「蓮司、一緒に帰ろーぜ!というか、ゲーセン行こうぜ!」
一日の授業が全て終わり荷物を纏めているとかけられた陽気な声。
机の上で両腕を枕のようにしながらそちらを見る。
声の主は俺の席の隣、河村五郎という男子だ。
親友・・と言えるかは分からないが、
趣味が少々アレな事と人前では根暗になりがちな事から
数少なくなっている俺の友達の一人である。
五郎は性格こそやや楽天的で自分勝手なところもあるが
俺と同じような趣味を持ち、明るい、いい奴だと思う。
「あ・・悪い、ちょっと無理。」
なんだが、俺はその申し出を断った。
「えー?お前金欠だったけ?」
要するに、金欠でもなきゃ断れないということか。
かけられた言葉に内心苦笑する。
「違う、ちょっと家に来る人が、な。」
言葉少なに説明すると、今度は驚いたような表情になって
「お前って、今親がどっか行ってて一人暮らしだよな?」
と聞いてきた。
そして答えようとするよりも早く、
「誰?もしかして・・星ちゃん?」
そう続けてくる。
星というのは、この学校で俺達と同学年で違うクラスの
中浜美星という女子のことだ。
皆からはその方が呼びやすいとかで星ちゃんと呼ばれている。
彼女は・・まぁ、素敵といえばそうだろう。
それにしても、一発で当ててくるとは。
「まぁ。」
答えると、五郎はまた話し始める。
「マジ?一発で当てるとか俺ニュータイプじゃね?
まぁそれはおいといてさ、お前と星ちゃんって付き合ってたけ?」
「・・何でそういう話に?」
素直にそう訊くと、五郎は何故か得意げに言う。
「どうしてって、そりゃあそういうのは
フラグ立ってる間柄じゃねえとしねえからだよ。
んでお前よ、何時の間に星ちゃん口説いたんだよ?」
大声でこいつがそんな事を言うもんだから
残っている生徒がチラチラとこっちを見ている。
これは誤解を解かないと後でめんどくさいことになるか。
そう思い、やや声を大きくして応対する。
「フラグって・・ギャルゲーとかのやりすぎだろ。
別に大したことじゃないって。
親が一ヶ月ほど居ないからそっちの家泊まるわってだけ。」
なんて事はないだろ、
と話すと五郎は目をカッ!と音がしそうなほど見開く。
不思議に思ったがそれについて、どうした、
と訊く前に五郎はまくし立てた。
「お、お前な!大したことあるよ!バカかお前!
普通、親が居なくても家で過ごすだろ!」
「・・あー考えてみりゃそうだな。
あんまり自然だったから考えてなかった。
でも、あれだろ、友達の家に行くような感覚だろ。」
そう返すと五郎はさらにヒートアップする。
「いやお前な!有り得ねえよ一ヶ月だぞ!?」
「・・一ヶ月ぐらい、お前を泊めた事が前にあっただろ?」
「いやいやいやそうじゃねえだろッ・・!
男同士の、家行くわってノリとは違う訳!
前から思ってたけど、何だってお前は・・!」
「・・いや、そういうのじゃ無いだろ。
俺が女子に好まれる所が思いつかねえし。」
ぶっちゃけ面倒になってきたので俺はその話の腰を叩き折った。
「・・あー・・いや、あのな・・そういう考え方は・・」
効果は覿面だ。
なんだか苦虫を噛み潰したような顔になる五郎。
それでも何か言いたそうだったので俺は追撃を仕掛けた。
「料理もそんなに出来ん、うっすら髭は生えてる、根暗、
ビビり、加えて一般的に見たらキモいとされるオタク。
・・ほれ見ろ、俺の意見の何処に非の打ち所がある?」
片手を上げて少々自慢げに言ってのける。
悲しいことに、自分の汚点を挙げることだけは俺の得意分野だ。
ともあれ、これでこの話題も収まるだろう。
「あ、居た居た・・鮫川、図書の延滞催促しててくれたか?」
そんなことを思っていると、
図書係のドラゴン、立花先輩が教室の窓の外からそう訊いてきた。
ちなみに鮫川というのは俺の名字だ。
「とりあえず今返してもらえる人はカゴに入れてもらいました。
返せない人にもそういうことを言っときましたよ。
あ、カゴはカウンターの内側の下の方に入れてあります。」
そう答えると、先輩はほっとしたような顔になる。
「助かる、では後で見るとしよう。」
そして、図書室の方へ走っていく。
・・一応廊下は走るの禁止なんだけどな。
まぁ良いか、人が居ないことを確認済みだろうし。
ぶつかったりは・・それもないな。
そんなことを考えながら振り向くと。
「・・お前、さっきのこともう一回言ってみろ。」
何か怒ってる五郎が居た。
俺は何か悪いことをしただろうか。
ともあれ、もう一回というのなら言わなくては。
「料理もそんなに「違う、その前だ!」うぇ・・?」
が、途中で割り込まれる。
なんだよ、その前・・?あーあれか。
「女子に好かれる所がない、これか?」
「そう、それだよ!」
なんだか真剣な表情になる五郎。
一体な
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