アイコール・ユアネーム

俺と中浜が恋人になった翌日、朝。

「よぉ蓮司ぃ。
俺を裏切ってリア充になった気分はどうだぁ?」
マーセナス家の男みたいな鬱っぽい顔になっている五郎から、
俺はいきなりそんな事を言われていた。
「裏切ったって・・お前も立花先輩と何か話があったんだろ?」
口から出るままに言葉を返すと、五郎は急に嬉しそうになりこう言う。

「ああ・・話ね!あったよ。
なんかいきなり手をギュッと握られて、
うむ、うむうむ・・うん!ってよく分かんない事された。
しかもなんかその後、俺の方に微笑んで来て。
やべえすっげえ可愛い、これがギャップ萌えか、
っていうかついに俺にも春が!?
と思ったら次の瞬間お前等の方向を向いててよ。
どういうつもりでああしたのか分かんないぜ、まったく。」
困惑した風を装ってはいるが、その口調は明らかに軽い。
こいつは、あれだ、嬉しすぎて戸惑ってるんだな。

「なんだかんだで嬉しかったんだろ?」
「んあ?ああまぁな、というか嬉しくないわけないだろ。
あの立花先輩が、だぜ?俺にだぞ?微笑んだんだよ!?」
どんどんヒートアップしていく五郎。
ちらりと時計を見ると、もうじきSHRが始まろうかという時間だった。
そろそろ止めなくては。
クラスの皆も俺に目でそう言ってくるし。

「ああ・・五郎?そろそろ止めとけ?
いい加減にしとかないと先生に怒られるぞ。」
「たとえ先生だろうと!」
やばい、こいつ聞く耳持たねえんだった!
・・ならこれでどうだ!
「立花先輩に連絡行って、迷惑かけるかもしれんぞ?」
「・・・・・・・・」

やっと止まる五郎。
これは、良い止め方を見つけたかもしれない。



帰り道にて。
「え?立花先輩そんなことしてたの!?」
「ああ、五郎から聞いた。」
俺は朝あったことについて中浜に話していた。
「へぇ・・意外と積極的・・」
感心したように呟く中浜。
積極的といえばそうだが。
方向性がちょっとズレているような・・と思いつつも、
まぁいいか、と俺は話題を変えた。

「そう言えばさ・・来週から修学旅行だっけ?」
「あ〜・・そう言えばそうだね。」
答えつつ、全然意識してなかったよ、と付け足す中浜。
俺もだ、と言いつつ俺は頭を回転させ始めた。
「修学旅行・・今年からは全学年共同だったな。
去年生徒会からの発案で可決されたんだったか?」
まず思いついたことを言ってみる。
中浜はそれに、そうだよ、と言った後説明し始めた。

「えっとね・・まず一日目は工場見学から・・って。」
工場見学。
その単語が出た途端顔を歪めてしまった俺を見て、
中浜は苦笑する。
目を逸らしながら、しょうがないだろ、と言うと
中浜はその表情のまま言葉を続けた。
「いや、気持ちは分かるけどさ・・。
ほ、ほら、二日目の自由時間の為の我慢だと思えば、ね?」
その言葉に今度は俺が、フ、と苦笑を漏らしてしまう。
「そう言う中浜だって、そんな言い方をしてるじゃないか。」
言われた中浜も、
てへへ・・と可愛らしい八重歯を口の端から覗かせて苦笑した。

「や、だってさ。
工場の動いてる機械を見せられながら説明を受けても、
正直ボクには何のことだかさっぱりなんだもん。」
「だよなぁ・・俺もだ。
大体説明してもらってる時に、別のこと考えてる。」
「分かるよ、それ。
説明してくれてる人に悪いなぁって思って、
途中までは聞いてるんだけど、結局他のこと考えてたり・・」
「ゲームのコンボとかか?」
「うん。」
「・・ダメだな俺達。」
「ダメだねー。」
そして二人して笑う。
そう大層な事ではないけれど、二人で過ごすそんな時間はとても楽しい。
その楽しさを感じながら、俺達は家に帰ったのだった。


翌日、7限目LHRにて。

俺の一番の願い・・希望の象徴・・可能性の部屋割り・・!!
これは・・奇跡だ・・ッ!!

時はLHRの初め辺りに遡る。
1、2分程遅れて、
バフォメットの小角(こかど)先生がプリントの束を抱えてきた。
先生は、二段程高く作られている椅子の上に立つとこう言った。

「え〜皆、良ーく聞けい。
これから配るプリントは修学旅行の部屋割りや注意事項じゃ。」
とう、と言って飛び降りる小角先生。
着地後、一秒弱止まった後身震いした後、
クスクスという笑い声に「ええい、笑うな笑うな!」
と子供っぽく反論しつつ、
列の先頭の机に、その列の人数分のプリントを置いて回った。
そして何の手違いもなく配られてくるプリント達。
俺の席は教室の一番後ろ、
廊下側にある二つの席のより廊下に近い方にある。
なので、後ろに回す必要がなく、
すぐさまプリントに目を通すことができた。

「さて、では説明をするぞ!皆、1ページ目を見よ!」
やけに張り切った様子で先生が指示をする。
まぁそんな指示に大人しく従うのなん
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