変人少年とサンダーバードちゃん

 
 
 
 
 
 
土曜日の午後は釣りをする、と心に決めている俺である。
別に魚が釣りたい訳ではない。ただ、こう、解るだろう?水辺に座って、釣り糸を垂れつつ、ぼーっ、と……もとい精神統一をする。
ああ、正に至福!お昼ご飯であるコンビニの百円おにぎりも格別の味だね!
 
 
 
 
「……しかし今日は何も釣れないなぁ」
 
 
 
 
当りすらない。
 
 
 
 
「まぁ、こんな日もあるか……」
 
 
 
 
そう思って、ごろり、と仰向けに寝転がると―――――何か女の子に覗きこまれていたんですの。
 
 
 
 
「あらまぁ、吃驚」
 
 
「それって本当に驚いているのかい?」
 
 
「いやまぁ、そんなには驚いていないかな」
 
 
「変な男だねぇ……」
 
 
 
 
俺は身を起こすと、訝しげな表情を浮かべた女の子を改めて良く見てみた。
翼が付いた腕、猛禽を思わせる足、小柄な体躯――――――これはあれか。この頃流行りの魔物娘か。
 
 
 
 
「キューティーハーピーってどうだろう?」
 
 
「一体何の流れ……いやいや、それはおかしいね!」
 
 
「はい、論破論破」
 
 
「こっちがする側なの!」
 
 
 
 
茶々を入れた正論を吐かれたので口を閉じて魔物娘ちゃんの論破を待つ。
やがて魔物娘ちゃんはその慎ましやかな胸を張り、大きな声で自己紹介を始めた。
 
 
 
 
「私の名前はアルト!ハーピー種はハーピー種でも、その刺激は比べ物にならないサンダーバードって魔物さ!」
 
 
「ご丁寧にどうも。俺は長谷部拓光といいます」
 
 
「ああ、よろしく」
 
 
「で、君は一号?二号?」
 
 
「そのサンダーバードじゃねぇよ!?」
 
 
 
 
そりゃぁそうであろうなぁ。
 
 
 
 
「それでそのサンダーバードが何の用?残念ながら魚は釣れてないよ?」
 
 
「野鳥の集りじゃないよ!? お前も解っているだろう?魔物娘が男の前に姿を現す理由なんぞさぁ……!」
 
 
「あー……まさか俺の童貞がピンチ?」
 
 
「お、童貞か……こりゃぁ、ますます逃す訳には行かなくなったなぁ……」
 
 
「がむてむ!」
 
 
 
 
余計な事を言ったっぽい。
だがまぁ、よくよく考えて見れば、こんな可愛い女の子に筆おろしをして貰えるのならば願ったりかなったりの様な気もする。
 
 
 
「いや駄目だ!俺は亭主関白でいたいんだっ!」
 
 
「安心しな、そんな決意は快楽で押し流してやるよっ!」
 
 
 
 
宣言と同時にアルトは空高く飛翔。旋回した後にこちらへと飛び込んでくる!
俺は咄嗟に釣竿を掴み、すれ違いざまにアルトの背中に一撃を叩きこんだ。
 
 
 
 
「なっ!?」
 
 
 
 
アルトはそのまま川の中へとダイブした。起き上がった頃にはほら、憤怒の表情を浮かべておりますよ!
 
 
 
 
「随分舐めくさった真似をしてくれるじゃないか……!」
 
 
「こっちだって童貞が掛っているんだっ!」
 
 
 
 
我ながら情けない言葉である。
しかし俺の情けない言葉は、彼女の闘志に火をつけたらしい。
 
 
 
 
「なら、その童貞、絶対に貰いうけてやるぜっ!」
 
 
 
 
アルトの周りがバチバチと帯電し始める。あいつ、電撃を使えるのか!?
あ、サンダーバードってそういう……。
 
 
 
 
「喰らいやがれぇっ!」
 
 
 
 
―――――さて、生物の体というのは電気抵抗がかなり低いらしい。そして水に濡れたりしていると更に電流が流れやすくなると言う。
このような事故は風呂などで電化製品を使っている時等に多く報告されており―――――
 
 
 
 
まぁ、つまり川の中で雷を使ったら感電しちゃうよねー。
 
 
 
 
「や、止めろーっ!」
 
 
「今更命ご、あばばばっ!?」
 
 
 
 
あーあ……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
乗り掛った船なのでアルトを家まで連れ帰り、布団に寝かせておく。
 
 
 
 
「うぁ、うわあぁっ!?」
 
 
「あ、起きた」
 
 
「ここは何処!?えっと、あれからどうなった!?」
 
 
「まぁ、落ち着けって。麦茶でも飲むかい?」
 
 
「……貰うよ」
 
 
 
 
アルトは麦茶を一気に喉へと流しこむ。すると幾らか落ち着いたらしく、はぁ、と溜め息を吐いた。
 
 
 
 
「情けない……獲物を狩る為に放った雷で自滅するなんて……!」
 
 
「水の中で使ったからなぁ」
 
 
 
 
周囲に魚が浮かぶ位の威力だったし。
 
 
 
 
「くっ、あれもこれもアンタが美味しく頂かれないから……! 何、そんなに私の事が嫌い!?」
 
 
「好き嫌いの前に野外プレイ
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