「・・おーい起きろ、今日は町を案内する日だぞー。」「ん・・」
牢屋の中で看守のサラマンダーに起こされる。
意外にもすっきりとした目覚めだ。
「ああ、おはよう・・ふあ・・」
「昨日の態度は何処へやらって訳かい。」
「ま、そう言わないでくれよ。俺だって町に興味が無いわけじゃないしな。
で、監視がつくって話だが・・」
にやけて話す俺にサラマンダーは頷く。
「ああ、あたしだよ。
なんか、家があるからそこに住まわせてその周辺で見張ってろってさ。」
「そんなことを俺に話しても大丈夫なのか?」
「あ〜・・良いんじゃない?
あんた、あんまり根っから教団ってわけでもなさそうだしねぇ。」
歩きながら、それに・・と付け加える。
「逃げようったって困難だって分かってる顔だよ、あんたは。
過去逃げようとした奴みたいにただ逃げることだけを考えてない。
現状分析をしっかりと出来る、一番敵にしたくねぇ奴だ。」
「・・そりゃ、どうも。・・ったく、変わろうとした矢先にこれか・・」
「あ?」「いや、なんでもないよ。」「なら良いけどさ。」
体に染み付いた習慣は消えてはくれないらしい。
騎士団の詰め所を横切り、扉をくぐった先は見事な城下町だった。
「ほ〜、こりゃ凄い。」
「まぁね、この辺りは人が多いから発展もしてるってわけさ。
ところであんた、どっか行きたい所があるかい?
出来るだけ捕虜の好きな所に行かせてやりなってのがこっちの方針でさ。」
「行きたい所・・ねぇ・・そうだな。
この辺に、皆の頼みを聞いてやってる場所はあるか?」
「ふむ?ちょいと待っておくれよ・・」
顎の下を手で撫でながら思案するサラマンダー。
程なくして、笑顔になると答えてくれた。
「あるね、エキドナとかがやってる何でも屋の集まりみたいなのがあるよ。
確か名前は・・エメラルダ・・だったかな?
その仕事は運搬から護衛まで、数多いって噂だよ。」
「そうか・・よし、行ってみよう。それはどこにあるんだ?」
すると、付いてきな、と言って走り出した。
結構なスピードに苦笑いしつつ、俺も同じく走って付いていく。
何故その隙に逃げなかったかは、分からない。
しばらく走ると大きな蛇を形どった像が両に二つ立っている建物の前に着いた。
「ここがエメラルダギルドだ。
あたしも入っていくけど詳しいことは中の奴から聞いた方が早いだろうね。」
そう言い彼女は俺と共にドアを開け入っていく。
中には立派な広場があった。
ケンタウロスと人間が酒を酌み交わしていたり、
オーガとアカオニが腕相撲していたりとにぎやかだ。
そんな彼らを横切りカウンターに近づいて行く。
カウンターは3つあり、左から、
ラミア、メドゥーサ、エキドナが受け持っているようだ。
と、エキドナがこちらを見て手招きをしていた。
拒否する理由もないので近付き話をする。
「貴方、ここに来るのは初めてかしら?私はここのマスター、ナナキよ。
ここで仕事をやってみるつもりはないかしら?
あ、マスターって言うのは・・」
「仕事の斡旋及び選抜、人員の管理、よそのギルドとの業務の提携。
それと・・ギルドそのものの管理をする・・と言ったところか。」
するとナナキは感心したように頷く。
「ええ、そんな感じよ。
貴方、ギルドに詳しいわね、どこかに所属していたことはあるの?」
「あると言えばある、あまり褒められたものではないが。」
「やっぱりね・・貴方の眼を見れば分かるわ。
仕事って聞いて、すっと色が変わったもの。」
「・・へえ、そうかい。」
拗ねたように視線をずらすと彼女は笑って手を振った。
「でも大丈夫よ、ここは殺しの依頼なんて入ってこないわ。」
「・・そりゃ安心だな、何より楽で済む。」
「まぁここで紹介する仕事っていうのは・・例えば、そうねぇ・・
落し物を見つけて欲しいとか、手紙とかを届けて欲しいっていうのかな。」
その手の仕事ならば、これまでもやったことがあったし慣れている。
何より・・職を見つけなくては生活が成り立たない。
そう思いこのギルドに所属することにした。
「そう言うことか・・ここに所属するにはどんな手続きを踏めばいい?」
「そうね・・特に必要なことは無いわ・・
しいて言うなら私に気に入られること、かしらね。」
「それだけか・・?試験などは必要ないのか?」
「あら、私に気に入られることは前提なの?随分と自信があるのね。」
「・・・・」
目の前でいたずらっぽく笑う大人びた彼女に
冗談ではなかったのか、と内心こぼす。
「・・仕事をこなしていけば、そのうち気に入られるのではないか?」
そう答えた俺にナナキはクスッと笑った。
「ふふっ冗談よ、まぁ、そんなに生真面目な人なら大丈夫ね。
資格はそんな、真面目に人の事を考えられる人ならだれでも良いのよ。」
そして、座っていた椅子からす
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