俺は、魔物娘が嫌いだ。
ずけずけと無警戒に寄ってくる輩だからだ。
ちょっと手助けすればすぐ笑顔になりやがる。
その癖、同じ魔物娘なのに強がりから泣き虫まで様々だ。
おかげでこちとら自分の時間が作れやしない。
こっちの気が済まないから仕方なく助けてやってるのに、
疑うこともしないで「ありがとう!」なんて言う。
この前のホルスタウロスにしたってそうだ。
牛乳瓶がどう見ても一個持ちきれそうになかったから、
仕方なく手伝ってやっただけなのに、
憎らしいくらいの笑顔で礼を言いやがった。
こっちはさっさと帰りたいのに、色々と話までしてくる始末だ。
帰っても良かったんだが、そんなことしたら
近所のエキドナに噂が行って説教されると思って仕方なく残ってやった。
だってのに、こっちの気も知らないで楽しそうに話していた。
全く、ああいうのは本当に面倒だ。
こっちまで楽しくなる辺りとか特にな。
その癖、また来て下さいね、なんて言ってお土産まで渡してきた。
・・あんなにたくさん、どうしろってんだか。
しかもつい癖で、分かった、なんて言っちまった。
全く・・面倒だ。
何度行っても、あの笑顔でそう言う癖によ。
俺は魔物娘が、嫌いだ。
近寄ってくるなって感じの癖に、いざ近寄られると弱りやがる。
あの知り合いのドラゴンにしたってそうだ。
たまたま仕事の途中でそいつの宝剣を
盗んでた輩から取り返せたから、届けてやっただけ。
ただそれだけなのに、らしくなく頬を染めて
「い・・一応礼を言うぞ・・あ、あり、がとぅ・・」
なんて言いやがった。
不意打ちで可愛いなんて思っちまった自分が許せねえ。
こっちは仕事のついでで運んだだけだっつうの。
しかもちょっと話してたらすぐもじもじするんだからな。
・・宝剣を落とすくらいなら片付けてこいよ。
あげく、帰ろうとすれば
「も、もぅ、帰るのか?
せ、せっかくだ・・もう少しゆっくり、してぃ・・いや、何でもない!」
なんて訳の分からんことを言う。
王者なんて言ってる癖に、あれじゃ小娘だ。
何度でも伝える、俺は魔物娘が嫌いだ。
断りもなしにあーだのこーだの。
あのアヌビスにしたってそうだ。
こっちが頼んでもねえのに、勝手に予定がどうのと・・。
知るかって言っても聞く耳持っちゃくれねえ。
しょうがないから嫌がらせにこっちの予定表を見せてみたら、
「なんだこれは!こんなガバガバな予定表があるか!」
なんてケチ付けたあげく、
「ふふん、これで良い・・!」
完璧な予定表をものの一分足らずで仕上げやがった。
さらに悔しいのはそれが悉く理にかなった最高の出来だったことだ。
礼儀として、ありがとうって言ったらよ。
「ふえ!?・・ふ・・ああ。
う、うん・・まあ、助かったなら、なによりだ。」
なんて軽く動揺して、手はブルブル震えてやがったよ。
そんなに俺が礼を言うのが予想外だったかよ、ったく。
しつこいようだが、俺は魔物娘が嫌いだ。
よく分かんねえ輩がいる。
あのマンティスって奴なんか特にそうだ。
ほとんど何にもしゃべらねえ。
表に表情が出るタイプじゃねえ。
かといって、行動で示すタイプでもねえんだよな。
だからよ、ヘマして自分が傷ついても。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつもの無言で通しやがる。
その足の傷じゃ、見てられねえっての。
しょうがねえから無理矢理塗り薬と包む用の薬草を押しつけた。
目の前で血を流されちゃたまらねえからな。
・・ったく、狩人って言うなら自己管理ぐらいしろっての。
「・・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・」
ついでに礼まで分かりにくいんだ。
良いから帰れって言ったら、数日後、猪が玄関前に置いてあった。
「お礼」
・・いや、そんだけじゃ分かんねえって。
知ってるだろうが、俺は魔物娘が嫌いだ。
強い癖にヘマをしやがる。
あのワイバーンにしたってそうだ。
いきなり家の近くに落ちて来やがって。
勝手に人の家の前で気絶すんじゃねえっての。
しかも見てみりゃあ、翼に傷が走ってやがる。
矢が突き刺さってやがる・・見ていて気分が悪くなるレベルだった。
流石に放っておくわけにも行かねえから、
すぐさま薬箱を取って来て、間に合わせの応急処置はした。
つっても、出来たのは止血くらいだが。
目が覚めたそいつ曰く。
「反魔物領をどうしても仕事柄通らなきゃいけなかったからな。
危険だと分かっていても、届けなきゃいけないものがある。」
ったく、格好付けやがって。
それで命落としかけちゃ、世話ねえってのに。
まぁ、そっからは早かった。
流石は上位の魔物って感じの回復力で、
見る見るうちに回復してやがったよ。
こっちの心配を返せって思ったな。
しかも去り際に、
「夫にするならお前のような奴が良い!」
だとよ。
傷を治
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