〜それぞれの楽しみ〜

side/レグザ

俺とザイードは目一杯闘うべく闘技場を訪れていた、のだが・・
「あー、すいません。明日の闘技大会の準備中でして・・」
「なっ・・・いえ・・そうですか・・」
どうやら使えそうにない。
落胆していると・・

「あら・・あの時の傭兵さん」「・・誰だ?」
振り返った先には見知らぬ女性がこちらを向いて立っていた。
いや、立っているというよりは蛇の体を半分柱に巻き付けているという所か。
失礼だとは思うが、口をついて出たのは名を問うものであった。
そんな言葉に目の前の女性と、なぜかザイードも顔を顰めた。

「覚えてないのか、あたしとあんたを合わせた恩人だよ?」
「まぁ、ちらっと言葉を交わしただけだしねぇ」
・・ん?この声、聞き覚えが・・

『ほら、わたしよりもあの子の方が楽しめるわよ・・』

「あのときの・・え?えええええ!?あんたか!?なんか変わってないか?」
「そんなに驚かなくったっていいじゃない」
確かに覚えがあった。
かつて傭兵として過ごしていたとき、半ば荒んでいた俺の目の前に現れ
ザイードに逢わせたエキドナ、タリアその人だ。

「見る限り、夫婦円満みたいね」「まぁ、おかげさんでね」
「そういや、なんであんたが此処に居るんだ?」
返ってきたのは、予想だにしない答えであった。
「ああ、ここのオーナーあたしだもん」「・・え?」
いや、だもんって言われても。
驚く俺を傍目にザイードは話を続ける。

「へぇ〜あんたがオーナーだったのか・・
それはそうと、なんとかして使えないかな?闘技場。」
その問いに彼女は、少し考えた後
「そうねえ・・確かにどの辺りまで暴れられてもいいか、
確かめたくもあったしいいわ、あなた達なら」
「「本当か!恩にきる!」」
聞くが早いか、俺はザイードとともに闘技場へと走り出していた。
その途中後ろからこんな声を聞きながら。
「ほんと、彼女に会わせてよかったわ・・二人ともあんなに幸せそうで・・」


side/ミーア
私は、アルと一緒に買い物に来ていた。
これは酒場の仕込みなどではなく、正真正銘の私事だ。
何を買うでもなくただぶらぶらとアルと見て回る、まぁデートかな。
「ねぇねぇ、これなんてどうかな?」「あぁ、良いんじゃないか」
むー・・返事といえば、まずこれだもんなぁ・・

「え〜・・・アルはそれしか言わないよ・・」
「あ〜・・うん、ごめんな。良く分からんから似合ってるとしか・・」


まぁ仕方ないと言えば仕方ないんだけど・・
これ以上ここにいてもつまらないので私たちは店を出ることにした。

side/アルべス

むぅ・・ミーアが服を着て見せてくれるのだが、
その度に俺はあんな感想しか言えないことを悔しく思う。

過去を言い訳にしたくは無いが、
ミーアと出会うまで、生きるか死ぬかの生活しかしていなかったので
正直なところ、何を着てもミーアが綺麗だということしか言えない。

・・ん、待てよ?俺はミーアにそう言ってやったことが有ったか?

随分前にした会話を思い出す。
『なぁ・・ミーアは素朴な答えと、飾った答えどっちが良い?』
『そんなの素朴な方がいいよ、分かりやすくって』

そうだ!言ってみるか。
「なぁ・・ミーア、さっきの服のことだが・・」
「・・何よ」
う・・やっぱり怒ってるか・・
「ごめんな、いつも同じ答えしかできなくて」
「・・いいって言ってるじゃない・・」
そう言いつつも彼女は目を合わせようとしない。

やはり言うなら今しかないか。
「あれはな、俺には違いが分からないんだ。」「・・っ!」
でもな・・と続ける。
「俺にわかるのは、どんな服を着ても
ミーアは変わらず綺麗で可愛いって事だけなんだ。」
伝わってくれたか・・?
「なによ・・もう・・アルったら・・」
そう言って俯いてしまった、伝わらなかったか・・?
少々不安になった俺だったが

「・・うんありがとう、すっごく嬉しい!」
ミーアは一転笑顔で巻きついてくる。どうやら伝わったようだな・・
「嬉しい・・ああ俺も嬉しいよ、やっぱり気持ちは素直が一番だな。」
「もう・・アルはアルなんだから、そのまんまが良いんだよ。」

素直が一番、肝に銘じておくことにしよう。

side/ガザルア

私はバルズと酒場に来ていた。
なぜ、デートで酒場かというとホテルを出た後の会話に原因がある。

「な、ガザルア行ってみたい所あるか」
「ふむ・・酒場かな、この辺りはどんな酒が有るか気になる。
それに任務で来るやもしれんからな、情報はほしい。」
「よっし分かった。じゃ、行こうか。」

我ながら色気のいの字も無いな・・そんな自虐に耽っている間にも
バルズはあっちへ行ったりこっちへ来たりと忙しないものだ。
いつもならば注意するところだが、
情報を集めると言う時にはバルズの右に
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33