ある日、朝、目が覚めるとパンツをはいていなかった。
それは、まあいい。よくあることだ。
こんなことをするのは一人だけ。
うちの嫁キュバス、エルセリス(通称エリス)の仕業だ。
問題は、
「エリスゥゥゥゥーー!!」
着替えのパンツが一枚も無くなっていたこと。
「エルセリィィィィィス!」
腰にタオルを巻いてエリスを探す。家の中を一回り。しかしいない。
まさか俺のパンツ持って外に出た、なんてことは無いと思うが……。
替えの分まで持ち出してるということは、単に脱がしたパンツを被って興奮している、で済む話では無さそうな。
不意に鼻をつく煙の臭い。何かが燃えてる? しかしキッチンには何もなかったし。
――まさか、庭?
庭に面した窓を見やれば、カーテンがかかっていて外の様子は伺えない。最悪に嫌な予感がして、カーテンを開け放った。
そこには、俺が昨晩はいていたはずのパンツを頭に被って、替えのパンツを燃やしているエリスの姿があった。
「何やってんだお前えええええええええええ!?」
「やべ見つかった!」
俺に見つかったエリスは、被っていたパンツを即座に火に投入した。
「待てコラあああああああああああああ!!」
めらめらと燃えるパンツを踏みつけて(※スリッパ履いてます!)火を消す。しかし、焼け落ちたパンツは使い物になる状態ではなかった。
「な、な、な――」
朝っぱらから突然起きた謎の出来事に、言葉を失う。
エリスはそんなこちらを見て、へらっと笑った。
「グッモーダーリン」
「ど、ど、ど――」
そのあまりにもふざけた態度に、やはり言葉は出てこない。
「どうしてこんなことをって? いやちょっと思う所が――」
「ドラゴンアッパー!!」
「ぐぉふっ!」
取りあえず渾身の一撃を叩きこんでおいた。
+ + +
火の始末をして、家の中に入る。
エリスを正座させて、事情を聞くことにした。(ノーパン続行中)
「いやね、ほら、はかないのって気持ち良いって話はいつもしてるよね?」
「……おう」
このバカは、はいてない主義者である。サキュバスの衣装はビキニなので、ビキニではいてない状態だと丸出しになってしまうので、普通にスカートやワンピースを好んで着ている。丸出しにしないだけのモラルはあるらしい。
「でね、私は今朝、気付いてしまったの。ダーリンもはいてないと気持ちがいいって」
「…………?」
今の話のつながりがわからなかった。なに? 俺がはいてないとエリスが気持ちいい?
「ちょっと意味が分かんないですね」
「私がはかない、ダーリンもはかない。気持ち良い」
「じぇんじぇんわからん」
あれ? と首を傾げてエリスが黙りこむ。言葉を探しているようだ。
「えーとね。まず私がはかない。はいすーすーして気持ちが良い」
「……おう」
ここまでは理解できる。同意はしかねるが。
「そしてダーリンがはかない。ダーリンはすーすーで気持ちが良い」
「いや俺は別にはいてないからって気持ち良くは無い」
「まあ、ダーリンが気持ちいい気持ち良くないは別にいいのよ」
いいんだ?
「私がはいていません、ダーリンもはいていません。おそろいですね!」
「…………」
いや、どうだろう。
「ぱんつ はかせ ない! はいていないことを共有することで興奮はさらに加速した!」
加速すんな。
俺の苦い顔に気付いているのかいないのか、エリスはがばっと立ち上がり、絶叫した。
「はいてない! おそろい! 気持ティーーーーーーーーーーーーーーー!!」
……俺、何でこいつと結婚したんだっけ……。
キラキラと謎のエフェクトを振りまいて、イイ笑顔で万歳しているエルセリスの鼻を摘む。
「ふにっ」
「俺は言ったな? お前がはかないのはいい。許す。我慢するって言ったな? でもそれに俺を巻き込むなって言ったよな? 言ったよな!? 言ったよなあああああああ!!」
「ふににににににに痛いいたいイタイ鼻が千切れるうううううううう!!」
「寝起きのいたずらならともかく! 替えのパンツまで! しかも燃やすってどういうことだおらあああああああ!!」
「手っ取り早くはいてないに目覚めてもらおうとふぎゃあああああああああ痛ああああああああい!!」
「なんか言うことはないんかあああああああああああああああああ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさああああああああああああ!!」
+ + +
「うう……お鼻痛い……」
「エリス」
鼻をさするエリスに財布を放り投げた。
「俺のパンツ買って来い」
「え?」
「え? じゃねーよ。責任取れ。ノーパンで外に出る気はないぞ」
「えー。なんでよぅ。気持ち良いの
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