魔物娘が社会に浸透した現代ジパング。その片隅に人間・魔物兼用の診療所がある。
「エブリデイ・クリニック」―――――それが診療所の名前である。
私の名前はエン。「エブリデイ・クリニック」に勤める医者である。
「……そろそろ閉院の時間か」
先程帰っていったゴースト種の妊婦さんが最後の患者だったようだ。
「……ゴースト種の妊婦とは」
亡者が新たな命を宿すとは。これって間接的な生き返りかしら?
いや、お目出度い話なんだけどね?
「さて。後はカルテを纏めて整理すれば業務終了、だね」
これが終われば帰れる。私は気合を入れて、残務へと取り組み始めた。
何故か寝落ちしちゃったんだけど!
(……ん?)
耳元で、ぴちゃぴちゃ、という音が鳴っている。眠たい目をこすりつつ、私は意識を覚醒させていく。
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ
尚も耳元の水音は鳴りやまない。
(……耳を、誰かに舐められているのか?)
そう思いながら顔を上げた時、ひょい、と何者かに顔を覗きこまれた。
「うわぁ!?」
「あら、目が覚めたのかしら?」
突然飛び込んできた女性の顔に私は思わず驚きの声を上げてしまった。
「って、院長じゃないですか」
「気づくのおそーい!」
そう言って頬を膨らませて怒るのはセレスタイン・リンドストローム院長。種族は「リリム」で私の妻だ。
「全く愛する妻の顔を見て驚くなんて……」
ブチブチと文句を言いつつも、セレスタインは私の膝の上に座り、正面から抱きついてきた。
ふんにょりと当る豊かなおっぱいが心地よいなぁ。
「えーくん、会いたかったよ〜!」
「……そんな何ヶ月も離れていたみたいに」
胸に顔をうずめながらの妻の言葉に私は呆れたような表情で呟いてしまう。
やはりその物言いが気に入らなかったのか。セレスタインは不機嫌そうな表情でこちらへと詰め寄ってきた。
「えーくんは私に会いたくなかったの!?」
「一週間ぐらいなら余裕ですよ」
「一週間も会えないなんて私なら死んじゃうわ!」
そんな大げさな……とも思うが、彼女の表情は真剣である。俺も二週間目に入れば少し不安症状に陥るやもしれんなぁ。
「それで、ねぇ?ねぇねぇ?えーくんのちゅー、お帰りのちゅーは?」
もう我慢できない、とばかりにセレスタインが桜色の唇をチョンと突き出して顔を差し出してくる。
妻の子供っぽい仕草に思わず笑みを浮かべた私はセレスタインの唇に、ちょん、とついばむ様なキスを送った。
「……これだけ?」
「後の事は仕事が終わってからですよ」
「えー!?」
「ちょっと退いていてくださいねー?」
不満そうな声を上げるセレスタインを膝の上から退かし、私は再び仕事に取り組み始める。
暫く後ろでごねていたセレスタインも、やがて諦めたように溜め息を吐くと私の背中にぴっとりと抱きついて、私の仕事が終わるのを待ち始めた。
それから三十分もした頃。
「よし、お仕事終了!」
俺はカルテが入ったファイルを棚に戻すと、彼女が居るであろう背後へと視線を向ける。
「そんなに俺の首筋は美味しいですか?」
後ろを振り向くと目を潤ませて完全に発情しきったセレスタインの姿が。背中に張り付いていた彼女は、何時の間にか私の首筋を涎まみれにするほど舐めまわし始めていたのだった。
私はセレスタインを引き剥がして正面から彼女の顔を見詰める。
「そんなに俺の首筋は美味しいですか?」
ああ、今の俺って意地悪で楽しそうな表情をしているだろうなぁ。現に彼女の恥じらいの表情だけで下が大きくなり始めてる。
「美味しいよぉ……汗の味とか匂いとか……嗅いでいるだけで発情しちゃうのぉ……」
セレスタインが頬を赤らめたうっとりとした顔で答える。
袖から見える白い肌は全体的にピンクに色付き、捲れたスカートから僅かに覗く下着からは愛液がにじみ出ていた。
こうなると私の方もいよいよ我慢が効かなくなってくる。。
「一人でシてたんだ?」
「っ……シて、たの……我慢できなくてぇ……!」
とうとうセレスタインは涙を流しながら、びくびく、と体を震わせた。どうやら私の羞恥責めだけでイってしまったようだ。
それを見た私は心中で苦笑を浮かべる。
(リリムなのにM気質というか……)
この際、ついつい乗ってしまう自分のS気質からは目を逸らしておく。
とにかくこれ以上我慢させるのはかわいそうか、と考え、手早く机の上を片付け、セレスタインの腕を引っ張り起こして、机の上に手を突かせる。
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