番外編 第4話「百万の恵まれたるもの」

9月■日

「すみませ〜〜〜〜〜ん。」

 今日は、朝からサバトに尋ねて来る人がいた。

「どちら様ですか?」

 と、入り口近くにいた魔女が出ると・・・。

「ハーピー便です。レスカティエからお届け物ですよ〜。」

 どうやら、レスカティエの魔女に頼んでいた、シュリフトが残したメモやら、資料の断片やらが到着したようだ。
 資料の断片は、大半が『妖蛆の秘密』をこの世界の言語に直したもののようだ。

が、結論から言うと・・・、内容がまったく分からない。
 おかしい、言語は私達が使っているのとまったく同じはずなのに・・・。



・・・



 その日の夜、領主のカルメシアは件の行部狸から受け取った報告書を見ていた。
 明かりの灯っていない部屋は薄暗く、月明かりだけが窓から入り込んでいるが、ヴァンパイアである彼女の眼には報告書の内容がはっきりと見えた。

「結局のところ、教会も“アレ”の正体を把握していなかったということか・・・。」



9月▲日

 夜の食堂には、私とバフォ様の2人しかいなかった。
 別に、サバトに私とバフォ様の2人しかいなかった訳ではない。単純に、2人が夕食を取る時間が遅くなっただけだ。
 私は、昨日レスカティエから届いた資料の確認に追われ、バフォ様はリリルルシアが持っていた本と、今だに睨めっこ(内容が理解できず、本を睨んでいただけだと他の魔女が言ってた)をしていたらしい。

「そういえば、2件目の被害者。今だ、身元不明のようじゃの。」
「ええ。」
「てっきり2件目も、同じこの街の被害者かと思っておったのじゃが、どうやら違ったらしいの〜。他の街の人たちも、被害者は全員この街の者と思っておったようじゃ。」

 まあ、教会のスパイだし。この親魔物領で、教会内のどこの誰かなんて知りようがないと思うが。
 あれ?っということは・・・。

 私は、食堂を出ると、この街の領主の元へ向かおうとした。どうしても、確かめたい事があったのだ。まあ、カルメシア様はヴァンパイアなのだし、夜の方がかえっていいだろう。夜間外出禁止令は・・・、気にしないでおこう。

 が、その必要はなくなった。領主本人がこのサバトに来たから。

「ちょっと、貴女に話しておきたい事があってね。」

 そう言って、護衛を2人連れたカルメシア様がサバトに訪れたのだ。
ちなみに、2人の護衛とは、デュラハンとリザードマンの2人。この2人の事は良く覚えている、なにしろ4件目の事件のときリリルルシアを連れて来たのが、この2人だったからだ。
あれ、そうなると2人は警備の仕事はどうしたのだろうか?
 まあ、そこは私の気にする事ではないか。

私とカルメシア様は、1階の広間で話はじめた。広間には、私とカルメシア様の他には誰もいない。警護の2人も、いつのまにかいなくなっていた。

「あの少女が持っていた本、もともとはレスカティエにあったもののようね。」
「そうらしいですね。」

 ビブロフさんにでも聞いたのだろうか?

「私も、独自に調べさせたのよ。」

 この人は心でも読めるのだろうか・・・。

「知り合いに、教会の内情に詳しい行商人がいてね、彼女に調べ物を以来したのよ。そしたら、彼女はジパングのクノイチと呼ばれている諜報専門の魔物を雇って、教会の中間層辺りの一人から情報を聞き出したそうよ。」
「はあ。」
「レスカティエが魔界に堕ちたあと、警備の緩くなった所を盗みだされたようね。」
「まあ、警備は今も緩いと思いますけど。」
「盗み出されたあと、どういう経緯を辿ったかは知らないけれど。レスカティエで盗まれてから、だいぶ時間が経ってから教会の手に渡ったようね。」

 私のツッコミは、華麗にスルーされたようだ。

「教会側も、魔王を倒した勇者が持ち帰った物を元にして作られたとだけあって、その本を解析しようとしたらしいわ。」

 この様子だと、勇者が魔王の城に入ったとき、城は無人だった事は彼女も教団も知らないようだ。

「貴女何か隠してない?」
「いえ、別になにも・・・。」

 やっぱり、他人の心が読めるのでは・・・。

「まあ、いいわ・・・。話を続けましょう。」
「・・・。」
「レスカティエから教団の手に渡ったその本だけど、教団は一人の少女にその本の解析をさせたみたいね。」
「・・・え?」
「その少女は、幼くして天才の名を欲しいままにしていた秀才で、教会の秘蔵っ子だったらしいわ。」
「その少女って・・・。」
「名前をリリルルシアと言うそうよ。」

 リリルルシアが天才少女?
 今の彼女の姿からは、とても想像できない事実だった。

「少女が本の解析をはじめてからしばらくして、教会領内でおかしな事が起き始めたようなの。」
「え?」
「領内で不審死事件が多発、おまけに巨大な影を見たとい
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