一線越えた日

騎士団食堂にて。
騎士団長の妻がノームであること等により、
余るほどの食料があるここではバイキング形式で食事がとれる。
騎士団全員でも食べきれない量が穫れるため、
名目上は騎士団用となっているものの、一般の人々も来る
ちょっとしたレストランのようになっていた。

「あそこに座ってるのって君のお義姉さんだよね?」
食堂で自分の分の取り分を皿についで一人で食事をとっていると
俺とは別の隊の隊長ヘイムが話しかけてきた。
傍らには彼女のウンディーネもいる。
彼が指さしている方向を見ると、女性がいた。
蛇体を人体に変えてはいるが、その長い髪と独特の雰囲気
そして卵を好んで食べている姿は紛れもなく姉さんだ。
「はい、そうですけど・・。
何ですかヘイム隊長、姉が何か迷惑でも・・。」
姉さんなら厄介事の類だろう。
そう思って言うと、彼は苦笑を浮かべる。
「君の中でお義姉さんの印象はどうなってるんだい?
魔法の事で聞きたいことがあってね。
レヴィナさんはその手のことに詳しいと聞いたから。」
「失礼ですけど、それなら直接聞いたらどうです?
姉さんが答えるのを渋るようには思えませんけど。」
そう言うと、彼はその穏やかな表情を崩さずに続けた。
「勿論そのつもりだよ。
君に聞いたのは確認と単純な興味からだ。
ああ、勘違いされないように言うと、
レヴィナさんが君のことを良く話すものだから、どんな人なのだろうとそれだけ。」
「俺、隊長とは初対面じゃないですよ?」
不思議に思いそう言うと
さっきまで黙っていたウンディーネが、微笑と共に答える。
「普段の様子が見たかったようです。
マスターは任務外のベリクさんは見たことがないそうで。」
言われてみれば、確かにヘイム隊長と日常会話を交わしたことはない気がする。
別の隊とは言え、それはそれで珍しいことでもあった。

「はあ・・それでどうでした?」
抜き打ちテストをされたような、微妙な気持ちになりながら
あやふやな問いを投げる。
「うーん・・なんて言うんだろう、普通?
強いて言うならあまり動じるタイプではないってくらいかな。」
返ってきたのは、当たり障りのないものだった。
良くもなく悪くもなくと言ったところだろうか。
そう思っていると、ヘイム隊長はこちらに背を向けて歩きだした。
どうやら用事は済んだらしい。
「・・姉さんって結構凄かったんだな。」
視線を義姉に向けながら一人呟く。
その義姉はと言うと、隊長を相手に態度を変えていなかった。
それどころか、逆に手玉に取っているようで
隊長が何度か慌てたような素振りを見せる。
それがどうにも姉さんらしくて、ふっと笑みがこぼれた。


食事が済み、いつもの任を終えて
部屋に戻ってみると当然のように姉さんがいた。
ご丁寧に人間のままで、M字開脚をして手招きをしている。
シチュエーションさえ合っていれば、最高に淫猥だったろうが、
この状況においては単なるおかしなものにしかならなかった。
ともかく俺は自分の机に体重を預けた後、
未だ手招きを続ける姉さんに問う。
「・・何やってんの姉さん。」
「興奮するでしょ?」
恥じらうことなく即答する姉さん。
我が姉ながら、これはひどい。
「時と場所を考えてくれよ。
確かにエロいとは思うけど、今この状況でするポーズじゃないだろ。」
そこまで言うと、やっと姉さんはポーズを止め体を蛇体に戻す。
「あら、一応エロいとは思うのね。
あなたのことだから、
また変なことを私がやってるとしか思ってないと思ってたわ。」
「八割方正解だけどな。
と言うか、姉さん程の美人なら何やったってそこそこエロいだろ。」
「美人だなんて・・照れるわ、私。」
そう言うと姉さんは全く照れくさく無さそうな様子で
わざとらしく体をくねらせる。
それでもそれなりに美しく映るのだから尚更性質が悪い。
慣れておいて良かった、と内心呟きつつ俺は話題を変えた。

「で、姉さん。
俺の部屋に入って来てるのはもう良いとして。
今日は何だってあんなポーズしてたんだ?」
「ん〜?あなたが襲ってこないかなぁと思って。
獣と化した弟に襲われるのも良いじゃない?」
あんたは獣をひれ伏させる方だろ、と思うものの口には出さず、
代わりに少しだけ褒めてみる。
「いくらあんなポーズされたからって、即座に襲うほど俺は飢えてない。
目の保養なら十分できてるからな。」
「・・あら、もしかして私の事かしら?」
きょとんとする姉さん。
そこまで驚いたような風ではないが、目を丸くしている様子から
そう言われると予想してはいなかったようだ。
「目の保養・・まぁ、確かに自信はあるけれど。
あんなあからさまなので、目の保養?」
さらに不思議そうに首を傾げる姉さん。
子供っぽい仕草が大人な雰囲気とのギャップで、結構かわいい。
しかし説明
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