元反魔物領現親魔物領、街に近い村。
穏やかな気候流れていく人々の喧噪爽やかな陽気。
和気藹々だとか、如何にもな和やかな風景。
「…フン。」
その流れていく顔色を見て、窓から目を逸らして横になる。
藁の感触が体に突き刺さって痛いが、俺にはお似合いだ。
そうだ、お似合いだ、そうに決まっている。
幼い頃から意気地なしの、元いじめられっ子で。
一人が好き等という逃げ道を作り、かつて教団騎士を目指すもなれず、親魔となってからも離れて暮らす両親のために一旗あげようなどという気持ちはあるが気概も持てずの20歳で。
…あの日見た竜にだって、これまで一度として会えちゃいないんだから。
「……」
寝返りを打つ、またザクザクと肌に突き刺さってくる。
「それでな…」「まぁ…」
近くから聞こえるのは、この辺りに居る騎士様と運命的な出会いとやらをなさったらしいトロールの話し声。
「ハッ」
何が運命だ。
……運命的な出会いだとか未来を変えられるだとかそんなものは、所詮勝ち組の言葉だ。
やれる奴がやれない奴に対して自らの優位性を無意識下で話したいが為に使う、便利な言葉に過ぎない。
同義ととしちゃ神の救いなんてのもあったか、まぁ神など居ないんだが。
「フッ」
男子としちゃあある方だろう身長を藁の上に丸めて嘲笑う。
その通りだ、神などいない居るわけがない。
夢破れようとも逃げようとして飲みたくもない酒を飲んで吐こうとも…そもそもしていじめられてたあのときに助けてくれなかった神など、居たところで信じる気にはなれないが。
「そうです、神は全てを…」
聞こえてくるのは宣教師もどきのダークプリーストの声。
神等というのは建前で毎日しっぽりしてるのは皆知ってることだ。
「ケッ」
耳に入って考えるとまた更に気分が悪い。
暗がりの中に居てさえ、俺は苦しまなくちゃいけないのか。
わざわざ村の中心から離れた廃屋に寝てまでして、無意味な自分自身の存在を遠ざけたのに。
「……」
天井を見る、ささくれだってはいるが未だに屋根の意味を成している木材と藁が見えた。
こいつらすら意味があるのに俺と来たら。
「ん…」
そう考える、がしかしだからといって動く気にもなれないのがまた更に無能というか無力というか。
「はぁ…」
そのうち考えるのも面倒になって。
俺は、目を閉じて眠りの中に入っていった。
夢?そんなもの俺が見ると思うのか?
見たとしてもどうせ悪夢か、意味のない楽しい妄想だけだ。
その夜。
「…」
俺は、村から少し離れた山に来ていた。
偶に村人達が薬草を採りに訪れる、青葉生い茂り川流れ滝落ち…まさしく健やかというに相応しい心地。
健康にやけに良さそうな水の音が聞こえる、見上げれば満点の星空。
あの、燃えるかの如き朱のワイバーンを見た崖。
そして…一歩踏み出せば滝壺の底へ落ちる場所。
「…」
俺は、そこでまた無様を晒していた。
身投げしようにもそれすら恐ろしい。
生きていてもしょうがない、だけど死ぬのは恐ろしい。
「…くそっ」
なんて意気地のない奴なんだ、俺は。
そううんざりしつつも座り込み…まだ生きたいと思えている分良いじゃないかという下らない自己擁護を考える。
それも即座にだ、全く保身にだけは殊更長けていると見えた。
「……」
寂しくなって空を見上げる。
星が、瞬いていた。
星といえばあれは…死んだものが神に選ばれて輝いているのだったか?
詳しくは覚えていないし何よりこんな俺の事、合っているかも怪しいが。
「…どうせ…」
だがどの道。
どの道、何をやっても完璧には行かない俺のこと、屑星になれるかどうかすら怪しいところか。
「……」
寝転がる。
そうすれば、気分だけでも救われるかと思ったが…
「…はぁ」
生憎、そんなに世界は優しくなくて。
…優しくないといえば、痛めつけたものに更に傷を刻み込むあれは何なのだろうな。
そんな、憎しみさえ沸いてくる。
それともあれか、どんなに失敗しても生きている限りは…などという
ギシィッ
「…ぇ」
直後嫌、な、音がした。
足下…背中から…?!
「っ!」
咄嗟に跳ね起きて逃げようとする。
が。
グシャァッと音を立てて崩れ落ちる崖は、まるで逃れられない運命のように俺の足下に絡みついて
バカか…
俺は…何を考えてる…
運命なんてない、そのはずだろ…
嫌だ…なのかこれは…
あぁ、崩れていく…だけど…
このまま死んだなら……もう苦しまなくて済むのかな………
鈍痛。
響きわたってくるのは、体の節々からだった。
「ぅ……」
しかし、何とか、立ち上が『れてしまいそうだ』。
体はずきずきじんじんと痛み、頭はぐらぐらとがたつくのに、俺の体は起こそうと
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