだが、どこかまだ物足りない。
それもそうであろう。蓮九朗のモノはまだ硬さも熱も失っていないからだ。
ここ最近、蓮九朗は性欲の増大に悩まされていた。魔物娘と交われば魔力が体内に流れ、次第に人間ではなく魔の者へと変わっていく。海を越えた大陸では“インキュバス”と呼ばれるようになった者達は魔物娘の夫に相応しく、淫らで人間も顔負けの性欲を抱くようになるという。
すでに蓮九朗も“インキュバス”となった身だ。氷牙もそれは歓迎する事だ。
しかし、問題はその性欲は既に氷牙1人で抱えられるものでは無くなっているという事だ。
「む、ぐ…も、申し訳ありません、あるじ殿…」
「良い…謝らないでくれ」
氷牙も責任を感じているのか何度も何度も蓮九朗と交わっているが、それでもやはり体力は持たない。愛した男を満足させられない。最近の氷牙はその事を悩み、自分を責めるようになっていた。
「氷牙は…私はクノイチ、いえ…妻失格でございます。愛する夫一人も満足させられぬのでは……」
「そんな事はない!お前は悪くない、全て俺の…俺の責任だ」
「いえ、あるじ殿が高ぶるのは私を愛してくれている証…私はそれに応える事が出来ないなんて……」
寝室に氷牙の鼻をすする音が空しく響く。やりきれなくなった蓮九朗は無言で氷牙の頭を撫でてやった。
確かに死活問題かもしれない。
このままでは氷牙は精神的に追い込まれてしまう。氷牙の事だ、蓮九朗が満足するまでその身体を差し出すだろうが持たない。恐らく無いだろうが、最悪の場合、氷牙が“壊れて”しまう事も考えられる。そんな事は万に一つも無いと思うが。
どうしたものか……
沈黙が夜闇を奏でる。その沈黙の中で気まずい、何とも居心地の悪い空気が充満する。蓮九朗は何か話そうと思ったが、思いとどまれた。
「…!主殿!」
蓮九朗の上で泣いていた氷牙がふと顔を上げた。
「ど、どうした?」
「名案を思いつきました。私1人で主殿を満足させられないなら……」
「?」
氷牙はニンマリと笑うと、蕩けた笑みから眉をキッと締め、胸の前で手を合わせた。
「影に命ず。汝の闇は全てを欺き、真を隠す」
ボソボソと呟きながら指で印を結ぶ。蓮九朗はそれを知っていた。
クノイチと特技の1つ、忍法だ。
忍法はクノイチの扱う術であり、数々の流派があるという。それぞれのクノイチの里ごとに伝わる忍法はあり、その効果・詠唱は変わる。同じクノイチという魔物娘でも全然違う忍法を使うのはそのためだ。
「影の闇法、弐ノ形…分身の術ッ!」
印を結び終わった氷牙の目が青く輝く。それと同時に氷牙の輪郭がぼやけ、まるで蜃気楼のように揺らめく。
蓮九朗は困惑し、そして瞬きをした瞬間、固まった。
自分に跨り、嬉しそうに微笑む氷牙、それはまだいい。しかし、問題は同じ顔をした2人の氷牙が左右で四つん這いになり蓮九朗の顔や胸、肩を撫でていたのだ。
「我ら3人で…主殿を満足させてみせましょう♪」
「んふふ…覚悟しなさい、蓮九朗♪」
「いっぱい
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