あの初夜から、何日か後。
俺とラーシュはジパングにある俺の実家に行くべく、空を駆けていた。
「−−ッ!!はあっ・・ラーシュ、飛ばしすぎだ!
いくら楽しみだからって、少しはスピードを考えてだな・・」
「む・・何か言ったかー!風が強くて聞こえ無いぞー!」
絶対に嘘だ。
ラーシュの耳がこのくらいの風で聞こえなくなるはずがない。
そもそも、本当に聞こえなかったならば彼女は一旦停止するはずだ。
「お、見えてきたぞ!ジパングだ・・何年振りだろう・・」
眼下に広がる俺の故郷を見つめ、本当に懐かしそうに言うラーシュ。
考えてみれば彼女は俺と別れてから数年の間、
飛べば行けるかもしれない場所をずっと指を咥えて待っていたのだ。
それは、とても辛いことだっただろう、と思う。
もちろん、その分これから愛し合えば良いだけの話だ。
「ああ・・どうだ、雰囲気とか、変わったか?」
「少し変わってはいるがやはり同じ感じだ。
皆ゆっくりと時間が進んでいて、日々を楽しんでいるのが分かる。」
そう言う彼女もその雰囲気に合わせたのか、
先程よりゆっくりと滑空、降下を始めた。
ゆったりと降下して町の上空を漂うように飛ぶ。
行き交う人々は物珍しさに集まってくるが、
俺達は気にせず、ただ一点を目指して飛んでいた。
我が父母、竜風朱連と葵のところだ。
無事、両親の居る家の前に辿り着く。
「ラーシュ、この辺りで一旦降りよう。
飛びながら入るには少し狭い。」
「ん・・分かった、飛び降りられるか?」
大丈夫だ、と答え石段の上に着地する。
続いて翼をたたみ、先程より少々細身になった彼女も降りてきた。
「よし、では行こうか椿。
むぅ・・緊張するな・・なんと挨拶すればいいんだ・・?」
外見に似合わず、意外なところで悩むラーシュ。
そんな彼女と大丈夫だって、等と話していると我が家が見えて来る。
・・刀を構えて俺を睨みつけてくる父さんも。
なるべく触れたくなかったが、運の悪い事にあちらから斬りかかってきた。
「チェストォォォーッ!!」「父さんっ!?くぅっ・・!!」
触れればただでは済まない量の魔力を滾らせ振り下ろされた刀を、すんでの所で避ける。
しかし、その程度では安心など出来ない。
こちらも抜刀し応戦しようとするが
すぐさま返された弐の太刀の鋭い切っ先が首筋に向けられた。
今度は反応すら出来ず、その場に固まってしまう。
しかし、刀はそこから退き元の鞘に戻された。
次いで声が掛けられる。
「・・ふむ。
一刀目をかわせる様になったか・・成長したな、椿。」
それは、意外にも称賛の言葉だった。
緊張の糸が切れて、茫然とする俺に今度は衝撃が襲いかかってくる。
我が母、竜風葵に押し倒されたのだ。
そのまま頬擦りまでしてくる。
「ん〜・・お帰り、椿・・久しぶり!
あなたったら、こんなに可愛い子を連れてきて・・!」
「か、母さん!?
ちょ、恥ずかしいよ、ラーシュも見てる!」
俺の制止も虚しく、今度は抱き締めてくる母さん。
我が母ながら・・何というか、強い。
しかし、俺自身も久しぶりに母さんに抱き締めてもらい、
頭を撫でられるその感触に脱力しかけていた。
それに加えて、押し付けられる肌の感触が、何とも言えぬ安心感を生みだす。
あんまり、そんな感触に浸っていたものだから、ラーシュが少し困ってしまっていた。
「・・あの・・えっと。
私は、ラーシュ・ラグナスと言う・・久しぶりで・・。」
小さい声でそう告げるラーシュに母さんは向かっていく。
その顔は先程より真面目だ。
「そう・・貴女が、椿の・・。
ねぇ、ラーシュさん?椿のどんなところが好きなの?」
唐突に訊かれた言葉に目を瞬かせるラーシュ。
しかし、すぐにフッと笑い、堂々と言った。
「決まっている!!全てだ!
あえて言うなら寝ている時の意外に無防備な顔とか。
遠くを見ている時の寂しそうな目とか、そこからこちらを見た時の優しい目も
それと、私に犯されている時の我慢しつつも快感に蕩けている表情も、
ああ、それと私を逆に犯した時のあの欲望塗れの顔も大好きだ!!」
「・・・・」
無言になり、顎に手を当て考え込んでしまう母さん。
流石に、ラーシュが言い過ぎたのか・・?
しかしそんな事は、無かったようで母さんも目を輝かせ、話を話し始めた。
「うん、合格ね・・私、貴女と仲良くなれそうでうれしい!
私もあそこに立ってる格好良くて渋い私の朱連の事、大好きだもの。
あの人もね、椿とは似てないように見えて結構似てるのよ。
例えば、弱点を見つけると暫くはそこに集中攻撃する事とか。
椿って、そんなところ無かった?」
言う母さんにラーシュも目を輝かす。
「何と・・そうなのか・・!いや何、私は尻尾が弱点で。
椿はそれが分かった瞬間もうそこしか見えないくらいに攻めたんだ!
いや〜・・
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