注意:この話には、クトゥルフ神話的要素が多く含まれております。それらの話が苦手な方は御戻り下さい。
なお、この話は番外編に相当するものであり、いつもどおり魔女視点の話ではありますが、バフォ様はあまり登場しませんので、あしからず。
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私は今、バフォ様のサバトを離れて保養の地に来ている。
ここは、騒がしい王魔界・・・、すなわち魔王様のいる魔界とは真逆の静かなところだ。
日の光を通さぬ、厚い雲のおかげで辺りはどんよりと静かで、そばの湖は波も立てぬほど穏やか。近くの、葉もつけないゆがんだ木々の森は、いつもどおり風音すらたてず重々しく影を落としている。
私が人間だったころには、この風景を美しいとすら思わなかっただろう。
そんな感傷に浸りながら、今は使われなくなったサバトの臨時集会場跡でもあるログハウスのデッキで、安楽椅子にもたれながら私はここに来るハメになった事件の事を思い返していた。
ここに来た当初は、早く忘れよう。決して、思い出さぬようと、決めていたのに、どういう心境の変化か。
あるいは、ここでの療養が効いて、心身(主に心の方だが)の傷が癒えてきたためであろうか。あの事件の事を思い返すだけの、心の余裕がうまれてきたのかもしれない。
でも、私がバフォ様の元へ帰るのは、もう少し先の事になりそうだ。サバトの場所は、いまだあの事件が起きた街から動いてはいない。
もう、何も起こらないであろう街でも、私には帰るための勇気が起きなかった。
だからだろうか、近頃あの街の事がよく頭によぎる。
そして、事件の“最後の被害者と記録された”“彼女”の事を・・・。
私が思うに、この世でもっとも慈悲深い事は、人間が脳裏にあるすべてを関連づけられずにいることだろう。
H・P・ラヴクラフト
8月○日
夏の暑い日差しの中、私たち魔女とバフォ様のサバト御一行は、このアルムカールの街にてせっせと引っ越しの後始末をしていた。
そもそも、この街へやってきたのは、いつものパターンでうちのバフォ様がいろいろとハッスルなさった結果、前のサバトのアジトが崩壊したからに他ならない。
外にテントを張り。サバイバル技術を駆使しながら、山菜鍋で食いつないでいた(ときどきサハギンが無言で取れたての魚を置いていってくれた)。
そんなとき、バフォ様が知り合いのツテでこの街にサバトを置く許可がでたと、鼻息を荒くしながらドヤ顔で言ってきたのだ。
なんでも、その親魔物領の街の領主である、カルメシアという名のヴァンパイアが、うちのバフォ様の親戚の仲人をつとめた人の同級生の知り合いの近所の人のお兄様のお見合い相手を紹介したおばさんの仕事仲間の妹の上司の兄が、ヴァンパイアの婿らしい。
(いろんな意味で)悪名高いわれらのバフォ様のサバトを置く許可を出すなんて、なんと器の大きい御方なのだろうか。
などと、思っていたのは初めの頃。
実際のところは、その街というのが教国に隣接する、親魔物領の端の街なのだ。
ようするに、バフォ様のサバトを置くことで、隣国への無言の防衛をしようという事らしい。まあ、あのバフォ様のお母様が、料理で騎士団を壊滅せしめた伝説の御方ですから・・・。
まあ、なにはともあれ、住処が在るというはアリガタイこと。ここは、街を追い出されないように、バフォ様にクギをさしておかないと。
「本屋へお使いですか?」
私が外の井戸から水を汲み、花瓶に入れて廊下にでも飾ろうかとしていたとき(花はまだ無い)バフォ様が声をかけてきたのだ。
ちょうど、新しいサバトの本拠地(ここに来たときは、まさに廃墟と呼ぶに相応しい外観だった)の大掃除が終わり、さて次は内装をどうしようかと思案してところだった。
「うむ。やはり、サバトと言えば魔法結社。魔導書の類とかの本がなければ、やはり示しがつかんじゃろう?」
「それらの本を、大量の灰に変えたのはどこの誰でしたっけ・・・。」
「う・・・。」
そう私がジト目で見つめていると、慌ててこう言い返してくる。
「ま、あま、せっかく新天地へと来たのじゃ。ここは気分を一新するつもりで、書物の類も一新・・・。」
と、なんとも言いわけじみた事を返してきた。
「しかし、本をそろえるような資金なんてあるんですか?」
「そのへんは心配いらん、この街の領主が引っ越し祝いとして、ドーンと資金を出してくれたのじゃ。」
ずいぶんと太っ腹な領主な事だ。いや、それだけに、隣国の脅威が大きく、私たちに期待しているという事なのだろうか?
私たちには、ちょっと荷が重いかも。
そういえば、街の領主に会ったときに、なぜ私たちのサバトなのかと尋ねた
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