第7話 呪いの解ける刻、破滅が訪れる

 私達は、グルーフガスト山脈の中腹にある村の宿屋に集まっていた。その宿屋で、今後の事を話あっていたとき、エスタラニィが声を上げたのだ。

「剣を完成させただけじゃ、呪いは解けないってどういうこと?」

 エスタラニィは、そういってエレリーナに言い寄った。

「その剣はまだ完全に完成した訳じゃないのよ。」
「どういう事よ?」
「それを説明するには、まずはルシィラさんの一族にかけられた呪いの正体を明かさなければなりません。」
「呪いの正体?」

 この呪いは、私のご先祖様がかけた、魔剣を見つけろという“死に際の呪い”じゃなかったのか?

「この呪いは、そもそもルシィラさんのご先祖がかけた呪いじゃありません。」
「え?それって?」
「考えてみて下さい。なぜ、剣モドキに付けられていた仮の鍔と柄が、本物と同じ形なのかを・・・。」
「それは、この仮の鍔と柄を作った者が、本物を見たことがあるからでしょう?」
「ええ。ですが、その剣モドキを初めて見つけたのはルシィラさんのご先祖様です。そして、それ以来その剣モドキはずっとルシィラさんの一族に伝わり、他の者の手に渡った事はありません。」
「それって、つまり・・・。」

 考えてみれば単純な事だ。剣モドキに付けられていた仮の鍔と柄の形状と、クレージュさんに預けられていた本物の鍔と柄の形状がまったく同じということは、剣モドキに付けられていた仮のモノを作った者は本物を見たことがあると言う事。そして、剣モドキを初めに見つけたのがご先祖様で、それよりずっと私の一族に伝わってきた事を考えると、クレージュさんに本物の鍔と柄を渡したのはご先祖様という事になる。

「ええ。あのドラゴンに、本物の鍔と柄を渡したのはルシィラさんのご先祖です。」
「それと、一族にかけられた呪いと、どういう関係が?」
「考えてみて下さい・・・、子孫達に“死に際の呪い”をかけるほど魔剣の探索にこだわった一族が、はたして取り戻せるか分からないドラゴンに魔剣の一部を渡すでしょうか?」
「あ・・・」

 言われてみればそうだ。私達は、あのドラゴンから魔剣の一部を手に入れたが、むしろそれは彼女の気まぐれで譲ってもらったに等しいもの。実際、魔剣の一部を貰ったとき彼女にはまだまだ戦えるだけの余裕があったし、あれが彼女の全力とはとても思えなかった。そんなドラゴンから、預けた物を取り戻すことを前提にして魔剣の一部を渡すなんて、普通は考えない。

「じゃあ、この呪いはいったい誰が?」
「この呪いは、剣モドキを通して魔剣の魂がルシィラさんの一族・・・、すなわちこの世界に流れ着いた魔剣の一部を初めに見つけた一族にかけた呪いなのです。」
「魔剣の魂?」
「その剣には、もともと魂・・・、もとい精神があって、その精神を剣に召喚しなければ、呪いは解けないわ。」
「・・・」

 エレリーナさんは、話を続けた。

「こことは別の世界、長い月日の中で使用されていた剣が神格・・・、すなわち神としての力を持ち、自らの意思を持ちました。それが、ルシィラさんの先祖が探していた魔剣なのです。」
「ふむ、ジパングに伝わるツクモ神みたいなもんじゃの。」
「ツクモ神?」
「うむ、長い間使われ続けた道具が、命を持ったモノじゃ。」
「ええ。その後、その魔剣は自らの持つ力で破壊の限りを尽くし、死んだ人の魂を食う事でその力を回復させ、数多くの世界を滅ぼしてきたの。そして、こことは別の世界で、そういった剣が集まり自らを振るう者を見つけ、善と悪の勢力に分かれて戦うという出来事が起こった。やがて、戦いの中で悪の勢力についた1本の魔剣が、善の勢力についた魔剣によって敗れた。その敗れた魔剣は魂と肉体とを分離され、さらに魂は次元の狭間に追放され、その肉体は4つに分かたれた。その敗れた魔剣が、この剣なのよ。」
「・・・」
「やがて、4つに分かれた肉体・・・、すなわち剣そのものはこの世界に流れ着いた。でも、剣の魂はいまだ次元の狭間に幽閉されているの。その剣の魂が彷徨っている次元の狭間と、この世界との境界線が薄くなり、魔剣の魂がこの世界に召喚できる期間になると、呪いの印が現れるのよ。それは、剣の魂が召喚できるタイミングが、その世界との境界線が薄くなる短い期間に限られているため、それを教える合図が呪いの印なのよ。」
「そして、そのチャンスを逃した者は見せしめに悲惨な死をとげる・・・。」
「そう、それこそが分かれた剣を通して、剣の魂がルシィラの一族にかけた呪いの意味なのよ。呪いの印が現れるタイミングがバラバラなのも、次元の境界線が薄くなるのが不定期で、それに合わせていたからなのよ。」
「つまり、4つ部位を全て集めて剣を完成させ、さらに次元の狭間に幽閉されている剣の魂を召喚し、魔剣を復活させないと呪いが解けないってこと?
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