「298・・299・・300・・!よし、これで終わりだ。」
「相も変わらず熱心なモノじゃ、兄上。」
訓練場で、私、騎士団拳術長ことゼクス・ラインは一人で訓練していた。
訓練と言っても、木偶に殴りかかっていただけであるが。
私に話しかけている彼女は、バフォメットのトメア・ルバーブ。
皆からは、トメちゃんとかトメ殿と呼ばれ親しまれている。
「・・その兄上ってのまだ言うのかい?」
「む?お主はわしの兄上としてここに入団したのでは無かったかの?」
そんなことは記憶にない。
大方話を盛った結果、まぁこの程度なら良いじゃろ、なんて感じになったのだろう。
勿論、実の兄である訳でもない。
だって言うのにふと気付けば不思議と一緒に居ることが多かった。
その為か、戦闘があった場合でもいつの間にか息ぴったりになっている。
「ま、そんなことは置いといてさ・・」
「そんな事とは・・まぁよい、なんじゃ?」
トメアからタオルを貰い汗を拭きながら、提案をする。
「この頃、騎士団弱くないか?」
「・・よし、兄上一度落ち着こうではないか。」
落ち着けってどういうことだろう。
そんなにおかしいこと言ったかな。
「兄上はこの前の天覧試合に参加したな?」「ああ、参加したよ。」
あの試合は楽しかった。
最後の相手はオーガだったけど、なんとか判定勝ち出来たのだ。
「お主は、いまだに童貞であるな?」「・・ああ、そうだけど。」
面と向かって言われると傷つくが、事実だ。
それだけに言い寄ってくる魔物も多い。
この前夜這いに来たサキュバスを起き上がりざまに蹴り飛ばしてしまった。
あれは、悪かったと思っている。
「・・うむ、お主はやっぱりおかしい。」「何処がだよ?」「全部じゃ」
しかし・・とトメアは考える。
何だかんだ言って、こういう所は面倒見が良い。
「・・確かに訓練がマンネリ化しておると知り合いも言っておったし、
そうじゃの・・あ!」
「何かいい案でもあったのか!?」
「うむ!まずはじゃな、二人組を用意する。」「ほうほう」
「その二人で、自らの持てる技の全てをつくした奥義を作る。
さしずめ、連係秘奥義と言った所かの。」
連係秘奥義、確かに面白そうだが・・
「だけど、いくら派手好きなのが多いって言っても、皆やるかなぁ?」
あまり技を使わぬのもいるだろう。
そんな私に彼女は、
「物は試しと言うじゃろ?まぁ、わしに合わせれば良い良い!」
と言って、何やら木偶に細工をしかけた。
「これで、たとえオーガに殴られようと、
ドラゴンの炎に当てられようと絶対に壊れぬ実験台の完成じゃ。」
あんまり得意げに話すので一発本気で殴ってみた。
バシンと良い音がして吹っ飛んだが、木偶には何の傷も見られない。
「凄いじゃないか、トメア!これならどんな魔法拳でも打ち込める!
それに・・あれ、打った方の痛みを軽減する魔術も掛けてあるよね?」
「ふふ、まァのぉ〜これくらい出来て当然じゃよ。」
こともなげに言ってはいるがその表情はとても誇らしげだ。
「良しそれじゃ・・」「連係秘奥義行くとするかの!」
トメア曰く、こういうのは気分がとても、とっても大事だという。
カッコイイ技名や詠唱にするのがポイント、むしろしなきゃだめらしい。
木偶に向かって二人で立つ。
「まずは俺から!連天撃、ふっ、はっ、喰らえ!」
右左、そして回し蹴り。
まだ行けるか?そう思った瞬間トメアの魔術が飛んできた。
「吹き荒れろ風よ、ゲイルブロウ!」
風が襲いかかり、木偶を巻きあげる。
それを見る間もなく私は風の中に飛び込んでいた。
風に乗りいつもより高く飛ぶ。
少々風が強いが、問題になる程じゃない。
「逃がさないよ、落ちろ、旋風墜脚!」
空中で蹴りを何発か入れ風が止んだあたりで木偶に踵落としを決める。
そのまま木偶は地面に跳ね、同時に私も動けなくなるが・・
「頼むトメア!ここからもう一踏ん張りだ!」
「あい分かった!どうなっても責任は取らぬからな!」
動けなかった体に力が戻ってくる。
そして私は、力の限りにトメアと共同攻撃に移る!
「「大地よ!グレイブスマッシュ!」」
せり上がった大地に包まれた木偶を、諸共吹き飛ばし
「「駆けよ炎よ、ブレイズラッシュ!」」
走る炎を纏って勢いのまま連撃を叩き込み、最後にアッパーで打ち上げる。
「最後の仕上げじゃ!」「分かってるよ!」
バックステップでトメアの反対側、木偶を挟む位置に飛び、
「光と闇に刻まれて!」
自分の両手を重ね、光の気を練り上げる。
「虚無へと消えるが、運命と知れ!」
トメアは逆に闇の魔術を練り上げた。
そして落ちて来る木偶に向かって一斉に発射する!
「「双極滅破衝(そうきょくめっぱしょう)!」」
「かっこよかったぞい!兄上!」「うん、俺もなんか楽しかったよ!」
程良い疲
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