「なるほどねぇ・・・・魔王様が代替わりを・・・・・」
黒樹は、村長夫妻からこの世界で起こった出来事を
聞き驚嘆していた。現代で知りえていた事柄は
こちらの世界では旧時代の話であり
今では全く別の世界に変わっていたのだった。
「んで・・・今の魔王様がサキュバスだから
魔物達は皆全て女に変化してる訳だ・・・・」
しかも魔王の夫は最強と謳われた勇者であり
現在の魔王と協力し先代魔王を打倒して
更には神と喧嘩をしはじめた。その影響で魔物たちは
愛に目覚めた。魔物にとって男性は愛すべき存在。
糧であり、伴侶であり、同胞であり、守り守られる存在。
故に教団兵たちを殺すなと村長の妻ナーデリアは言った。
愛すべき存在だからこそ殺された姿を見る事は
魔物たちにとって恐怖なのであると。
「うーん・・・・・・今更ながらとんでもない世界に来たんだなぁ」
「それはこっちのセリフだぜ。なぁグルカ」
「あぁ、魔法を喰うだなんてデタラメ過ぎる話だ
恐らくサバトのバフォメット様や魔王様のご令嬢の
リリム様ですらそんな事は出来ないだろう・・・・」
「ひひひひひひ・・・・長年の研究の賜物だよ
ちなみに喰えるのは魔術だけじゃないぜ
その気になれば他の生き物の寿命だって
喰うことが出来るんだ。『森羅万象喰えぬモノ無し』
ってことさ・・・・・ひひひひひひひ」
「・・・・・・貴殿は本当に人間なのか?」
「まだ、な。俺もそろそろ角とか生えても
いい年頃だと思うんだがなぁ」
ニヤニヤと笑いながら、頭をさすり出す
すると、ナルとグルカは、ほぼ同時に叫んだ
「「生えてたまるか!!!!」」
「お約束のツッコミ感謝の極み」
テンプレ的なノリツッコミを消化しつつ今後の事を
考えねばならない。分かっている事が余りにも少ないが
教団国はこの森を欲しがっている事は確か。
相手の規模も兵力も何もかもが分からないが
方法がない訳ではない。魂を無理やり引きずり出して
直接情報を取り出す魔術を使えばいい。しかしそれは
相手にとても強い苦痛を与える魔術であり
下手すると相手は死んでしまうし最悪魂が消滅してしまう
この世界の魔物達がとても嫌がるやり方になってしまう
故にこの方法は使えない訳である。
「そんなことも出来るのか・・・・貴殿はやはり人間ではないな」
「ひっひっひっひ。褒めても鎖と呪具しか出ないぞ?要るか?」
「要らぬ!!!!」
それに兵士たちの装備も中々の物だった
これを見る限り教団はかなり規模の戦力を
抱えているとみて間違いない。
早々に何かしらの対策を講じねば
追加の人員が徒党を組んで襲ってくる。
そうなったら今の戦力でどうにかするのは難しいだろう。
「では、早急に魔王軍に連絡を取って動いてもらわないと!」
「それなりの規模が動くとするなら、それなりの時間が
掛かるだろう。動くにしても時間がかかり過ぎる。」
「じゃあどうすれば!!」
村長が青ざめた顔でまくしたてる。無理も無い話だ
一難去ってまた一難なのだから。
「少なくとも連絡だけなら今聞いたわよ」
空の上から誰かが語り掛ける。
全員で上空を見上げると見た事も無い魔物が
ゆっくりと降りてきた。
「あ・・・貴女様は・・・・」
「ナル、グルカ。こちらの方は?」
「魔王第四十子、レッセル様だ」
リリム。この世界の魔王の娘。この世界の魔物の
頂点に座る魔物。その最強の魔物がどういう訳かここに来た。
「貴方ね、あんな冷たくて暗い魔力を使ってたのは」
「気づかれましたか。異界より参りました魔導師
黒樹博信と申します。魔王のご息女様にお目にかかる事が
出来て恐悦至極にございます」
黒樹は片膝をつき深々と頭を下げた。
それを見たレッセルが顔を膨らませて怒り始めた
「もう!そーゆーのやめてよね!アタシそういう堅苦しいの
嫌いなの!もっとフランクに接してよ!!」
プリプリと怒るという言葉がピタリと合う怒り方だった
何処にでもいるごく普通の女の子だった。
黒樹が知っている上位魔族のイメージがガラガラと
大規模に音を立てて崩れ続け頭が追いついて来なかった
「うぅ・・・・・目眩がしてきたわ・・・・・」
「なによぅ、いいじゃないのよぅ・・・・姉さん達も
『上に立つ者としての言葉遣い〜』とか言うし
他の魔物達も『威厳が〜』とか言うし
そんなガチガチな日常なんか送りたくないわよぅ・・・・」
怒ったかと思いきや今度はふわふわと宙に浮かんだまま
後ろ向きで体育座りをして「の」の字を書き始めてしまった
黒樹はナルとグルカを手招きして近寄らせ小声で
相談をし始めた。
「最強がすね始めたぞ・・・・・・どうしたらいいんだこれは・・・・・・」
「本人が、あぁ言ってるんだから別にいいんじゃねーか?」
「大丈夫なんだろうな?不敬罪で逮捕とか勘弁だ
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