アンデッドの群れの、先頭を走っていたのはグールだった。
その後続は、ゾンビだのスケルトンだのゴーストだの、何でもかんでもぞろぞろついて来ている。っていうかアンデッドのくせに足速いなこいつら。
「もしもーし」
「あーン?」
ガラの悪いグールだ。
「ンだよ……なンか用か? アタシら忙しーンだけど」
「君ら、イェルマのとこのアンデッド軍団だろ?」
「お? 大将のこと知ってンの?」
「旧い友人でね。マージェスのとこ行ってるんだろ?」
「あンだよ、目的まで知ってンのか。なンの用?」
彼女らと並走しながら続ける。
「今さ、超立て込んでるんだよ」
「ふーン。大変だな。止まってくれってのは聞けないかンな。止まるとアタシらが大将にドヤされンの」
「……一応聞いておきたいんだけど、君らとイェルマって、どういう関係なの?」
「あーン? なンてーか、大将の恋が実ったら、全員にカレシ見つけてくれるっつーし、それまでに各自カレシ見つけたら祝ってくれるってーし、それまで手伝ってるダケだ」
「ほうほう」
意外と面白い関係。
「男を見つけたらどうするんだ?」
「彼女持ちとかでなければ、その場で襲ってお持ち帰りサ」
「はー、なるほどなるほど」
「アンタさぁ……アタシらに何させようってンだ?」
いやぁ、話が早くて助かる。
「この先に、ある国の兵隊が来てて、いま襲われてるんだ。そいつらを丸ごと召し上がってくれないかなって」
「ふーン……オトコ?」
「だいたい男」
「行く。超行く。この先?」
「ちょっと左に行った方」
「ヨーシ、決まり!! みンなアタシについてこい! オトコ狩りだぁーーー!!」
グールの雄たけびとともに、アンデッドの群れは行く先を逸れていく。
その最後尾には、一人のリッチが。
「……ケミルカぁ……」
地の底から響くような、恨みがましい声が俺を非難した。
「いよぅ、イェルマ。10年ぶり? 20年ぶり?」
「……何の用……私の邪魔しに来たの……?」
「そーだよ。今すっげー立て込んでて、ちょっとマージェスの手が空かない。今日は帰ってくんない?」
「……断る」
「さいで」
イェルマの背後に、いくつもの魔法陣が浮かび上がる。
「……私の邪魔するなら……ケミルカでも潰すから」
そこからずるんと出てきたのは、太くてぬめぬめして毒々しい色をした、触手だ。
「うへぇ」
「この子は、触手の森で採取したのを、培養して、いろんなお薬で育てて、いろいろいじった子……すごいよ?」
「嫌すぎる……」
ぞろりと触手がうねる。
「男の人で試したことは無いから……ケミルカで試してあげる――――ねっ!」
触手が風を切って迫る。 が。
バシンと、俺に届くことなく弾かれる。
「……む」
「残念だけど、俺の貞操は人に上げられなくてね」
「……あなたのお人形は、完成した?」
「うっせーまだだよ! 『切断』!」
触手をバッサリと切り落とす。落ちた触手は、嫌な色の液体をまき散らしながら地面をのたうち回っている。止まる気配はない。それどころか俺に向かって飛んできた。もう一度切る。びちびち。
大元の触手の方も、切断面から新しい触手が生えてきた。
「うっげぇ」
「……無駄。切れば切るだけ増える」
そして、イェルマの背後の魔法陣はその数を増やし、そこからぞろぞろと湧いて出る触手、触手、触手。
「……マージェスが待ってるから、速攻で潰すね」
「上等だぁ、やってみろ!!」
+ + +
しばらくして。
にらみ合う俺とイェルマ。
あたり一面は氷漬けで真っ白。凍った触手があちこちに転がっていた。
「こ……のっ!」
イェルマが熱光線を放つが、それが俺に届くことは無い。光線の熱にあぶられて、凍った触手の表面がわずかに融けたが、それもすぐに凍りつく。
空間断絶で攻撃が俺に届くことは無く。空間凍結で何もかもが凍り付く。
白い息を吐くイェルマと、汗一つかいていない俺。
勝負は明白だった。
「……どうして……」
膝をついたイェルマが、目に涙を溜めて言う。
「私はマージェスとらぶらぶえっちがしたかっただけなのに……どうして……」
タイミングが悪かったとしか言いようがない。いやもうほんとマジで。
と、そこに。
「ケミィ? あっちは終わったけど」
マージェスが姿を現した。
「おう、マ―――――」
「――――マージェ!!!」
そのマージェスの声を聴いた瞬間なのか、姿を見た瞬間なのか。
イェルマが、触手召喚の魔法陣を目一杯に背負って、マージェスへ向かって一直線に飛んで行った。
「まーーーーーーーーーーーーーじぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「…………」
マージェスはそれを、片
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