時は夕暮れ。当初の目的は達成されたわけで、そろそろお暇しようかと話をしていた時だった。
ジリリリリリリリリリリ!
何かのベルが鳴った。
「何の音?」
「人除けの結界を越えて誰かが来た音」
マージェスがやれやれと立ち上がる。
「いつもならケミィが来た合図なんだけど。ま、定期のアレが来たんだと思うよ」
「あー、アレか」
俺とマージェスの二人で笑いながら、マージェスが遠見の魔法で様子を見る。
「…………ん?」
と、その表情が曇る。
「どした?」
「この人たちに見覚えは?」
映像として映し出されたのは、どこかの国の兵士と魔術士の一団と、大量のゴーレム達。
「んー。人に見覚えは無いけど、ゴーレムに見覚えがある。遺跡にいたやつだ」
「え? あの人型のゴーレムですか?」
「うにゃ。土人形のやつ」
「ええ……」
使われている術式で見分けているので、マートに見分けろというのは無理だろう。
ともかく、今来ているのはあの遺跡を漁っていった国のようだ。
「土人形200に人型50ってところか。兵士は武装済みで150、魔術士は70くらいかな」
「何の用だろう。ケミィの所ならともかく、僕の所なんて」
「十中八九、ディアナ狙いだろ。ディアナ自体はここにいるんだし」
「ディアナを追いかけて来たわけ? 君、尾けられてたの?」
「遺跡を出るときは、中継しながら空間転移で帰ったけど、雑にやったから時間をかければ足取りは掴めるかなぁ。一週間かけて解析されたのかも」
「……結局面倒ごとが付いて回るのか……」
マージェスは舌打ちをして、兵士たちに魔法で呼びかける。
「《この先は僕の家しかないけど。何かご用?》」
《これはこれは魔法使い殿。お初お目にかかります》
そう言って先頭に出てきたのは、見るからに偉そうな風貌の、小太りの魔術師のおっさんだった。
《我々はウェルメラ王国の魔術士団で、私はこの遠征団の団長をしております、リトブと申します》
「《用件は?》」
《あなた方が遺跡から持ち去ったモノを返していただきたいのです》
「《……返す? どういうこと?》」
《あの遺跡は、我々ウェルメラ王国の土地です。なれば、あの遺跡にあるものは国の所有物ですから》
「《無茶な言いぐさだね。獲るだけ獲り尽くして、管理もせずに放置されていた遺跡なのに?》」
《放置されていようと、我々の土地です》
「《その論法だと、道に落ちている石ですら、国の所有物ということになるけど》」
《厳密に言えば、その通りですな》
「《お、おう》」
あからさまな意見に思わずマージェスがたじろぐ。
おっさんは続ける。
《我々にとって不要な物については、その権利を放棄しているだけにすぎません》
「《自分たちでは見つけられなかったものを、あとから発見されて、のこのこそれを掠め取りに来たってことか》」
《それはあまりにも無礼な物言いなのでは?》
「《でも事実だし》」
《まあ否定はしませんが》
結構あけすけだなこのおっさん。
「《ともかく。ぞろぞろ武装した兵を連れてくるような連中に渡す物は無い。即刻立ち去れ》」
《話し合う気はないのですか?》
「《これ以上はお互いに平行線でしょう》」
《……仕方ありませんな》
おっさんは肩をすくめる。そして、
《では、契約の通りに》
後ろの男と目くばせを――――魔法使い!
「マーじぇ――」
俺が呼ぶより早く、家が轟音と共に揺れる。どこかが追われた様子はない。
マージェスは険しい顔で、相手の魔法使いの映った映像を睨んでいた。
「家は大丈夫。ちゃんと防御がある」
「おう」
「喧嘩を売られた。だから潰す。手伝って」
「もちろん」
俺も、ディアナを渡す気はない。
「ぼ、僕に出来ることは無いですか?」
「私もお手伝いします」
マートとディアナが立ち上がる。俺とマージェスは顔を見合わせた。
「マートに出来ることは無いね」
「そうだな」
「ディアナ。君は何ができる?」
「魔力刃を用いた白兵戦と、魔力弾での銃撃、難しくない程度の魔術なら扱えます」
「銃撃……狙撃は?」
「狙撃用の銃ではありませんが、1q以内であれば外しません」
狙撃用じゃないのに射程すごい長い。
「魔力弾って当たるとどうなるの?」
「痛みと衝撃と、魔力ダメージを与えます。頭部に命中すれば気絶させることが可能です。麻痺弾や睡眠弾にすることもできます」
「じゃあ一般兵バンバン狙撃して、バンバン気絶させて。そうだ、弱点はあるの?」
「雷や強い電流がダメです。詳しい説明が必要ですか?」
「いや、いい。マート」
「はい!」
マージェスが手をかざして、魔法陣を出す。そこからガシャガシャと何かのマジックアイテムが落ちてきた。
「これ全部雷除け。全
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