道の安全のお手伝い

澄み渡る空、燦々と輝く太陽。
多くの建物に遮られてなお強いその光に、俺は思わず手を翳す。
指の間から差し込む光に目が慣れてきた頃、
俺は手を降ろし、改めてこの青空を見た。

・・うん、今日もいい天気だ。


ここは親魔物領の街、フェランシア。
石造りの灰色が景色の多くを占める街。
立地は北のブロディング草原以外の三方を海に囲まれている。
魔物娘と人間がともに暮らす、親魔物領らしい平和な街だ。
この街には多くの職業が存在する。

「いらっしゃーい!良いのがあるよ!」
刑部狸やホルスタウロス等が営む、商店。

「ん・・鍛えるの?分かった。」
サイクロプスが店主を務める、鍛冶屋。

「あら・・ふふ、良いの?後戻りできないかもよ・・?」
ダークエルフが経営する、SMクラブ?とかいう店。

他にも色々あるが・・その中でもこの街で一番多い職業。
それは、フリーの仕事人だ。
仕事がないときは無職に近いが、無職というわけではない。
仕事人というのは、人々からの依頼を受けそれを達成する者達の事。
平たく言えば、何でも屋というところだろうか。
そんな職業である仕事人がこの街に多い理由、
それはこの街に大きな仕事斡旋場があるからだ。
斡旋場は大きければ大きいほど仕事の幅が広がり、
小遣い稼ぎからそれを生業とする手練まで多くの者が集まる。
それ故、親魔物領でも有数の大きさであるそこには、
各地から仕事人が集まってきていた。


そして、俺もその仕事人の一人だ。

俺の名前は、リロウ・レウス。
この街の外れ近くに一人で住んでいる仕事人。
歳は26歳で髪は藍色、短く切り揃えてある。
特技は弓矢を射ることと多少の剣術。
この特技は、仕事をする上で頼りになっている。
何度窮地を脱することが出来たやら、だ。
最近は汎用性の高さから弓矢を持っていくことが多くなっていた。
今も、背中に弓を背負っている。
この弓の上下両端には、竜の鱗を模した緑色の装飾があり、
それが本物と見間違えるほど精巧に出来ていることと、
丈夫な木を使っており握り心地が良く、そして良くしなることから、
俺はこの弓が気に入っていた。


で、そんな俺が今向かっているのはこの街の仕事斡旋所だ。
街の中心より上辺りに位置するため直線的には近いのだが、
家が建ち並ぶ為、俺の住んでいるところからはやや遠い。
最初の内はその遠さに内心悪態をついたこともあったが、
今は街の風景を楽しみつつ歩くぐらいには慣れていた。

人や魔物娘が流出入するこの街の風景は、日々変わっていく。
今日も、昨日まで閑古鳥が鳴いていた店が急に繁盛したり、
一人だった釣り人が今日は水面のマーメイドと語っていたり。

そんな変化を楽しみながら歩いている内に、
いつの間にか俺は斡旋場の前まで来ていた。
ここが目的のはずなのに、もう景色を見続けられないとなると
何故か残念に思うから不思議なものである。

「・・さて。」
気持ちを切り替えつつ、斡旋場を見上げる。
石造りの建物達の中一際目立つ木造の建築物、それがこの街の斡旋場。
艶のある木々によって組み上げられた頑丈なそれの頂上付近、
やや暗めの木を使った大きな看板の中央、
日の光を浴びて輝くのは WELCOME の文字の魔界銀。
いつ見ても何度見ても、堂々たる姿だ。
流石はこの街のシンボルとも言われているだけはある。
そんな風に感動しながら俺は、
開け放たれた斡旋場の入り口から中に入っていく。

外が大きければ当然、中も中で大きく広い。
軽く見渡しただけでもその大きさが分かる。
入って中央より右側には多くのテーブルと椅子がある。
木造のそれらは、仕事を終えて一杯する者や世間話に花を咲かせる者、
またはグループを作って活動する仕事人達など、多くの者達が利用していた。
まだ昼間だというのに、
かなり多いはずの椅子とテーブルが半数は埋まっていることから
この斡旋場の用途の多さや人気の高さが伺える。

そことは反対側、左側にあるこれまた木造のカウンター。
ここは仕事人達が依頼を受けたり、
逆に依頼人が依頼を注文したりする所だ。
まずカウンターの担当者、受付が依頼を受け張り紙に書く。
そしてそれをカウンター近くの壁にかかっている板、
枠が青く塗られており、右上端に赤い造花が飾られている、
そんな洒落た大きな楕円形の板に貼る。
仕事人達は自分の身の丈や現状と相談しつつ、
その板の依頼を選びカウンターへ持っていき、受ける。
それが一連の流れだ。

もちろん、依頼を受ける方法はその限りではない。

「・・というわけで・・この道の・・」
「ふむ、ああ・・なるほど・・」

カウンターを挟んで話す仕事人らしき短い銀髪、長身のワイバーンと
受付内に立つ薄い橙色ポニーテール、同じく長身のケンタウロス。
俺の視界に入っ
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