デート,

「グロゥさん起きて下さい、ご飯出来てますよ。
ふふ・・昨日は言われちゃったからやり返してみました。」
目が覚めた時、目の前で微笑むミルナに言われる。
寝癖がついていたり、服が少々乱れている所を見ると
その一言を言う為に、わざわざ俺よりも早起きしたらしい。
どうやら昨日、俺に言われた事が不服だったようだ。
・・身長の割に、子供っぽいよな・・
そんな思いと共に体を起こす。

「おはよう、ミルナって早起き出来たんだな。」
「もう、昨日だって起こされたとはいえちゃんと起きました。
だから起きられないわけじゃないんですよ?」
「そうか、それは悪い事を言ったな。」

会話を交わしつつ食卓へと向かう。
朝食は昨日と同じく、焼きパンとミルクというシンプルなものだ。
食事の終わり際、ミルナが唐突に言った。
「グロゥさん、今日もしお仕事が早めに終わったら
二人で町を見て回りませんか?
もし・・グロゥさんが嫌じゃなければですけど・・」
「え?ああ・・うん。
もし、早めに終わったら、その時は一緒に行く。」
その答えを聞いた彼女はとても嬉しそうな顔で「はい!」と
元気よく返事をして牛乳を飲み干した。
・・あまり喋るほうでもない俺と一緒に行って楽しいのか・・?
そう思わないでも無かったが、言わずにおいた。
彼女の笑顔を曇らせるのは気が引けたし、それがデートという物の類に
入ることは俺でもわかったからだ。
俺自身、楽しそうだと思っていたからでもあるが。

朝食を食べ終わりエメラルダへと向かう。
今日の仕事は出来るだけ早く終わりそうな物がいいなと思いつつ
ナナキに話しかけたところ、予想外の言葉が返ってきた。
「あら、おはよう。
張り切ってるのに悪いんだけど・・今日、仕事はないわ。
正確に言うなら、さっきまで有ったってところね。
ゲーティアがさっき来て、友達と一緒にラストの一個を受けちゃったから。」
それは、普段ならば彼女の態度通り都合の悪いことだったが、
今日に限って言えばそれは当てはまらなかった。
無いなら無いで、ミルナと一緒に居られる時間が増えるからだ。

「そうか、無いなら仕方ないな、それじゃ!!」
「もう帰るの?お酒の一杯でも飲んで行けばいいのに・・」
名残惜しそうに行った彼女には「悪いな」と一言だけ返して家の方へ走る。
背後からは、「手間のかかる人達ね・・」とナナキが言うのが聞こえた。
恐らく、ギルド内で問題児でもいるのだろう。

家に帰りつきミルナのいる部屋へと歩いていく。
振り向いて俺を見た彼女の顔は、思った通り驚きの表情を浮かべていた。
「ただいまだ、ミルナ。
仕事なんだが、今日はもう無くなっていた。
だから、その分今朝の件、早く行って長く楽しめるぞ。」
だが俺がそう伝えると、いつものよく似合う笑顔になる。

「本当ですか!?嬉しいなぁ・・あ、準備して来ますね。
待たせちゃうかもしれないですけど・・」
そしてそう言いつつ、居間から出て行った。
何の気なしに、後姿を見ると尻尾が嬉しそうに揺れている。
牛が嬉しいとき尻尾を振るのかは知らないが、彼女の雰囲気は確かに楽しげだ。
ならば、そう考えて良いだろうと思うことにした。
「すいませ〜ん!お待たせしちゃいました?」
「いや、そんなには待っていない。むしろ早い位だ。」
駆け足で寄ってくる彼女にそう返す。
事実、俺の経験から言わせてもらえば(そんなに経験など無いが)
かなり早い部類だ。

彼女は俺の手を握りながら引っ張っていこうとする。
「じゃあ、行きましょうか。
私ずっと前から行きたかった場所が有ったんです!」
「・・?ならなんで前に行かなかったんだ?」
俺が返すと、彼女は少し不機嫌そうな顔になってしまった。
そして、何やらぶつぶつと呟いている。
「む〜・・グロゥさんって、意外と鈍いのかな・・」
「どうした?行くなら早く行かないと、時間無くなるぞ?」
「分かってます!さ、行きますよ!」
そう言って、俺の腕を引っ張って行く。
言葉は不機嫌そうだったが、顔を見たところ気分はそうでも無いらしい。

道中、ミルナがいつも行くというパン屋に寄った。
店名はファイア・ベーカリー、イグニスとその夫が経営する店だ。
「お、ミルナちゃん!誰だい、その良い男は!
あんたもついに彼氏を見つけたかい?」
「え、や、ち、違いますよ、フレアさん!
この人は・・えーと・・一緒に住んでるグロゥさんです!」
パン屋のイグニス、フレアとミルナが話している。
ミルナから教えてもらったのだが、このイグニスのパン屋、結構な人気らしい。
彼女曰くいつも来てるから、炎の赤には慣れ凶暴化もしなくなったという。
「一緒に!ほえ〜・・そりゃまたあんたも大胆なことするねぇ!
ってことは・・もうやっちまったかい?」
そう言われてなぜかミルナは真っ赤になっ
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