築いた心は脆く秘めた愛は深く

教団の訓練場。
隊長である俺は今日も訓練に打ち込んでいた。
今日の相手は中堅3人。
何かと突っかかってくるこいつらに
正々堂々勝負しろと殴り掛かられたので相手しているのだが
「・・!!甘い、そこだ!」
振り返りざまに裏拳を打ち込み、一人の脇腹を強打する。
「ぐうっ・・」「どうした!そんなものではワーシープすら倒せないぞ!」
油断なく構えつつも思う。
(手応えがなさ過ぎる・・この程度なのか!?)
後ろの奴と前の奴が動いた。
どうやら挟み撃ちにするつもりらしい。
「あんたが、ブレイル隊長がっ・・!!」
何か喚いているがそんなことはどうでもいい。
今大事なのはどうやってこれを脱するかだ。
「知ったことか!!俺は俺、それだけだ!」
まずは前に、渾身の右ストレートを差し込む。
勢いの乗ったパンチは吸い込まれるように止めようとした男の手へと進む。
(止められたか・・?いや、それはないな)

「っ〜〜!!あ〜〜っ!!」
痛みが襲ってきたようで転がる男。
残るはあと一人のみ。
「・・ひ・・!!う、うわああああ!!」
半狂乱になり襲いかかってくる。
だがちぐはぐになり踏み込みすらままならない攻撃を受け止めるのは容易だ。
片手で腕を掴んで止め、そのまま足を払う。
見事にすっ転んだ最後の一人は俺に向かって口走った。
「や、止めろ!来るなぁ!うわあああああ!!」
全く何をそんなに怯えているのか分からない。
「気が済んだか?だったらこれから用もなく俺に突っかかるな!
正直なところ貴様等と遊んでいられるほど暇じゃない!」
イライラする気持ちを抱えながら俺は訓練場を後にした。


次の日、俺は王に呼び出された。
玉座に鎮座する女王に頭を下げ礼を示す。
「ブレイルよ、お主は昨日部下に対して暴言を吐いたそうだな?」
「はっ・・間違いありません。」
「そのことに関してはお主にも事情があったのだろう。
でも、どのようなことがあったとて暴言はいけないの。
八つ当たりなどもっての外。
導き手は厳しくも優しくあらねばならないのよ、分かる?」
(くっ・・正論なのは分かっている、
だがあのような不当な行為にもその理論は通ずると言うのか・・!!)
煮えくりそうな腹を押し隠し礼を取る。
「はっ・・改めて承知いたしました、重々肝に銘じておきます。」
それを聞くと次に女王は俺にこう言った。
「少々無茶な作戦になるが参加して欲しい。
こちらに攻め込むために山間部にオーガなどが多数集結しているらしいの。
これを今宵か明日叩くという、出来るかしら?」
「出来るかでは御座いません、王自らの頼みとあっては私に断る理由など御座いませんよ。」
即答する私に女王は破顔する。
「おお、やってくれるの!これでこの作戦の成功率もまた上がるわけね。
では、今一度よろしく頼むわ!」
「は・・それでは失礼いたします。」
もう一度礼をして俺はその場を立ち去る。
・・女王が一人、妖艶な笑みを浮かべたことなど俺は知る由もなかった。


そして作戦の地である山間部のテントに俺は今いる。
「・・明日が決戦か・・どれほどの戦いとなるのだろうか・・」
駒としての立場から考えてみても明日の戦いが険しいことはわかった。
オーガやワームもきっといるだろう。
その他諸々の強力な魔物達を相手にどれほどの戦いが出来るのか。
(そもそも勝ち目があるのか・・?)
弱気になりそうな心を押さえ付け、勝てるのだと自己暗示した。
(心が負けた時点で負けなのだ、戦う前から負けてどうする・・!!)
体を休ませすぎぬ程度に布団に座り心を落ち着ける。
大丈夫、俺は今冷静になれていると確認して夜明けを待つ。
しばらくすると、見知った顔が入ってきた。
シャイアという女拳闘士で俺がまともに話す数少ない人物だ。
「あ・・ブレイル、一人で休んでたのかい?
呼んでくれれば私も一緒に休んだのに・・」
「しょうがないだろ?シャイア以外に話してもらえないんだから。
一人でいるのが俺にとって当然なんだよ。」

他愛の無い話をしながら二人で夜明けを待つ。
シャイアは女だが、そこらの武闘家など片手で倒せる強さを持っていた。
「シャイアがいるなら、この戦いも少しは楽になるな。」
「ブレイルこそ、頼りにしてるよ。
どんな訓練だって乗り越えた、うちで最強の拳闘士だもん!」
「そう言うな、恥ずかしくなってくるだろ。」
言い合いつつ、二人で笑う。
戦い続ける中、いつでも一緒に居てくれたのはシャイアだった。
だから、こいつとなら負ける気なんてしない。

夜明けの光が見えかけた頃総隊長から声が掛かった。
「お前達、そろそろ作戦準備に取り掛かれ。
大きな戦いになるが、死ぬなよ!」
「あたし、もう行かなきゃ・・じゃそっちの部隊も頑張ってね!」
「当然だ!勝って帰って一緒に笑う・・だろ!!」
シャ
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33