朝駆けされるお手伝い

リジアンに好きだと言われてから二、三日たったある日の朝。

・・眠い。
俺は猛烈にそう思っていた。
特に理由はない。
昨日無理をしたとか、そういうわけではない。
ただただ眠いのだ。
朝日が差し込んでいるのは分かる。
しかし、布団の中から起きあがりたくない。
分かる者には分かるだろう、
目が覚めてはいるが、起きたくはないという奴だ。
そしてそんな心持ちでは、
清々しい朝日とか麗らかな日光とかどうでも良いわけで。
「ぅふぁ・・」
あくびを一つ。
「ぅ・・」
窓を見る。
感じていた通り、光が入り込んでいた。
眩しさと存在感をまき散らすそれは、朝なんだからしっかり起きろ、
とでも言いたげにうっとうしく輝いている。
・・うっさいやい、俺はもう少し寝ておきたいんだ・・
抗議するようにそれを軽く睨んだ後俺は、再び布団を被る。
ゲイルと完遂させた仕事のお陰で、懐はまだまだ暖かい。
当分は仕事が選べるくらいだ。
・・こう言うと少々ヒモっぽいが、
俺も役割は果たしたからそうではないだろう。
だから、俺は寝るんだ、寝てていいんだ・・
そう思って意識を沈める。
瞼を閉じてしまえば、あの光も微細な気配に過ぎない。
そうなれば、だいたいのものは無視していられるのだ。
そう、あの早起きな鳥の鳴き声も。
そう、コンコンというノックの音も。
そう、何故か開けられた家のドアも。
そう、何故か俺の布団がめくりあげられ何かが入ってきたこと・・

「・・ぁぅん?」

は、流石に無理。
というか、ドアが開けられた時点で怪しめ、俺。
そう突っ込む間にも、「何か」は俺の布団という聖域に入ってくる。
その動作には一切の躊躇いが感じられなかった。
・・暗殺者?どこかの恨みを買ってしまってたか・・?
思考が切り替わり、仕事用の考えになる。
しかし、すぐに視線だけをそちらに向けなかったということは、
やはり俺がいくらか寝ぼけていた証明だろう。
その一瞬を逃してしまった今、おいそれと動くことは出来ない。
とにかく、だ。
姿は確認することが出来なかったにせよ、
もしそうであるというならば、対処しなければならない。
そう考えている今現在も、「何か」は入り込んでくる。
どうやら、シルエットや感触から察するに、人型のようだ。
クノイチ、とやらの話は聞いたことがあるが、違うだろう。
噂ではクノイチは忍び込む。
扉を開けて堂々と入ってくるのを忍び込むとは言わないだろう。
・・となれば、機を待つ。
こいつが、俺の布団を被る位置に来る、その瞬間を。

もぞもぞ・・すすす・・

今だ!

「はぁっ!!」

体を跳ね起こし、布団越しに相手を取り押さえる。
この方法ならば、反撃のリスクは小さい。
「っ・・全く・・朝から情熱的だな、君は。」
相手の声が聞こえた。
・・この声?・・それにしゃべり方・・
そちらを見る。
するとそこには。
「布団で私を取り押さえて・・どうするつもりなんだ?」
微妙に嬉しそうな苦笑いを浮かべる、ゲイルの姿があった。



「・・あのなぁ。」
それから少しして。
立ったまま俺は、ベッドに座るゲイルに渋い顔を向けていた。
「確かに、応対に出なかったのは俺が悪い。
でもな・・いきなり布団に潜り込んでくる奴があるか?」
「ん・・まぁ、それはすまなかったよ。
と、それは置いておいて、だ・・」
彼女はあやふやな答えをして、話題を変えようとする。
「おい。」
「私がここに来た用件なんだが・・」
しかも、都合の悪い追及は無視ときた。
「・・なんだよ。」
これ以上は無駄か、と諦め俺はそれを大人しく聞く。
すると彼女はにんまりと笑う。
「ふふ・・デート、と洒落込まないか?」
・・一瞬、何を言ってるのか分からなかった。
「・・は?でーと?」
唖然として、オウムがえし。
ゲイルはそれを見て、うむ、と頷く。
「えーと。」
「そう、デートだ。
私は、君を好いている・・それは知っているな?」
「お、おぅ。」
興味以上の対象・・とかっていうあれのことだよな、と頷く。
「まぁ、そういうことさ。
好いている相手と、空いた時間を共に過ごしたい・・
それは間違った感情ではないだろう?」
「あ・・あー・・」
とりあえず理解。
納得はなんだか唐突で出来ないが。
「で、だ。
仕事人という生業の君が朝に寝ているという事は、
君も暇ということだと思ったんだが。」
「まぁ・・暇、だけど。」
決めつけられているのが微妙に傷つくが、事実なので肯定する。
「ん、なら・・私の我が儘に付き合ってくれないだろうか、と。
まぁそんな風に考えて、ここに来たというわけだ。」
「あー・・そうか・・」
一問一答で話を進めていく。
と、言えば聞こえは良いが、実際は俺からは話せていない。
どうもペースを握られている感じがしないでもなかった。
しかし・・どうす
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