〜二日目、昼まで〜

side/椿
「お〜い、朝だぞ」「ん・・ああ、おはようラーシュ」
ラーシュの声によって目が覚める。
朝は弱い方ではないのだが、ラーシュは大概俺より早く起きる。
なのでラーシュに起こしてもらうことが多くなるのだ。

「ああ、おはよう。皆もう準備に取り掛かっているぞ。」
野営地に戻ってみれば、その言葉の通りであった。
とはいっても、俺の持ち物は昨日のうちに整えたしそもそも数は多くない。
それは、皆も同じのようで、準備の早い遅いに関わらず、時間はかからなかった。

準備を終え進んでいくと、街が見えてきた。
「あれが、目的地だな」「ああ、なんでも夫婦がよく訪れるとか」
かなり大きい街だ・・万が一にもラーシュが退屈することはなさそうだな。

アルに聞いたところでは門番がいるという。
「まぁ、これだけ大きいならば反魔物領に睨まれ易くもなるか・・」
「いや、実際は来る人や魔物の数が多いから、というのが実情らしい」
「詳しいんだな」「まぁ、うちは酒場だからな」

そんな話をしているうちに、門につく。
門番には、リザードマンとその夫と思しき男がいた。

「すいません、3日程このあたりに留まりたいんですが」
「男4人と・・ワイバーン、ラミア、デュラハン、サラマンダーですね・・
分かりました。どうぞ、ここの地図です」
「ああ、ありがとうございます。」
アルが四人分の地図を持ち、帰ってくる。


「アル〜私はこの店に行ってみたいな〜」
「ミーア・・楽しいのはわかるけどまずは宿にいかないと、だ」

「バルズ、あまりキョロキョロするな」「いいだろ、気になるんだから」
「見ろ!レグザ、闘技場だ!」「ああ、後で行ってみるか!」

「椿、温泉があるぞ。」「かなり大きいな・・稲荷温泉か・・」

見物しつつ歩く事三十分ほど、予約したと言う宿につく。
そこは想像通りの大きな宿、否ホテルといった方が正しいものだった。
受付に行き、係のサキュバスにチェックを取る。

「すみません、予約をしていたアルベス・ノアですが・・」
「少々、お待ち下さ〜い・・はぁい、確かに確認いたしました。
こちらが、合鍵となっております〜どうぞ〜」
「どうもありがとうございます。」
どうやら、無事済んだらしい。
正直言って、堅苦しいのを想像していたのだがそうでもないようだ。

「大きいな・・ここが部屋か・・」「ラーシュが飛んでいけそうだな」
ロビー集合の約束をし、それぞれの部屋に俺達は入った。
俺とラーシュの部屋は”竜の巣”という名前らしい。
窓が大きかったので、少々非常識な質問を係にしてみた。
「ここから、飛んでいっても大丈夫ですか?」
呆れられるか、あるいは笑われると思ったが係の表情は笑顔のままで
「はい、それや騎乗位の好きなワイバーンの方や、本来の姿になっても
大丈夫なように作られておりますから、問題ありませんよ〜」
「すごいものだな・・ありがとうございます。」
「はぁい、質問が他にあればロビーにてどうぞ〜」

係が出て行った後、俺は時間までラーシュと話していた。
ラーシュはずっとベッドに寝そべっていた。
「どうだ?ラーシュ」「ああ、とっても気持ちいいぞ」
部屋には、大きく丈夫そうなダブルベッド、それにこれは・・双眼鏡?
空を飛ぶときは常にラーシュと一緒の俺には無縁のものだな。

「なぁ・・椿、そんなものなんてどうでもいいだろう・・?
早くこっちに来て・・」
「ラーシュ、盛り上がるのは分かるがな?」
そういって、俺はラーシュに口付ける。
「んっ・・」「今はまだこんだけだ。お楽しみは夜にとっておけ?ラーシュ」
「ん・・わかった。だけど今日の夜は期待してるからな」「ああ」

正直なところ、今この瞬間にラーシュの気持ちに応えてやりたかったが、
皆で集合の約束がある以上勝手は出来ない。
しかし、ラーシュにはその分我慢をさせてしまうのだから、
帰って来たらじっくり交わってやろうと心に決める。
そして、せめて抱き締めるくらいならばしてやれるだろうと思い、
翼の下から背中にかけて手を回す。
ラーシュも同じように手を回し、俺の体を引き付ける。
このまま見つめ合いながら時間が来るのをただ待つというのも良いとも思ったが、
少々の好奇心と悪戯心を抱き定番の質問をしてみた。

「なぁ・・ラーシュ、今幸せか?」
「そんな事を聞くのか?まぁ良い、幸せに決まっているだろう。お前と一緒に居られる・・それだけで私はとてつもない幸せを感じるんだぞ。」
そして少しだけ不安そうな顔になり、問い返してくる。

「聞くと言う事は、椿は幸せではないのか・・?」
「いや違う。ただ聞いてみただけだ、なんかこういうのが流行っているって聞いてな。・・すまん、怒ったか?」
「少しだけ、でもキスしてくれたなら収まるかもしれないぞ」
「わかっ・・ふ
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